クラウドコンピューティング再考<1>
そもそもクラウドという掴みどころが無いものをどうやって考えれば良いでしょうか?ここでは、NIST(National Institute of Standarts and Technology) による定義を切り口にクラウドについて再考し、そして、特に IaaS について技術面を含め掘り下げてみます。
NISTは、クラウドコンピューティングを定義した"The NIST Denition of Cloud Computing"を公開しました。もちろんこれが答えということではありませんが、非常に良く整理されており切り口として妥当でしょう。この定義では、クラウドコンピューティングの共通する5つの特徴をあげた上で、さらに3 つのサービスモデル、4 つのデプロイメントモデルに分類しています。
NIST はクラウドコンピューティングの特徴として以下の 5 項目をあげています。
事業者は巨大なリソースプールを持ち、そのリソースプールを多くの顧客に対し何時でも何処からでも好きな時に好きなだけ利用できるというサービスを提供します。顧客と事業者の双方は、常にリソースの利用量を把握しており、顧客は、このサービスの対価として利用したリソースに応じた額を支払います。 サービスというところが重要です。クラウドコンピューティングの世界では、顧客は有形の物に対してでは無く、事業者より提供されたサービスに対して対価を支払います。これは、クラウドコンピューティングを実現するアプライアンスやソフトウェアを買ってきてもクラウドな事業はできないことを意味しています。プロダクトベースの事業はクラウドな世界には存在しません。
NIST があげる3 つのサービスモデルは非常に良く知られていると思います。
1SaaS のユーザは、例えばウェブメールやグループウェア等のアプリケーションを利用するだけで、その下位のレイヤー、つまりプログラミングやネットワークをコントロールする権限を持ちません。Google App Engine(GAE) や Force.com に代表される PaaS の場合、クラウド上でアプリケーションを開発する権限は持っていますが、一方ではOSやネットワークに関する自由はあり ません。Amazon EC2、GoGridなどのIaaSも同様に下位のレイヤーに関する権限を持たない為、IaaSのユーザは、OSやミドルウェアの操作はできますが、ネットワークに関しては限定的なコントロールしかできません。 この様にサービスモデルが水平に分割されている為、実は、なにかと批判が多い垂直統合モデルは、クラウドコンピューティングとは相容れません。クラウドの世界で重要なのは、各レイヤー間の接続性や多様性を許容する為のインターフェースの標準化です。
クラウド(リソースプール)の配置の仕方は、4 つに分類されています。
クラウド化によるメリットは、大きく二つあります。一つは、巨大なリソースプールを多くのユーザでシェアすることでコストが下げられること(規模の経済の実現)。二つ目は、運用負荷の低減です。 しかし、リソースプールをシェアするには、全てのユーザが同じポリシーで利用する必要があります。場合によって、不都合があることもあるでしょう。リソースプールに対して最大のガバナンスを利かせるには、規模の経済によるコストメリットを犠牲にして、単独でこれを所有・運用する必要があります。(プライベートクラウド)一方、同じ業種や同じ利用目的を持つユーザであれば、 同じ利用ポリシーを適用できるため、リソースプールをシェアしコストを下げるというモデルが成立するケースもあるでしょう。(コミュニティクラウド)もしどうしても、コストにこだわるのであれば、ユーザ側から歩み寄りリソースプールの利用ポリシーを受け入れる必要があります。(パブリッククラウド) ガバナンスとコストメリットのバランスをとる方法もあります。多くのシステムは、ウェブサーバの様に公開されている部分と、データベースや認証系などの隠しておきたい部分を持っています。それであれば公開されている部分をパブリッククラウドに移しコストを下げ、重要な部分に関しては堅牢なプライベートクラウドへという手法もあるでしょう。(ハイブリッドクラウド)
NIST によるクラウドコンピューティングの定義は、お口に合いましたでしょうか? 既にご存じだった方も多いと思いますが、「なぜ、この特徴が重要なの?」「本当に、サービスモデルは3つだけなの?」とスタンスを変えて読むことで、何回でも楽しむことができるので、是非再度読み返して頂ければと思います。 さて次回は、IaaSの要件を、弊社のLibra(ライブラ)というサービスの実装を交えながら考えていきたいと思います。
<筆者紹介>
株式会社エクシード 取締役 CTO
社会人になってから、一貫してオープンソースを中心とした基盤構築に関わる仕事に携わってきた。
未来については語れるのに、明日については想像すらできないことが目下の悩み。