どのレイヤから着手すべきか──技術トレンドと製品の成熟度を探る
今日、企業コンピューティングの世界において最も注目を集めるテクノロジー・トピックの1つである仮想化(Virtualization)。本誌でも幾度となく取り上げてきたが、そのたびに大きな反響を呼んでおり、ユーザー企業にとって非常に関心の高い技術であることがうかがえる。では実際問題、どこから着手すべきか。2006年9月14日に六本木アカデミーヒルズで開催された本誌主催コンファレンス「Computerworld Conference 2006 Fall」では、このホット・テクノロジーのトレンドと製品の成熟度を探るべく、この分野のスペシャリストたちがセッションを繰り広げた。
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| 写真1:仮想化を重要なIT投資ととらえて準備を進めるべきであると説く、テックバイザージェイピー代表取締役の栗原潔 氏 |
仮想化技術の導入を検討しているユーザー企業にとって最大の関心事は、「技術が現在どこまで進展しているのか」、そして「自社ITインフラへの導入がもたらす具体的なメリットは何か」という2点であろう。今回で3回目となった本誌主催コンファレンスでは、この2つの観点から仮想化の“いま”に迫るセッションが展開された。
最初のセッションは、本誌の特集や連載「紙のブログ」でもおなじみのテックバイザージェイピー代表取締役、栗原潔氏(写真1)による基調講演「仮想化技術の動向と活用の指針」である。同氏は「仮想化は、ITの世界ではきわめて一般的な概念。決して夢物語ではなく、完全に実用期に入ったテクノロジーと言える」と前置きし、そもそも仮想化とは何かという根源から、この技術の解説に入った。栗原氏はまず、仮想化技術の形態を次のように分類した。
「仮想化は、ユーザーにとっての複雑性を減少させるというメリットと、処理オーバーヘッドが増加してシステム内部が複雑化するというデメリットというトレードオフが存在する」と栗原氏。ただし今日では、システム処理能力の向上や仮想化の付加価値を提供しうる製品の登場によりメリットが増大し、この技術の採用が有効となる領域が拡大しているという。
上記の3形態はあくまでも広義の仮想化の概念であり、実際のところ、アグリゲーションやエミュレーションが仮想化とみなされることはあまりない。今日、一般に仮想化と呼ばれているのはリソース分割の形態であり、その中でも注目を集めているのが、1台の物理サーバのリソースを分割して複数の論理サーバを構築するサーバ仮想化技術である。栗原氏は、同技術について次のようなメリットを挙げた。
「価格が安くなったので、これまで企業は利用率をあまり気にせずどんどんサーバを購入していった。だが、そうしたサーバの乱立は運用管理コストの高騰を招き、サービス・レベルを低下させてしまう。そうした状況から、サーバ仮想化の重要性が大きく増してきている」と栗原氏は指摘した。
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| 写真2:「基幹業務系での適用が進めば、仮想化技術は本格普及の緒につく」と語る、アイ・ティ・アールのシニア・アナリスト、三浦竜樹氏 |
では、サーバ仮想化はいかなる形で実現されるのだろうか。栗原氏は、この技術の技法は多く存在し、その特性も多様であるとしたうえで、以下の技法を示した。
「これらの複数の方式を適材適所で活用することが求められる」と栗原氏。そして、現在、多くの企業で進められているサーバ統合プロジェクトにおいて、サーバ仮想化が有用な解決策となると語った。また、同氏によれば、部門サーバやデスクトップPCなど、仮想化の適用範囲は今後さらに拡大されていくことになるという。
実際、仮想化技術は国内企業においても急速に導入機運が高まっている。その動向分析を、アイ・ティ・アールのシニア・アナリスト、三浦竜樹氏(写真2)が発表した。コンファレンスの開催に先立って実施した事前アンケート調査(有効回答数:111社)によると、「すでに導入済み(テスト導入も含む)」と回答した企業はサーバ仮想化で21%、ストレージ仮想化でも21%に達しているという。
仮想化によるメリットとしては、72.1%という高回答率を得たのが「ITリソースの効率活用(新規プロジェクト始動時の既存リソースの有効活用や余剰リソースの削減など)」である。そのほか「運用・管理に要する労力やコストの削減」への期待を示した企業も54.1%と半数を超えている。これらの結果を受けて三浦氏は、こう指摘した。
「仮想化の導入における課題として、技術そのものに関するスキルや経験の不足、そして製品の未成熟さなどはあるが、そうした課題やデメリットを上回る導入効果に期待する企業が多いようだ。既存の余剰リソースを活用して、仮想サーバを必要とするビジネス部門に柔軟に配備できる点や、そしてサーバ統合によるTCO(総所有コスト)の削減などが、現在のユーザーが認識しているメリットである。また、災害・障害対策としても、仮想化が選ばれるケースが増えてきている」
さらに三浦氏は、この技術の今後について、次のような見通しを示した。
「現時点での主なサーバ仮想化の適用領域は、テスト/開発環境やファイル/プリント・サーバ、Webサーバなどで、ERPやCRM、SFAなどの基幹業務系での適用はまだこれからである。この辺りがサーバ仮想化の本格普及のカギとなるだろう。また、製品としては、サーバ仮想化分野だと、VMwareとMicrosoft Virtual Serverが圧倒的な支持を得ている。ただし、オープンソース・ソフトウェアのXenも、大手CPU/サーバ・ベンダーのサポートを受けて徐々に支持を集めている」
仮想化は、すでに実用段階のテクノロジーとして企業のITインフラに変革を起こし始めている。今回のコンファレンスでは、そのダイナミズムを強く感じとることができた。(文:小山健治/写真:片岡 純)
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