強い管理と弱い管理: 文化の伝搬
●管理方針の文化
クライアント管理を行なう上で「強い管理」と「弱い管理」のどちらを採用するかは重大な問題である。
「強い管理」は、システム管理者が決めた範囲のみを許可し、利用者に自由を認めない管理手法である。利用者は不自由に感じるかも知れないが、できることが少ないのはトラブルも少ないことを意味する。
「強い管理」では、Webメールなどの利用を禁止することが多い。情報漏洩を防ぐためだ。ただし、最近ではブログやSNSなどの「ソールシャルメディア」の重要性が高まり、一律に禁止するのは難しくなってきた。「情報は、情報を提供する人に集まる」「知っている情報を提供しない人は、知らない情報を入手できない」という原則があるため、SNSへの書き込みを制限することが企業の利益にならない場合があるからだ。
「弱い管理」は、利用者の自由度を最大限に生かす管理手法である。一見便利そうだが、本当に良いとは限らない。利用者の自由が高いことはトラブルが多いことも意味する。「弱い管理」を採用するには、利用者にそれなりの覚悟をしてもらう必要がある。
「弱い管理」と「強い管理」は、一種の文化であり、どちらが良いとは言えない。一般に大企業は「強い管理」を採用する傾向にあるが、マイクロソフトは伝統的に社内では「弱い管理」を採用している。PCによって育った会社には「弱い管理」が似合う。しかし、もちろんマイクロソフト製品を使って「強い管理」を行うこともできる。
●文化の担い手「ミーム」
文化は、特定の集団内で受け継がれるが、時々変化する。遺伝子(ジーン)の伝搬や変異になぞらえて、「ミーム」と呼ぶ。
「強い管理」と「弱い管理」は、ある種のミームと呼べるが、そのミームはどのようにして広まるのだろう。
岡田斗司夫は、特定のミーム、つまり文化を伝搬させるための要素として「4種類の欲求タイプ」を主張している。人間の基本的欲求は4種類のうち1種類から3種類で構成されるという仮説だ。
真偽はともかく、なかなか面白いし、実際に役に立ちそうなので紹介しよう。
●4タイプそろった文化は伝搬しやすい
システム管理の話に戻る。「強い管理」を採用している場合は、利用者から「あれができない、これができない」という不満が出やすい。逆に「弱い管理」を採用している場合は、「こんなトラブルがあった、こんな不具合が出た」という事態になりやすい。
利用者に納得してもらうには、その管理方針が会社の「文化」として定着させる必要がある。たとえばこういう具合だ(あくまでも1つの例である)。
まず、理想型が「弱い管理とはこうあるべき」と提唱する。法則型は、弱い管理の結果として起きることを予測し(起きたことを観測し)、必要であれば予防策(対応策)を考える。さらに、注目型は「弱い管理でどれだけ気持ちよく仕事ができるか」を考える一方で、司令型が「弱い管理は、強い管理に比べてどれだけ効率が良いか」を分析する。
「弱い管理」と「強い管理」を入れ替えても成り立つことに注意してほしい。文化そのものに優劣はない。しかし、文化が普及する上で4つのタイプがそろっていることは有利に働く。
岡田斗司夫の仮説では、人間は4つのタイプのうち1つから3つを持つが、4つすべてを持つ人はいないという。チームで仕事をする場合、こうした点を考慮して、4つのすべてがそろうようにすると効率が良いらしい。また、提案するときも4つのタイプ全員が納得できる理由を示すと効果的だという。
詳しい内容は「オタキングex」の「人間関係の特効薬 人生のトリセツ」を読んで欲しい。
●嫌われないシステム管理者を目指す
以前、情報処理学会の学会誌に「システム管理者は常に利用者に嫌われる」というコラムがあった。つい笑ってしまったが、ある程度は事実だろう。
しかし、4タイプ全員が納得できるような理由を示せば、ある程度「嫌われ度」が緩和されるかも知れない。逆に、特定のタイプが納得できない場合は、その文化は組織に完全に定着することはできないだろう。たとえば、どれだけ気持ちよく仕事ができても、生産性が上がらなければ司令型は納得しないし、トラブルが減っても、気持ちよく仕事ができなければ注目型が納得しない。矛盾したルールは法則型が納得しないだろうし、会社の方向性と違う管理方針は理想型が納得しないかもしれない。
チームで考えることが重要なのは、自分にはない欲求を発見し、満たすことで、より広範囲に「ミーム」を残すことができるからだ。システム管理の方針を立てるときは、自分と違うタイプの人をチームに加えよう。タイプが違うと理解できない部分もあるだろうが、議論を繰り返すことで視野が開けるはずだ。