クラウド時代に求められるIT基礎スキルとは ――TechEd 2010印象レポート――|企業クライアント戦略|ブログ|Computerworld

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企業クライアント戦略

クラウド時代に求められるIT基礎スキルとは ――TechEd 2010印象レポート――

Posted by 横山哲也 ( 2010年08月29日 )

●マイクロソフトTechEdに参加した

ハンズオンラボ準備

マイクロソフトTech Ed」はマイクロソフト最大の技術カンファレンスであり、日本では毎年8月末に開催される。今年は8月25日(水)から27日(金)の日程で、例年通りパシフィコ横浜で行なわれた。

筆者は、Microsoft Office Communication Server(OCS)の次期バージョンのハンズオンラボ(PCを使った実習)のサポートを行なったが、率直に言ってそれほど高い人気ではなかった。それにしても、予約だけして出席しない人が多かったのは非常に残念である。

OCSとExchange Serverの組み合わせは、在籍確認(プレゼンス)、電話、インスタントメッセージ(チャット)、そして電子メールを統合できるため、非常に強力なコミュニケーションツールになるはずだ。いずれ改めて紹介したい。

パーティ会場の客船

パーティ会場から見たパシフィコ横浜

さて、今回のTechEdで最も注力されたのは「クラウド」である。特に「PaaS(Platform as a Services)」型クラウドである「Windows Azure」について多くのセッションが割り当てられた(PaaSについては後述)。ハンズオンラボもWindows Azureアプリケーション開発の人気が高かった。

2日目にはWindows Azureユーザー会発足記念として、横浜港をクルージングする船上で会員制のパーティが開かれた。マイクロソフト主導でユーザー会が発足することはあまりない。クラウドに賭けるマイクロソフトの意気込みが伝わってくる。

「あの人」と筆者/p>

フレア・バーテンダーのSHOKOさん

船内では、「ライトニングトーク」と呼ばれる5分間のプレゼンテーションが数多く行なわれた。技術的な内容であっても5分あればキーポイントを伝えることができる。多くのコミュニティで行なわれている面白い試みである。

当日使われたスライドの多くは「SlideShare」と呼ばれるシステム上に公開され、イベント「JAZUG Launch Cruising」と結びつけられているので興味があれば参照して欲しい。

もちろん「パーティ」だから、堅苦しい話ばかりでなかった。たとえば、フレア・バーテンダーSHOKOさんによるパフォーマンスが行なわれた(もちろんWindows Azureとは関係ない)。某Webサイトでおなじみの「あの人」も乗船していた。そのうち記事になると思う。

●新しいおもちゃ「クラウド」

クラウドの盛り上がりは初期のミニコン、PC、インターネットの普及期の状況に似ている。

PDP-8やPDP-11と呼ばれる「ミニコン(ミニ・コンピュータ)」が登場したときは「おもちゃ」と言われ、IBMを始めとする大手コンピュータベンダーからは無視された。しかし、専任の管理者が不要なミニコンは研究者を中心に人気を博し、部門の予算で数多く購入された。PDPシリーズを送り出し、ミニコン市場を作ったDEC(ディジタルイクイップメント)は、PDP-11の後継機種であるVAXで大成功し、一時期はIBMに次ぐ規模の会社になった。もっとも、その後、ミニコンはメインフレーム化の道を歩み、ミニコンというジャンルは消滅し、「個人や部門で自由にできるコンピュータ」という精神はPCに受け継がれた。

PCが登場したときも「おもちゃ」と言われた。しかし、IT管理者に無断でオフィスに持ち込まれたPCはビジネスの効率を上げ、後にネットワーク化されて全社システムに組み込まれた。これに伴い、PCの自由度は幾分下がったが「自分のコンピュータ」という基本思想は残っている。

インターネットは、TCP/IPとともに信頼性が疑問視された。筆者は「TCP/IPは信頼性を保証しないプロトコルなのでビジネスには不向きである」という発言をはっきりと覚えている。異論も多かったが、TCP/IPをベースに構築されたインターネットもビジネスには向かないと考えていた人も多い。そのため、TCP/IPとインターネットは「社外向けのWebサイト専用」として導入された。「イントラネット」と名付けられたTCP/IPネットワークが全社システムとして構築されるのはかなり後である。

IT業界のパラダイム(考え方)を大きく変えた技術が、どれも「おもちゃ」として登場し、現場から導入され、最後に全社システムに組み込まれたことは興味深い。そして、今「クラウド」という名前の新しい「おもちゃ」が登場している。

従来のおもちゃと違って、最初からIT部門が注目しているが、全社導入はまだ先になるだろう。筆者は、特定の部門が、既存の業務との連係が緩い分野で勝手に利用を始めると予想している。

「クラウド」と呼ばれる技術は大きく3つに分類される。OSそのものを提供するIaaS(Infrastructure as a Service)、アプリケーション実行環境を提供するPaaS(Platform as a Services)、そしてアプリケーションそのものを提供するSaaS(Software as a Services)である。

IaaSはサーバーOS管理のスキルが必要なため、部門単位での導入には適していない。SaaSは要するにネットワーク経由のアプリケーション利用だが、提供されているサービスは電子メールやグループウェアなどが多く、部門単位で導入しても利点が少ない。その点、PaaSは新しいアプリケーションを比較的簡単に構築できるため部門導入の利点が大きい。

マイクロソフトのPaaSであるWindows Azure Platformを利用するには.NETベースのプログラミング技術が必要だが、新たに発表されたアプリケーション構築ツールLightSwitchを使うことで、専門家でなくても簡単にクラウド対応アプリケーションを開発できるという。おそらく他のPaaSも同様のツールが登場するだろう(あるいはもう存在するかも知れない)。

一部には「アマチュアが作った品質の低いアプリケーションが、業務を混乱させるのではないか」という意見もあるが、これはミニコンやPC、インターネットが登場したときと同じ反応である。つまり、きっと新しい潮流となる。

ただし、ここで大事なことがある。「専門家でなくてもプログラムを作成できる」とは言え、実用に耐えるアプリケーションを作るには、基本的なデータ概念やアルゴリズムの考え方は知っている必要があるだろう。

簡単なものでいいから、プログラムを作った経験は必要になるはずだ。今までプログラムを作っていない方は、ぜひ早い段階で基本的な知識を身につけて欲しい。きっと役に立つ。

もう一度筆者の予想をまとめておく。

  • クラウド時代は部門から始まる。
  • 本命はPaaSである。
  • 非プログラマがアプリケーションを作成することになる。
  • ただし、完全な素人が作るのは難しい。

クラウド時代に必要な技術は、プログラミングの基礎能力となるに違いない。ITユーザーの方も、システム管理者の方も(あるいはシステム管理者の人こそ)、ぜひ基本的なプログラミング知識を身につけて欲しい。きっと役に立つ。

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