最大の魅力は、「手軽に」 機能を「試せる」こと
企業がオープンソースのグループウェアに期待するのは、何よりもまず商用ソフトウェアよりも低価格だということであろう。次いで、ソース・コードが公開されているので、自由にカスタマイズできるという点が評価されることになろうか。
もちろん、オープンソースの場合、商用ソフトウェアとは異なり、必ずしも十分なサポートが得られるわけではない。サポートはWebサイトで公開されているドキュメントや、掲示板におけるユーザーどうしの相互扶助などが基本となる。だが、それでは不安だというユーザーのために、一部のオープンソース・グループウェアでは、開発元やサードパーティによる有償サポートが提供されている。本パートで紹介する4本のグループウェアの中では、「La!cooda WIZ」と「GroupSession」がそれに当たる。一方、「ペンギンオフィス2」のように、オープンソース版よりも豊富な機能を備えている製品版のみにサポートを設けているケースや、「Group-Spirit 2.0」のように、5ユーザーまでは無償で利用可能だが、ソースとサポートの提供は有償(6ユーザー以上、5万円から)になるといった独特のライセンス形態を取っているものもある。いずれにせよ、以上のグループウェアに共通する魅力は、無償でありながら一とおりの機能を備えており、そのままでも十分利用可能なうえに、カスタマイズの自由度が高いことである。
なお、本稿で紹介する4本のグループウェアの主な仕様を表1に示した。
劇的な変化が期待できる オープンソース・グループウェア
オープンソース・グループウェアの開発は今後、ますます活発化しそうである。今年2月には、ノベルがオープンソース・グループウェア開発プロジェクト「Hula」を立ち上げたし、7月には、オープンソースのコラボレーション・ソフトウェア「Open-Xchange Server 5」を開発している米国オープンエクスチェンジが、同ソフトウェアをノベルとレッドハットのLinuxディストリビューションにバンドルすることを発表している。Open-Xchange Serverはマイクロソフトの「Exchange Server」と競合するもので、この発表によって、今後、オープンソース・グループウェアの立ち位置が大きく変化することになりそうだ。
PRODUCT WATCH 01
ペンギンオフィス2(オープンソース版)
●ペンギンファクトリー http://www.penguin.ne.jp/
製品版の機能を一部制限してオープンソース化
「ペンギンオフィス2」は、PHPで開発されたWebベースのグループウェア製品である。2003年12月に製品版の機能を一部制限したオープンソース版が公開され、今年7月の時点で約2,700件、ダウンロードされている。
製品版は、オープンソース版の機能(詳細は後述)に加えてWeb上でファイルを保管・共有可能な「共有フォルダ」の機能を備えており、さらに携帯電話からの閲覧機能も強化している。製品版の提供形態には、パッケージ、ASP、OEMの3種類があり、国立病院、大手OA機器販売会社、SIerなどへの納入実績を持つ。
オープンソース版に対するサポートは行われていないが、製品版にはメールによるサポートが提供されている。無償で利用できるオープンソース版の主な機能は、次のとおりだ。
■予定表
日/週/月/年の4つの単位でスケジュールを表示できる。打ち合わせや会議などの予定をグループ・メンバーと共有したり、会議室などの予約と連動させたりすることができる。予定ごとに非公開にすることや、内容を伏せてスケジュールが埋まっている時間帯だけを公開することも可能。
■施設・設備予約
日/週/月/年などの単位で表示。自動ブッキング・チェック機能や、ユーザーごとに利用可能な施設を制限する機能も備える。
■BBS
談話室や伝言版、ホワイトボードといった用途に利用できる。件名の一覧表示、未読件数の表示、タイトルの検索が可能。
■回覧板
送信先を複数指定して一斉配信できる。WordやExcelなどのファイルの添付も可能。携帯電話への送信にも対応している。
■ワークフロー
あらかじめ定義したフローに従って、各案件の承認/否認といった決裁を迅速に行うための機能。WordやExcelなどの添付ファイルに対応。案件は「未承認」「承認済」「否認済」「決裁中」「決裁済み」の5つの状態に分類され、一覧表示できる。
■住所録
