開発者の名前と「物語」に対する共感|企業クライアント戦略|ブログ|Computerworld

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企業クライアント戦略

開発者の名前と「物語」に対する共感

Posted by 横山哲也 ( 2010年06月14日 )

●「超マシン誕生」で紹介された開発担当者

先に紹介した書籍「超マシン誕生」のラストは、開発に携わっていない人間が「開発担当者」として紹介されるというものだった。実際の開発者も完成披露会に出席していたのが、どのような状況だったかは書籍を読んでいただきたい。エンジニアらしく、少し控えめで、そして少し悲しいシーンである。

一般に開発コード名を製品完成後も使うのは望ましくないのだが、あえて「Eagle」と呼んだのは、開発チームに敬意を表するためである。開発コード名Eagleと、開発リーダーであるトム・ウエストの名前は製品発表後に消えてしまった。せめてブログにくらい残しておきたいものだ。

●物語に対する共感

開発担当者の名前を全面に出すマーケティング手法というのは昔からあった。恣意的に打ち出す場合もあるし、自然発生的な場合もある。当然だが、エンジニアが始めた会社にはそのエンジニアの名前を打ち出すことが特に多い。初期のPCは個人の貢献が大きかったため、必然的に開発者の名前が強調された。

たとえば、完成品としては世界最初のパーソナルコンピュータであるApple IIは、スティーブ・ウォズニアクのエレガントな設計で有名である。ビル・ゲイツはエミュレータだけで作成したBASICインタプリタを一発で動作させたとか、一発じゃなかったけど電話のやりとりだけでバグをなくしたという伝説がある。

現在のWindowsの基礎となったのはWindows NTだが、その開発ストーリーは書籍「闘うプログラマー」として出版され、開発リーダーのデビッド・カトラーの名前とともに有名になった。ちなみに、デビッド・カトラーはその後Windows Azureの開発に関わることになる。2006年の日経ITpro記事では「Windows Liveの開発に携わる」とあるが、今思えばこれがWindows Azureのことであったのだろう。記事を執筆した日経BPの中田敦氏は後に「Windows Azureのことだと分かっていればもっと価値のある記事になったのに」と悔やんでいたが、2006年の時点でクラウドコンピューティングに気付くのは難しかったはずだ。

●ソーシャルメディアの台頭

最近では、ブログやSNS、Twitterなどの「ソーシャルメディア」が増加し、エンジニア個人による情報発信が増えた。さすがに未発表製品の内容は書けないだろうが、製品発表後に「実は私が担当していました」という展開はあるだろう。開発ストーリーを公開すれば、製品に親しみを感じるようになるだろうし、売り上げにも貢献できるかもしれない。

販売中の製品のことを、開発チームやサポートチームがブログに書くことがある。これは「なぜ」そういう仕様なのかとか、「どんな風に」使えばいいのかとか、マニュアルには書いていないことを知るために有益である。

「エバンジェリスト」と呼ばれる人のブログも面白い。「エバンジェリスト」とは「(キリスト教の)伝道師」の意味である。巨大化すると「エヴァンゲリオン」になるわけではない(語源は同じだのだろうが)。エバンジェリストは、(製品が売れるように)正しい使い方を広めるのが仕事であるので、その文章は非常に分かりやすい。マイクロソフト社員のブログ一覧から、参考になりそうなものを定期的にアクセスすれば良いだろう。もちろんRSSに対応しているので、Internet Explorer 7以降など、好きなRSSリーダーを使えばよい。

ソーシャルメディアの台頭は利点と欠点がある。利点は、必要な情報がタイムリーに提供されることだ。個人の責任で書かれたものだから、開発元としての公式なコメントではないのだが、非常に有益である。一方の欠点は、見るべき場所が増えてしまい、どこにどんな情報があるのかが分かりにくくなることだ。ブログには技術情報の他、イベントの案内や個人的な感想も含まれる。あとから参照したくなったときに、誰がいつどのブログに書いた記事だったのかを思い出すのは難しい。

ブログは速報として利用すべきであって、公式ドキュメントの不備を補うものであってはならない。最近のマイクロソフトは、ブログに頼りすぎではないか。この場を借りて苦言を呈したい。

●開発者の名前

ソーシャルメディアは欠点もあるが利点も大きい。特に開発者と直接話ができる利点は他に代え難い。「超マシン誕生」のように、偽物の開発者を連れてきてもすぐばれるだろうし、そもそも偽物では面白い話はできない。

ソーシャルメディアに露出することで、ライターであるエンジニアにも利点がある。その人がどんな仕事をしているかが分かれば、社会的な評価が上がるはずだ。これは、エンジニアとしての地位向上にも役立つはずだ。エンジニアの方はどんどんブログなどで社会に露出して欲しい。

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