「地域クラウドビジネス」―Service Integration Business <1>
「SaaS/クラウド大反対!です」
名刺を差し出しながら開口一番こう自己紹介された方がいます。もちろん私がSaaS/クラウドベンダー(自社でClearWorksという業務系SaaSをやっております)と知って先制攻撃してきたという訳です。これはつい先日行われた全国イベントでの一幕です。
実はこうしたことは珍しいことではありません。むしろ地域に行けばその殆どのSIベンダーの本音はこの方と同様ではないかと考えております。東京でも「GoogleやAmazonなどの外資系に席巻されるのは許容しがたい」という方も多々いらっしゃいます。要するにSaaS/クラウドというと、東京のベンダーや外資系ベンダーに全てのITビジネスを根こそぎ持っていかれるのではないかと危惧している方々が大勢いるということです。
とは言ってもGoogleやAmazonの既存モデルを今更いくら追いかけても追いつくものではありません。彼らはグローバルに億単位の実ユーザと大変多くの有能な人材を集積し、その上で更に数千億円にのぼる事業投資を行っており、既にこの分野では明らかに「勝者」であるという事実は冷静に受け入れなければならないでしょう。
一方で、GoogleやAmazonでも既存の成功モデルでは今後の成長モデルを描けなくなりつつあります。当然ながら次の成長事業を模索し続けており、そうした分野ではどこも苦労していることも事実です。私たちも(場合によっては彼らと上手く組んででも)その次のビジネスで勝利を手に入れることができるよう考えてゆくことが必要だと感じています。
一方、東京のSaaS/クラウドベンダーに全てのビジネスを持っていかれるのではないか、というのはまた状況が違っています。SaaS/クラウドは単なるブームではなく今後何らかの形で普及してゆくことは間違いないところです。しかし、現状の国内市場においてはまだ誰も勝者になっていない、まだまだ未開拓の市場であり、付け加えて申し上げれば、SaaSベンダーがどの地域から提供しようと、”クラウド”ですから、全く関係ないと言えば関係ない話しです。
それであれば何故SaaS/クラウドベンダーが東京に集中しているか?これは、東京のベンダーがSaaS/クラウドを提供しているというより、SaaS/クラウドのベンダーが東京に集まっている、と言えます。では、何故SaaS/クラウドをやるのに東京にいる必要があるのでしょうか?それは、SaaS/クラウドのような低単価のサービスを積み上げてビジネスするためには効率よく一定規模のユーザを獲得する必要があり、当然東京が最も大きな市場だからです。
つまり、東京という大きな市場がある地域にこうしたベンダーが集中するということは、実のところSaaS/クラウドと言ってもユーザに近い接点を持って展開することが”ビジネス効率が良い”ということになります。
現に私の会社は「ClearWorks」という財務会計・給与計算・販売管理のSaaS型統合業務システムサービスを展開しており、お陰様で毎日全国のいろいろな地域の方々から大変多くのお問い合わせや資料請求、体験版申し込みなどがあります。これは日増しに多くなっており、改めて利用者の関心の高さを実感しております。
ただ実際はどうなっているかというと受注率自体はそこそこありますが、何せ受注を頂くまでに掛かる平均期間が長いのが大きな特徴です。正直なところこれだけのお問い合わせを頂きながら受注まではかなり時間が掛かっているのが実態です。
その中身をよく分析してみると、私たちの拠点のある東京近郊では平均受注期間が短くうまくお取組みさせて頂けているようです。しかしそれ以外の地域では、平均受注期間が長く受注率自体も若干低い状態で推移しております。この理由は明らかです。要するにお客様は「安心して導入・活用をフォローしてもらえる身近な」環境を求めている訳です。
<筆者紹介>
クラウド・ビジネス・アライアンス 理事 株式会社スマイルワークス 代表取締役社長
リゾート生活に憧れる完全なワーカホリック。 無理無駄の多い合理主義者で コンテンジェンシープラン好きな楽観主義者。