名刺管理に利用できるほか、グループウェア上の各機能と連動して顧客情報に随時履歴を残すことができる。登録された情報は、社内スタッフや得意先といった分類ごとに自動的に仕訳される。勤務先や個人名による並び替えに加え、フリーワードによる検索にも対応。住所録の利用権限は4段階あり、役職に応じてアクセスできる範囲を限定できる。
■その他の機能
「備忘録」「リンク集」「伝言メモ」「メンバー一覧」といった機能を備える。
PRODUCT WATCH 02
La!cooda WIZ
●システム・コンサルタンツ http://wiz.syscon.co.jp/
有償のサポート体制や商用サービスを整備
「La!cooda WIZ」は、PHPで開発されたオープンソースのグループウェア「Sky Board」を基に開発されたオープンソース・ソフトウェアだ。
無償で利用できるグループウェア本体のほかに、携帯電話からのアクセス機能を追加した「La!cooda WIZ for ケータイ」(9,800円)と個人/グループのタスク管理機能を追加した「La!cooda WIZ +TASK」(9,800円)という2つの有償アドオンが用意されている。
サポートに関しては、オープンソース・ソフトウェアとしては充実していると言えるだろう。FAQを無償で公開しているほか、インストール・サービス(2万4,000円より)、バックアップ、データ登録、データ移行、不要データ削除などの保守作業(10件まで5万円)も提供している。そのほか、個別見積もりの訪問サポートも提供している。
また、ASPやレンタル・サーバ業者がLa!cooda WIZを用いたサービスをエンドユーザーに提供している例もある。つまり、エンドユーザーには、La!cooda WIZをダウンロードして無償で利用するという方法と、ASPサービスとして(比較的安価に)利用するという方法の、2つの選択肢が用意されているわけだ。そのほか、システムフレンドが、オープンソースの全文検索エンジン「Namazu」をLa!cooda WIZに組み込んだ文書管理システムを有償で提供している。
La!cooda WIZが公開されたのは2002年6月のことだが、今年4月時点で約4万6,000件のダウンロード実績がある。同ソフトの主な機能は、次のとおりだ。
■スケジュール帳
個人およびグループ・メンバーのスケジュールを日/週/月単位で表示できる。日付をクリックすると、その日の予定が入力可能になる。スケジュールの入力項目は、時間(10分間隔で指定可能)、内容、場所、備考、公開の有無、である。
■行先ボード
スケジュール帳と連動して、登録ユーザーの状態(在席/外出/帰宅)を表示。また外出中の行動予定や連絡先の記入・表示が可能。「伝言」欄に他のユーザーが伝達事項を記入すれば、トップ画面の「MY伝言メモ」に表示される。
■回覧板
回覧の宛先は、個人名/部門名/就業形態(正社員か否かなど)から選択できる。さらに回覧を相手が受信したかどうか確認する機能も備えている。
■ワークフロー
任意のルートでWordやExcelなどのファイルを回覧できる。承認状況の確認や承認済みの検索・閲覧も可能である。
■掲示板
情報はスレッド表示や並列表示に対応。投稿者、題名、メッセージ本体などでの検索が可能だ。
■その他の機能
「会社行事・予定」「当番表」「伝言メモ」「ファイル共有」「施設予約」「取引先・担当者一覧」などの機能を備えている。
PRODUCT WATCH 03
Group-Spirit 2.0
●アイムコム http://www.aimcom.co.jp/
5ユーザーまでは無償、有償版のみソースを公開
「Group-Spirit 2.0」は、5ユーザーまでは機能制限なしで無償で利用できるが、ソースとサポートが提供されない。6ユーザー以上は有償(5万円より)になるが、ソースとサポートが提供される。また、ユーザー数無制限で90日間機能制限なしで試用することもできる。
「どんなに豊富な機能を備えていても、パッケージ化されたアプリケーションのみで業務のすべてに対処することは難しい。それをカバーするためには、ユーザー企業が独自のアプリケーションを簡単に組み込めるようにすることが大事だ。そこで、PHPとWebアプリケーションの知識を持つ開発者向けに仕様を公開している」というのが、開発元であるアイムコムのスタンスだ。
