Windows Phone 7の第一印象は
“セキュア”なスマートフォン
実際にWindows Phone 7を利用した筆者の第一印象は「セキュアなスマートフォン」である。iPhone(iOS)やAndroidの後発となるWindows Phone 7は当然、ほかのスマートフォンとの「違い」がなければならない。Windows Phone 7の「セキュア」という特徴は、十分に競合スマートフォンとの違いが出ていると思う。

▲Windows Phone 7.5を搭載した富士通東芝モバイルコミュニケーションズ製のスマートフォン「Windows Phone IS12T」。通信キャリアはau
それでは、Windows Phone 7には具体的にどのような特徴があるのか。企業内利用でよく使われる機能を中心に確認していこう。
■ネットワーク機能
スマートフォンを企業内で利用する際に、主力となるネットワークは「Wi-Fi」である。Wi-FiはWindows Mobile 6/6.5(以下、Windows Mobile)時代から用意されていた機能だが、Windows Phone 7では少し制限が加わった。
Windows MobileではWindows PCと同じように、SSIDが確認できるアクセスポイントに接続することはもちろん、SSIDが確認できないアクセスポイントについても自分で名前を登録して接続することが可能だ(画面1)。対してWindows Phone 7では、SSIDが確認できるアクセスポイントだけが接続可能となった(画面2)。なお、ステルスSSIDへの接続については、Windows Phone7.5からサポートされる。

画面1:Windows Mobileでは、「新しい設定の追加」からSSIDを確認できないアクセスポイントにも接続できる

画面2:Windows Phone 7では、SSIDの一覧からアクセスポイントを選択して接続するだけ。ただし、Windows Phone 7.5ではステルスSSIDもサポートされるとのことだ
また、IPアドレスの設定に関しても、Windows Mobileでは自動構成、手動構成のどちらも選択可能だが、Windows Phone 7ではDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバから割り当てられるIPアドレス(自動構成)のみとなっている。テスト環境などで、一時的に固定のIPアドレスを割り当ててWindows Phone 7を使いたい場合などは非常に不便だが、言い方を換えれば(だいぶポジティブな考え方だが)“不適切なIPアドレスが割り当てられなくなった”と言えるだろう。
■ファイル管理
Windows PCでも、Windows Mobileでも、ファイル管理の基本は「エクスプローラー」だった。しかし、Windows Phoneではエクスプローラーによるファイル管理ができなくなった。
その代わりに「Officeハブ(Office Hub)」と呼ばれる、Officeアプリケーションの実行プログラム兼ファイル管理プログラムが用意された。Officeハブでは「Documents」という領域の中に、Windows Phone 7のOffice(Word、Excel、PowerPoint)で作成したファイルが保存される。
ファイルを長タップすると、画面3のようなショートカットメニューが表示され、削除などの操作を行うことができる。画面3のメニューからもわかるように、Officeハブ内のファイルはフォルダ内の移動、コピーなどの操作は一切できず、「send」ボタンでメールの添付ファイルとして送信できるだけだ。

画面3:OfficeハブのDocuments領域
企業内でSharePointを利用している場合には、Officeハブから直接ドキュメントライブラリの内容を参照することができる(画面4)。SharePoint領域内に表示されているドキュメントはダウンロードしたものではなく、ライブラリを参照しているものなので、ここでドキュメントに対して行った変更内容は、直接ライブラリ内のドキュメントに反映される。

画面4:OfficeハブのSharePoint領域
そのほか、Officeハブには「OneNote」で扱うコンテンツを保存する領域として、「OneNote」領域もある。
OfficeハブはOfficeアプリケーションのコンテンツを扱う領域だが、画像ファイルなど、そのほかのファイルについては、ファイル種類ごとに別々の保存領域が各アプリケーション内に用意されている。
例えば、画像ファイルの場合は、「PICTURES」アプリケーションの中で扱われる(画面5)。PICTURESアプリケーションは、カメラで撮影した画像を保存する「Camera Roll」領域のほか、「Windows Live」のストレージ領域として無償で提供されている「SkyDrive」内の画像を参照できる領域などが用意されている。

画面5:「PICTURES」領域の画面
画像ファイルのほか、音楽ファイルや動画ファイルの管理は、Windows PCにインストールした「Zune」アプリケーションとの間で同期することが可能だ(ファイルの同期については、次回詳しく解説する予定)。
Windows Phone 7では、エクスプローラーを使ってファイルやフォルダにアクセスするのではなく、ハブによってアクセスできる領域を絞り込んでいる。これにより、情報漏えいのリスクを軽減する効果や、マルウェアなどの不正なファイルが紛れ込まないような効果が期待できる。
■アプリケーション
Windows Phone 7用のアプリケーション開発環境としては、「Visual Studio」が用意されている(今回は運用管理まわりにスポットを当てているので、開発環境に関する詳細は割愛する)。ここまでは、Windows Mobileとほぼ同じだが、開発したアプリケーションの展開方法(インストール方法)がWindows MobileとWindows Phone 7では大きく異なる。
Windows Mobileでは「.cab」形式のセットアッププログラムファイルを用意し、個々の端末で実行すれば、どんなアプリケーションでも自由にインストールすることができた。しかし、Windows Phone 7では、基本的には「Marketplace」と呼ばれるクラウド上のアプリケーションの公開領域に公開しないと、インストールことができなくなっている。
さらに、Marketplaceへのアプリケーションの公開には、開発者としてのアカウントの登録が必要になる。このことは、マルウェアを含むアプリケーションが簡単にWindows Phone 7にインストールできないようにするために一定の効果を持つ。
しかし、企業内で利用するアプリケーションの場合は、閉じた環境下のアプリケーションであるため、できればMarketplaceを使わないでインストールしたい。その場合には、「Windows Phone SDK」(マイクロソフトWebサイトよりダウンロード可能、[URL]http://www.microsoft.com/download/en/details.aspx?displaylang=en&id=26648)に付属する「Application Deployment」ツールを利用するのが現実的である(画面6)。

画面6:Application Deploymentツールの画面
Application Deploymentツールでは、USB接続されたWindows Phone 7端末に対して、「.xab」形式のセットアッププログラムファイルをインストールすることができる。詳しくはMicrosoft MSDNサイトを参照してほしい([URL] http://msdn.microsoft.com/en-us/library/ff769512(v=vs.92).aspx)。
ここまで見てきたように、Windows Phone 7は一見するとWindows Mobileに比べて多くの制限事項があり、ほんとうにアップグレードされているのか疑わしく思える部分もある。しかし、セキュリティが重要視される企業内での利用を考えれば、これらの制限はむしろ歓迎されるべきだろう。
Windows Phone 7は、次のアップデート「Windows Phone 7.5」(開発コード名:Mango)のリリースが予定されていたり、アプリケーション配布のための開発登録の仕組みの変更が予定されていたりと、さまざまな変化が今後も予想される。本連載では、企業内利用の視点での解説をしながら、Windows Phone 7の最新動向についても同時に紹介していく予定だ。