データセンターの省電力化――そのカギを握るのは「物理インフラのライト・サイジング」と「ラック列単位の冷却」

グリーンITへの取り組みとして「データセンターの効率向上」を訴えるAPC

佐志田伸夫氏

今日、データセンターの一大課題となっている省電力/熱対策。企業のIT/IS部門においては、その有効な解決策が求められている。そうしたなか、2007年11月22日、「強い企業を作る省エネ・環境配慮型データセンター」をテーマに、グリーンITへの具体的な取り組みを提言する「Japan Green IT Forum 2007」が開催された(主催:IDC Japan)。同フォーラムで講演した、APCジャパン 商品企画部担当部長の佐志田伸夫氏は、データセンターの省電力化のキー・ポイントとして、物理インフラのライト・サイジングとラック列単位の冷却手法が有効であると強調した。

データセンター効率を高めるうえで
着目すべき「物理インフラ」

 UPS(無停電電源装置)やラックなどのITインフラ・ソリューションで知られるAPCジャパンは、グリーンITというテーマに早くから取り組んでいるベンダーである。

 APCは、データセンターの省電力化を促進するコンソーシアム「Green Grid Consortium」に参加している。同コンソーシアムは、データセンターの省電力化を目的に、それを実現するための標準化/測定手法/ベスト・プラクティス/技術開発を推進している。世界を代表するITベンダーが軒並み参加する同コンソーシアムにおいて、APCは唯一のインフラ関連ベンダーとしてボード・メンバーにその名を連ねている。

 Japan Green IT Forum 2007の講演に登壇したAPCジャパンの商品企画部担当部長、佐志田伸夫氏は、サーバや電源/冷却装置が非効率に運用されていることが、電力およびハードウェアに投じるコストの増大につながっていると指摘。そのうえで、「データセンター効率(DCE:Datacenter Efficiency)」を向上させることが重要だと述べた。

データセンターの電力利用効率を示すDCE(Datacenter Efficiency)

 Green Grid Consortiumは、データセンターの電力利用効率に関する指標として、このDCEを提唱している。そこでは、サーバやストレージといったIT機器の消費電力量をデータセンターの総入力電力で割った値が参照される。これについて佐志田氏は次のように説明した。

 「DCEの値が高ければ、エネルギー効率にすぐれたデータセンターであると評価することができる。実際のデータセンターで消費される電力を100%とすると、IT機器で使われる電力が30%であるのに対し、冷却装置では45%、照明やセキュリティ、電源装置などで使われる電力は25%を占めている。冷却装置や電源など、いわゆる物理層を構成するインフラ部分の効率を改善することが、データセンター効率を高めることに大きく寄与する」

インフラ全体の効率向上につながる
「物理インフラの標準化/モジュール化」

 上述したように、データセンターにおいて物理インフラが占める消費電力量は予想以上に高く、それがインフラ全体の効率を低下させる原因となっている。また、これまでデータセンターの電源/空調設備は、10〜15年使い続けることを前提に設計・構築されてきたが、一方で、IT機器は3〜5年ごとにリプレースが発生し、業務のニーズに応じてシステムの拡張が行われる。そのため、ここでも物理インフラとIT機器の間にギャップが生じ、効率の悪化を招くことになる。

 佐志田氏は、「10年先のIT環境を見越したインフラ投資は、オーバー・サイジングにより大きな無駄を生む」と述べ、これを解消するための策として、インフラのライト・サイジングを挙げた。

 「現在のIT環境には、必要なときに電源/空調設備を拡張できるデータセンターのライト・サイジングが効果的だ。そのためには、電源や冷却装置の標準化/モジュール化が必要になる」(佐志田氏)

 こうした考えに基づき、APCは、UPSや分電盤、ケーブル・マネジメント・アクセサリ、冷却装置といったコンポーネントを標準化している。そして、それらをラック・システムに統合することで、IT機器の負荷に応じた拡張を可能としたモジュール型インフラ・ソリューション「InfraStruXure」を提供している。

冷却効率を飛躍的に高める「ラック列単位の冷却」

 さらに、佐志田氏は、インフラの効率を改善するためには、ラック列単位の冷却も重要であると強調した。

 ブレード・サーバや1Uサーバを高密度でラックに搭載するようになった現在のデータセンターでは、部屋全体を冷却する従来方式だと冷却風が行き渡らず、ホット・スポットが多く発生してしまう。フリー・アクセス・フロアでは、ラック下の通風タイル(フロア・タイル)の大きさと風量により、IT機器に対する冷却能力が制限される。通常、1ラック当たり3〜7kW程度の発熱量にしか対応できず、1ラック当たり20kW以上の発熱量が当たり前となってきた現在のデータセンターには適さなくなってきた。

 この課題に対しAPCは、ラック列(Row)内に冷却システムを設置し、ラック列単位で冷却する「InRow」(インロウ)方式を提案している。InRow方式では、ラックとラックの間にモジュール化した冷却ユニットを挟み込んでおり、発熱源(IT機器)と冷却装置が近接している。これにより、IT機器からの排熱は、冷気と混ざる前に冷却装置へと戻され、冷却効率が最大化されるのだ。なお、詳細はホワイトペーパー「データセンタのラック単位冷却構成、列単位冷却構成の長所」を参照してほしい。

 「冷気を最短パスで循環させるので、冷却ファンの消費電力を部屋全体の冷却方式に対し半減することが可能だ」と佐志田氏。また、ラックの発熱量に応じて冷却能力を制御することもできる。加えて、部屋全体の冷却では把握が難しかったエア・フローとラックごとの許容発熱量を、InRow冷却では正確に予測できるようになるという。

 佐志田氏によれば、30%が標準値とされるDCEは、物理インフラを最適化することで70%にまで向上させることが可能になるという。APCが提案する、インフラのライト・サイジングとラック列単位の冷却方式という2つの手法は、目標を達成するうえでのキー・ポイントとして、自社のデータセンターに適用する価値がありそうだ。

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