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企業クライアント戦略

運用管理とバックアップとクラウド

Posted by 横山哲也 ( 2012年01月30日 )

■運用管理とバックアップ

筆者の同僚は、「IT運用管理とはバックアップのことである」と言い切った。もちろん冗談だが、バックアップがITシステムを運用する上で非常に重要な業務であることには違いない。

バックアップの難しさを、思いつくままに上げてみよう。

  • 時間がかかる(システムが扱うデータ量は年々増加している)
  • バックアップ頻度を決めるのが難しい(OSの構成ファイルと、日々更新されるデータでは扱いが違う)
  • 確認が難しい(完全な復元テストには、サーバーが1セット余分に必要)
  • バックアップの保存先の選定が難しい(近くにあると復元が容易だが、遠くにあったほうが大規模災害に強い)
  • バックアップ装置やメディアが高価(というより、ハードディスクの値段が安すぎる)

■クラウドへのバックアップ

そもそも、バックアップはハードウェアやソフトウェアの障害や、操作ミスによるデータ損失に対する保険である。保険だから、何もなければ払った料金は返ってこない。できることなら、低く抑えたい。

そこで、バックアップを提供するクラウドサービスが登場した。データセンターに大規模なストレージ(ディスク領域)を構成し、その一部を利用者に貸し出す。「規模の経済」が働くので、利用者から見ると割安なストレージになる。

筆者が自宅で使っているのはジャストシステムの「Internet DISK」である。本来はファイル交換サービスだが、500MB以上のコースを契約すると容量無制限のバックアップ領域が提供される。バックアップ機能だけだと月額525円である。

ただし、このサービスには大きな落とし穴がある。復元するときはバックアップ領域すべてが対象になり、個別の選択ができないのだ。

他にもさまざまなストレージサービスはあるが、高価だったり、保存期間に制限があったり、操作が煩雑だったりして、なかなか良いものがない。良いものがないということはビジネスチャンスだと思うので、クラウドベンダーはぜひサービスの見直しをして欲しいものである。

■AWS Storage Gateway

1月26日にAmazon Web Servicesから発表された「AWS Storage Gateway」(ベータ版)は、企業向けではあるが非常に面白い機能を提供する。以下は、発表資料を読んだ筆者の理解である。もしかしたら間違っている点や誤解している点があるかもしれないので、お気づきの点があればぜひ指摘していただきたい。

Amazon Storage Gatewayを使うには、まず社内ネットワーク上にStorage Gateway用の仮想マシンを用意する。この仮想マシンはAWSから入手できる(現時点ではVMware ESXi用のみが提供される)。仮想マシンはiSCSIターゲットして動作するため、社内ネットワーク用のストレージとして利用できる。iSCSIに接続するための機能は、Windows Server 2008やWindows 7では「iSCSIイニシエータ」として標準装備されているので簡単に利用できる。

仮想マシンはローカルディスク上にデータを保存するとともにAWS上のストレージサービスAmazon S3 (Simple Storage Service) に転送する。S3は高い信頼性を持っているため、この時点で信頼性の高いバックアップが完了する。バックアップは後述するEBSのスナップショットとして保存されており、復元時はスナップショットの機能を使うようだ。

面白いのはここからだ。Storage GatewayがS3上に保存したデータはAmazon EBS(Elastic Block Store) として、Amazon EC2 (Elastic Computing Cloud) つまりクラウド上の仮想マシンで動作するサーバーのディスクとして利用できる。そのため、OS環境とアプリケーション環境をEC2上の仮想マシンを用意すれば、社内のサーバー環境を丸ごとEC2上に再現できる。性能上の問題はあるだろうが、大規模災害が発生したときの緊急用サーバーとしては十分なことが多いと思われる。なお、EC2の作成は通常数分以内だが、アプリケーションのインストールを考えると事前に作っておいた方が良い。EC2上の仮想マシンは停止中には課金されない(ストレージの課金は別)。

Storage Gateway用の仮想マシンは月額125ドル、それにディスクの使用量とネットワークの使用量がかかる。ただし、AWSへ向かうデータについては無償だ。バックアップは保険だが、その保険料はネットワークに関しては無料なのである。復元時、つまり障害発生時にだけネットワーク利用量がかかるのはありがたい。

▲Amazon Storage Gatewayの概念図

Amazon Storage Gatewayの詳細は、玉川憲氏のブログ記事「【AWS発表】AWS Storage Gatewayの発表。既存のオンプレミスアプリケーションをAWSのクラウドストレージに自動バックアップ」が分かりやすかった。ただし、ブログは所詮ブログなので金額や仕様については公式資料を参照して欲しい。

▲Amazon Storage Gatewayの紹介ビデオ(字幕(CC)を有効にすると日本語字幕が表示される)

■大規模災害とクラウド

2001年9月11日の米国同時多発テロ事件のあと、バックアップはあったが動作可能なサーバーがない企業が多かったらしい。Amazon Storage Gatewayはバックアップとサーバー環境の問題を同時に解決できる面白いアプローチだと思う。

マイクロソフトは、Windows Azure上で動作する仮想マシンサービスを提供しているので、同様のサービスを実現できるはずだ。ぜひ頑張って実現して欲しい。

一方、AWSには個人や零細企業向けのサービスをぜひ実現して欲しい。AWS Storage Gatewayの仮想マシンに7.5GBのメモリと4基の仮想CPUは少々ハードルが高い。仮想マシンの仕様を軽量化した上で、ネットワーク帯域やディスク容量に制限を付けて、月額60ドルくらいなら筆者も利用したい。

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