Group-Spiritの前身となったグループウェア「GroupWebWide」は1998年に無償配布が開始され、これまでに1万2,000件以上がダウンロードされた。同ソフトのユーザーの意見を集約して開発されたのがGroup-Spiritである。2003年10月に販売を開始した同ソフトの有償版の導入実績は約200件だ。
Group-Spiritの機能面での特徴は、ログイン後のトップ画面で、新着情報にすばやくアクセスできるようになっていることだ。グループ別のトピックスが掲載期間終了日の近い順に表示され、また、以下に紹介する各アプリケーションの新着情報(前回のログアウト時からの更新情報)も表示されるようになっている。
同ソフトの主な機能は、次のとおりだ。
■スケジュール
グループのスケジュールを管理する機能で、グループに所属するユーザー(メンバー)のみがスケジュールを閲覧できる。スケジュールは、自動的にメンバーの個人スケジュールにも反映される。設定により他のメンバーのスケジュールも表示できる。またプライベートなスケジュールを非公開で登録することも可能だ。
■日報
日々の業務/活動内容を記録するための機能。システム管理者によって設定された日報閲覧可能ユーザー以外は、自分の日報のみ閲覧できる。
■プロジェクト
業務や活動の進捗報告や意見交換のための機能。プロジェクトの閲覧はグループに対応している。ToDoリストでは、経過率がグラフ表示される。そのほか、検索機能も備えている。
■会議室
最大5つの会議室を設定でき、それぞれ入室を許可するグループを指定できる。ツリー階層により、問題提起の発言とレスポンスの関係を表示することも可能。
■ファイル管理
ファイルの管理ならびに共有、検索を行える。ファイルに修正を加えた場合は、別途文書でコメントを添えることができる。
■その他の機能
「共有連絡先」「共有メモ」「共有ブックマーク」、「設備備品予約」「ユーザー情報」などの機能を備えている。
PRODUCT WATCH 04
GroupSession
●日本トータルシステム http://www.gs.sjts.co.jp/
マルチプラットフォームに対応しており、社内の環境に合わせた導入が可能
「GroupSession」は、1999年10月に提供が開始されたWebベースのオープンソース・グループウェアだ。すべてJavaサーブレットで作成されており、クライアント/サーバ共にプラットフォームに依存しないのが特徴である。現在、1カ月に約1,000件のダウンロードが確認されているが、実際の利用状況は把握されていない。
サポートは、WebサイトでのBBSおよびFAQ。BBSは基本的にはユーザーの相互扶助の場だが、同社スタッフができるかぎり対応しているという。有償のインストール・サポート(3,150円より)も提供している。
GroupSessionが標準の状態で備えている主な機能は、次のとおりだ。
■スケジュール
個人およびグループのスケジュールを日/週/月単位で表示。同一スケジュールを複数人に登録できる。なお、ユーザーは複数のグループに登録でき、他のユーザーの最終ログイン時間を閲覧することも可能だ。
■掲示板
ユーザー全体またはグループ別に連絡事項を通達できる。グループ単位で、掲示板のタイトルや作成者、作成日時、有効期限を閲覧できる。タイトルをクリックすると掲示板の内容が表示され、それに対する意見を投稿できる。添付ファイルにも対応。
■回覧板
メッセージを送信、閲覧するための機能。回覧板は一覧表示され、タブで受信メッセージと送信済みメッセージに切り替えられる。タイトル、日付、投稿者ごとに表示する順序を変更することも可能。受信者は確認ボタンを押すことにより、回覧板を閲覧したことをメッセージ付きで送信者に通知できる。送信者は受信者が回覧板を閲覧したかどうかを一覧で確認できる。
■施設予約
施設の予約が行え、その状況は週または日単位で表示される。会議室や社用車などグループ分けを行って検索ができ、施設名をキーに表示順を変更することも可能。
■稟議
稟議書をユーザーが回覧するための機能。稟議書には、受信、申請中、完了、ごみ箱などの分類があり、タブで切り替えられる。また、各分類項目ごとに表示順序を変更できる。タイトルをクリックすると確認画面が表示され、稟議書の内容や承認履歴などが閲覧できる。添付ファイルにも対応。管理者は、申請中、または完了した書類を管理でき、作成日などで検索できる。
■タイムカード
