Microsoft Virtualization Summit 2010 Report
今回は、Windows Virtual PC の話題からちょっと外れ、イベント レポートをお送りします。
2010 年 3 月 12 日に開催されたマイクロソフトのイベント Microsoft Virtualization Summit 2010 に参加してきました。抽選で選ばれた 700 名の参加者で会場は満席状態、立ち見ありで、仮想化に対する関心の高さが伺えました。このあと 3 月 15 日に名古屋、3 月 18 日に大阪でも開催されます。
イベントの話題の中心は大きく 3 つに分かれていたと思います。VDI (Virtual Desktop Infrastracture: 仮想デスクトップ・インフラストラクチャ) とクラウド、そしてバズワードにも聞こえそうな “プライベート” クラウドです。それぞれについて、印象に残ったこと、新しいトピックなどを紹介します。
VDI とは一般的に、デスクトップ OS を実行する仮想マシンやブレード PC をデータセンターに集約し、仮想デスクトップとしてネットワーク経由でユーザーに提供するシンクライアント・ソリューションです。Windows Server 2008 R2 の Remote Desktop Services (RDS、Terminal Services の後継名称) には、Hyper-V 上の仮想マシンで構築する VDI 機能が追加されています。しかし、これが Microsoft VDI のすべてではないというメッセージがありました。RDS RemoteApp や Microsoft Application Virtualization (App-V) によるアプリケーション配信をうまく組み合わせることで仮想マシンを軽量化し、管理を容易にすること。System Center による仮想マシンのプロビジョニングと運用管理。そして、VDI のためのライセンス (VECD や VDI Suite) 。こういったものをトータルにして Microsoft VDI ということのようです。
仮想マシンの汎用化、軽量化という視点は、製品評価やデモ環境ではなかなか気がつかないところ。1 つの仮想マシンが使用するディスク領域やメモリ使用量、プロセッ使用率を少しでも少なくできれば、大規模な環境ではより多くの仮想マシンをホストできるということになります。アプリケーション配信を利用することで、仮想マシンを OS だけの環境にすることができ、プロビジョニングや管理が簡単になります。
新しいトピックとしては、App-V 4.6 (英語版は 2010 年 2 月に RTM、日本語版はまだ) の話がありました。App-V 4.6 は64ビット対応になり、Windows Server 2008 R2 (64 ビットのみ) をサーバーとして使用できるほか、App-V for RDS 4.6 を使用して Windows Server 2008 R2 の RDS セッションに仮想アプリケーションを配信できるようになります。また、VDI (仮想マシン ベースの仮想デスクトップ) を想定した Shared Cache という新機能により、SAN 上にアプリケーションのキャッシュを保存できるようになり、起動時間の短縮やネットワーク トラフィックの削減が可能になるということです。キャッシュを仮想マシンの外におけるということで、仮想マシンの軽量化を維持するのに有効です。
もう 1 つ、RemoteApp for Hyper-V という新しい機能が紹介され、簡単なデモが行われました。RemoteApp for Hyper-V という表現は、Remote Desktop Services (Terminal Services) Team Blog のこちらの投稿からきたものだと思いますが、実際の機能やテクノロジをうまく表現したものではないように感じます。RemoteApp for VDI、あるいは RemoteApp for Virtual Desktop のほうがしっくりくるような気がします。要は、仮想デスクトップのアプリケーションに、RemoteApp のテクノロジで接続するということ。セッションでは詳しい仕組みの説明はありませんでしたが、Windows シェル (Explorer.exe) の代わりに、より軽量な RemoteApp 用のシェル (Rdpshell.exe) が使われるので、こちらも仮想マシンの軽量化 (より少ないメモリで動く) に役立つと期待できます。
実は、RemoteApp for Hyper-V のテクノロジは、Windows Virtual PC のテクノロジと大きく共通しています。このブログで、追々触れていこうと思います。
シトリックスによるパートナー・セッションです。Microsoft VDI に Citrix XenDesktop を統合することで、大きな付加価値が生まれるという話題。マイクロソフトのテクノロジは VDI のベースを提供しますが、VDI に本腰を入れて取り組むのなら、Citrix のソリューションのようなものが必要でしょう。セッションの資料を、実際のデータセンターにある仮想デスクトップに表示して行うなど、デモは一見の価値があるものでした。仮想デスクトップを表示しているクライアントが、Windows や従来の ICA クライアントではなく、開発中のXenClient (ハイパーバーザー型の仮想化クライアント) であったという種明かしが心憎い。
クラウドがプライベートなはずがないという突っ込みがありそうですが、マイクロソフトの言うところのプライベートクラウドとは、仮想化したデータセンターの次に来る、データセンターの姿のこと。クラウドのシナリオをデータセンターに取り入れ、サービス指向のIaaS を利用者にサービスとして提供するというもの。そのためには、マイクロソフトが推し進めてきた Dynamic IT のような徹底的な自動化が必要とのこと。仮想化データセンターがプライベートクラウドでは決してなく、仮想化は要素技術の1つに過ぎない。言い換えれば、クラウドにおいて仮想化を使用するかどうかは重要ではなく、仮想化を利用すれば自動化がしやすいだけということ。
新しいトピックとして、Hyper-V と System Center ベースのプライベートクラウドの構築を支援する無償ツール Dynamic Datacenter Toolkit for Enterprise の名称が、Dynamic Infrastracture Toolkit for System Center に変更になったとのこと。2010 年 前半提供予定で開発中ですが、詳しい内容についてはまだ明らかになっていないようです。
こちらの関連のブレイクアウトセッションに参加しなかったので何とも言えません。基調講演では、SQL Server 2008 R2 の管理コンソール (SQL Management Studio) を使用して、ローカル (オンプレミス) のデータベースとクラウド上の SQL Azure のデータベースの両方を管理できることがデモされていました。
クラウドの波が押し寄せてきますが、クラウドにもオンプレミスにもメリットとデメリット(リスク) があり、両者のよいところを使い分けるのがマイクロソフトのクラウド戦略の柱というわけです。プライベートクラウドもその中にあり、せっかくのデータセンターへの投資を無駄にしないためにも、プライベートクラウド化しましょうということのようです。
データセンターをわざわざプライベートクラウド化しなくてもよいようにも感じましたが、企業グループでグループ内の IT を集中したい場合などには有効かもれませんが…。プライベートクラウドと表現するからピンとこないのかもしれません。単に、データセンターの自動化を進め、管理を楽にする。簡単に言うと、そういうこと。