「協調の道を探らなければ、 Googleの影響力が増すことに」
ネット中立化や“ホワイト・スペース”(使われていないテレビ放送用周波数帯)の開放、通信事業者のネットワークを利用したSaaS販売などを巡り、これまで米国の通信事業者たちは米国Googleと数々の争いを繰り広げてきた。だが、米国Gartnerのアナリスト、アレックス・ウィノグラドフ(Alex Winogradoff)氏は、「部分的にせよGoogleと協調する道を模索しなければ、いずれ争いに敗れ、テレコム業界における同社の影響力を拡大させることになる」と警告している。
ウィノグラドフ氏は、11月13日に行われたComputerworld米国版とのインタビューにおいて、Googleと通信事業者たちの争いは、テレコム業界の再編につながる大規模なものになる可能性があると同時に、回避することもまた可能であるという認識を示した。
「Googleにとって重要なのは、自社のサービスに対するユーザーのアクセス手段を確保することだ。その手段を失う危険を冒してまで通信事業者と争う意志はない。Googleは、世界中のあらゆる情報をGoogle経由で提供することを望んでいるが──、そこで引き起こされる混乱に皆が巻き込まれている」(ウィノグラドフ氏)
また同氏は、通信事業者が有料で提供しているアプリケーションや機能をGoogleが無料で提供することで、通信事業者のビジネス・モデルが破壊され、通信業界のエコシステムに混乱が生じると指摘する。
こうした事態を避けるためには、AT&TやVerizon Communications、Sprint Nextelといった通信事業者は、「Googleに対抗するのではなく、特定の分野では協調していく必要がある」という。「Googleがどの程度、通信事業者の事業案件やビジネス・モデルを破壊するのかという点が問題だ。協調に向かう解決策を見出せない場合、エンターテインメントやSaaS、クラウド・コンピューティングなど、通信事業者が今後成長を期待している事業分野に深刻な影響が及ぶかもしれない」(ウィノグラドフ氏)。
「テレコム市場の閉鎖性を改善すれば Googleの影響力は弱まる」
一方、米国J. Gold Associatesのアナリスト、ジャック・ゴールド(Jack Gold)氏は、通信事業者とGoogleが協調したとしても、こうした問題が解決されるかどうかは明確ではないと考えている。同氏はむしろ、今なお閉鎖性の強いテレコム市場の体質に問題があると指摘する。「これまで、通信事業者はネットワークの利用に厳しい制限をかけてきた。例えば、携帯電話に組み込むアプリケーションなどは今なお彼らに決定権がある。通信事業者は現在でも、ユーザーの電話の使い方に多大な影響力を行使しているのだ」(ゴールド氏)。
ウィノグラドフ氏は、Googleのテレコム業界に対する影響力は、将来的には非常に強いものになるだろうと述べる。一方、ゴールド氏は、例えばMicrosoftなど他の企業の参入も考えられることから、影響力は限定的なものになるとしている。
これまで2年間に渡り、Googleは次のような行動を実践し、テレコム業界への影響力を高めてきた。
- 米連邦通信委員会(FCC)に圧力をかけ、700MHz周波数帯の「Cブロック」に対するオープン・アクセスを認めさせた。
- Open Handset Allianceを設立し、携帯電話プラットフォーム「Android」の普及拡大への取り組みを主導している。
- ネットワーク中立化に関する議論を主導し、FCCのネット中立化原則を成文化するよう議会に求めている。
- 位置情報ベースのアプリケーションで広告サービスを提供するため、位置情報技術に大規模な投資を行っている。
- MicrosoftやHP(Hewlett-Packard)、Dellなどとともに、800MHzブロックのホワイト・スペースの利用を呼びかけている。
- 企業に対し、Googleのオンライン・アプリケーションやクラウド・コンピューティング・インフラを利用するよう促している。
Googleは、通信事業者やコンテンツ事業者に対抗するためだけにこうしたことを行っているわけではないものの、ウィノグラドフ氏はGoogleが「通信事業者のビジネス・プロセスが、技術革新や変革の妨げになっているという認識は持っている」という。
一方、ゴールド氏は、通信事業者がさらに市場開放を進めれば、Googleと提携する必要性は小さくなるとの見方を示している。