キツネとタヌキとハイカラと|企業クライアント戦略|ブログ|Computerworld

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企業クライアント戦略

キツネとタヌキとハイカラと

Posted by 横山哲也 ( 2012年02月13日 )

■クライアントのバックアップ言葉の意味

PCにトラブルがあった。ITサポートの人に尋ねてみたが、その指示が分からない。こういう話はよく聞く。しかし、分からないなら分かるまで言い換えればいい。問題は間違って伝わってしまう場合だ。話し手も聞き手も、同じ意味だと思って使っている単語が違う意味だったりする。

たとえば「再起動」。ITサポートの人は、アプリケーションを一度終了して、もう一度起動することを意味する場合がある。しかし、一般的にはOSの再起動を意味することが多い。OSの再起動をすればアプリケーションも終了するので、結果的は同じだが時間がかかる。

「PCを落としてください」と言って「机からですか?」と言われることはないにしても、IT業界には不思議な言葉が多い。「死ぬ」とか「殺す」とか、物騒な言葉もあるし、「ドラッグ・アンド・ドロップ」のようによくわからない操作もある。「シイタケのマーク」が、エラーマークだったりもする(新時代のITキャリア【システム運用管理編】「ヘルプデスク」)。

当たり前の言葉だと思っても、十分に注意したい。

■キツネとタヌキ

皆さんは「きつねうどん」というものをご存じだと思う。きつねの肉が入っているわけではなく、油揚げが入ったうどんである。きつねの好物が油揚げだという俗説に由来する。

では「たぬきそば」をご存じだろうか。広辞苑で調べてみよう。

関東で、揚げ玉と刻んだ葱(ねぎ)とを入れた掛けそば。関西で、油揚げを入れた掛けそば。

なるほど、関東と関西で言葉が違うようだ。カップ麺「赤いきつね」と「緑のたぬき」もこの定義に従っている。

▲きつね
▲たぬき

ついでに「たぬきうどん」も調べてみよう。

揚げ玉と刻んだ葱(ねぎ)とを入れた掛けうどん。

関西と関東の区別がない。ということは全国共通なのだろうか。

しつこいようだが、今度は「きつねそば」を引いてみる。

甘辛く煮た油揚と刻んだ葱(ねぎ)などを入れた掛け蕎麦。関西では「たぬき」と呼ぶ。

「たぬき」とだけ書いてあり「うどん」とも「そば」とも書いていない。なんだかわからなくなってきただろう。正解は以下の通りである。

  うどん そば
▼関東の場合
きつね 油揚げ 油揚げ
たぬき  揚げ玉 揚げ玉

要するに「油揚げ」を「きつね」、「揚げ玉」を「たぬき」と言い換えただけだ。これに「うどん」または「そば」と付ければよい。このように、独立して組み合わせることができる関係を「直交する」と呼ぶ。「きつね/たぬき」と「うどん/そば」は、直交しているわけだ。「直交」は二次元平面で、X軸の値とY軸の値はお互いに影響しないことに由来する。

厄介なのは大阪の場合だ

  うどん そば
▼大阪の場合
きつね 油揚げ (該当なし)
たぬき  (該当なし) 油揚げ

大阪には「たぬきうどん」と「きつねそば」がない。「きつね」といえば「油揚げ入りのうどん」なので、わざわざ「きつねうどん」と言う必要がない。「たぬき」は「油揚げ入りのそば」である。広辞苑に「関西では『たぬき』」とだけ記載されていたのはこのためだ。

つまり、大阪では「きつね/たぬき」と「うどん/そば」は直交していない。きつねと言えばうどん、たぬきと言えばそばに決まっているからだ。

さて、広辞苑では「関西」と書いてあったのを、途中から「大阪」と置き換えたことにお気づきだろうか。実は、京都はまた違った言葉を使う。

  うどん そば
▼京都の場合
きつね 油揚げ 油揚げ
たぬき  あんかけ あんかけ

京都で「たぬき」は、「刻んだ油揚げの入ったくずあんかけ」のことを意味する。つまり、「きつね/たぬき」と「うどん/そば」は、直交している。

筆者は京都で生まれ育ったが、大阪のルールを知ったのは中学生の時だった。日本橋電気店街のうどん屋のおばちゃんに、あんかけうどんのつもりで「たぬきうどん」と頼んだら「そんなもん、あらへんで」と怒られた。以来、大阪のおばちゃんは苦手である。

ちなみに、揚げ玉入りは「はいから」と呼び、「うどん/そば」と直交しているので安心して使える。

ついでにもうひとつ紹介しておこう。渋谷のうどん屋で、関西アクセントの若者がガールフレンドに話していた。

  • 男「おれなあ、メイボできてん」
  • 女「?」
  • 男「あ、ごめんごめん、メバチコ」
  • 女「???」

隣だったので教えてあげようかと思ったがやめておいた。

いわゆる「ものもらい」のことを、京都では「メイボ」、大阪では「メバチコ」という。メイボが京都弁だということは割に知られているので、言い直したのだろうが、それでも通じなかったようだ。

■教訓

ここから得られる教訓がある。言葉には文化的な、あるいは地理的な距離による差がある。同じ文化圏の人は、その差を認識しにくい。外から見ると似たような文化であっても、中に入ると意外に大きな差だったりする。京都と大阪は、文化的にはかなり違うし、お互いに相手を嫌っている。というより、京都がすべての地域から嫌われているらしい。

「これくらいわかるだろう」と思わずに、丁寧な説明を心がけたい。

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