出社・退社時間が入力でき、閲覧は月単位で行える。管理者はすべてのユーザーのタイムカードを閲覧・編集できる。
■その他の機能
「社員情報」「名刺管理」「共通リンク」の機能を備えている。将来的には携帯電話やPDAといったモバイル端末からのアクセスにも対応していくとのことである(時期は未定)。
COLUMN オープンソース・グループウェアの最新動向
本パートで紹介したグループウェアは、国内で開発されているものばかりであるが、もちろん、海外で開発されているグループウェアも多数存在する。例えば、「PHProjekt」「dotproject」「phpGroupWare」、そしてphpGroupWareから分岐した「eGroupWare」などである。
これらのソフトウェアは、多くの開発者やエンドユーザーに支えられていることもあって、高度な機能を備えているものも少なくないが、日本語環境への配慮が不十分なものや、日本語のドキュメントが提供されていないものがほとんどだ。また国民性や仕事のスタイル、習慣の違いにより、グループウェアに求める機能が微妙に異なるため、海外製のグループウェアをそのまま日本企業が使うのには無理があることが多い。
■豊富なモジュールを提供するphpGroupWare
上に挙げた海外のグループウェア製品の中で、例外的に日本語環境への対応が進んでいるのがphpGroupWareだ。phpGroupWareは、その名のとおり、PHPで開発されたWebベースのグループウェアである。米国発のオープンソース・プロジェクトだが、他の国々からも多数開発者が参加している。日本語化については、2001年10月より「ITはあと」(http://www.itheart.com/phpgw/)が行っている。
phpGroupWareは、マルチユーザー、多言語に対応したグループウェアである。独自のAPI環境を備えており、Webアプリケーション・フレームワークとして利用することができる。具体的には、認証、データベース処理、アクセス・コントロール、セッション管理などの機能が、phpGroupWareのモジュールとして提供されている。もちろん、これらをベースに新しいモジュールを作成することもできるので、同ソフトを基にしたERPパッケージを開発しているサードパーティも存在する。
phpGroupWareのエンドユーザー向けの主なモジュールは、次のとおりである。「電子メール・クライアント」「アドレス帳」「ブックマーク」「カレンダー」「チャット」「ファイル・マネジャ」「フォーラム」「ニュースサイト・ヘッドライン・システム」「プロジェクト管理」「ヒューマン・リソース・モジュール(社員情報)」「インフォログ(伝言機能)」「メッセンジャ」「ニュース管理」「ネット・ニュース・リーダ」「電子ノート」「ナレッジ・ベース」「簡易電子投票」「サイト管理」「株価情報」「ToDoリスト」「トラブル管理システム」「連載漫画システム」など。
また国内ではphpGroupWare日本語化プロジェクト(http://phpgroupware.jp/)による、ユーザーへの有償/無償のサポートが行われている。
■グループウェアとしても利用可能なXOOPS
さて、オープンソース・コミュニティに関しては、もう1つ注目に値する動きがある。それは、CMS(Contents Management System)である「XOOPS」(http://jp.xoops.org/)をグループウェアとして利用しようという動きである。
汎用的なコミュニティ・サイト構築ツールでもあるXOOPSは、モジュールの組み合わせにより、グループウェア的に利用することができるのだ。本家サイトは海外だが、主要な開発者が日本人であるため、ソフトの日本語対応や日本語のドキュメント、書籍なども充実している。また「5分で」コミュニティ・サイトが構築できる手軽さを売りにしており、人気も高い。最近、本家とは離れて日本独自のXOOPSを開発する動きがあり、日本のコミュニティも活性化している。
具体例としては、XOOPSをベースに国立情報学研究所が開発した「NetCommons」(http://www.netcommons.org/)が、eラーニングやグループウェア、ソーシャル・ネットワーク・サービス向けの機能を備えている。同ソフトが想定している主な利用シーンは、学校やSOHO、NPO(民間非営利組織)などにおける情報の交換・活用であり、今年8月上旬にはダウンロード可能になる予定だ。