企業システムに全体最適化が求められる理由
企業システムは今、SOA(サービス指向アーキテクチャ)による全体最適化が求められている。しかしながら、企業システムの全体最適化が効果的であることは明確でも、その実現は容易ではない。
そもそも、なぜ全体最適化なるものが必要なのか。それは、これまで多くの企業が「部門ごとに独立したシステムを導入してきた」ことに起因する。
一連の業務プロセスを複数のシステムによって自動化するには、それらの独立したシステムを連携させる必要がある。しかし、そうしたシステム間連携は、多くの場合、該当システム間の連携における効率化や最適化に重きを置くため、全体最適化の観点まで踏み込むことなく行われることが多い。もしくは、人為的な手作業によってシステム間の溝を埋めているケースも少なくない。
結果として、企業システムは以下のような問題点を抱えることになる。
- システム間連携の方式が一貫しておらず業務ロジックの中にビジネスプロセスが埋め込まれているため、ビジネスプロセス自体の可視化が不可能であり、業務の変化にシステムが柔軟に対応できない
- 個々のシステムごとに運用方法が異なるため、運用コストがかさむ
企業全体の視点で見れば、こうした情報システムはあまり効率的でないことがおわかりいただけるはずだ。では、これらの問題点を解決した理想的な企業システムとは、いかなるものなのだろうか。
ただし、いくら“理想”といえども、膨大な既存資産をすべて捨てて一から全体最適なシステムを再構築する、というのはあまりにリスクが高く、無謀だ。したがって、既存資産をうまく連携・統合させることが大前提となる。
日立が描く全体最適化のアプローチ像は、3階層からなる統合が行われたシステムの構築を通じ、SOA実践によって企業システムが全体最適化されることだ。それを表したのが図1である。ここでの統合とは、以下に示すように、「インタフェース統合」「プロセス統合」「情報統合」の3つを指している。
- インタフェース統合:ユーザーとの接点となるインタフェースをポータルに集約して提供。さらにユーザー操作のガイドやフロントでのデータ連動を行うことにより、快適なインタフェースを提供する
- プロセス統合:「プロセス統合基盤に個々のシステムをつなぐ」ことで、サービスの所在やインタフェースの違いを意識することなくサービスを利用。ワンストップサービスの実現や業務プロセスの可視化を可能にする
- 情報統合:システムごとに保持しているデータを統合し、品質の高いデータを横断的に分析/利用することを可能にする
既存システムに対しては可能なかぎり(できればまったく)手を加えることなくプロセスを統合し、さらには拡張が容易な柔軟性を確保する。複数のシステムが裏で動作していることをユーザーにはまったく意識させない。さらには、メインフレームや各種リレーショナル・データベース、ERPなどといった、社内に散在するさまざまなデータ・ソースを統一的に扱い、活用できる――。
これは、企業経営者にとって魅力的な企業システムだと言えるのではないだろうか。
段階的な最適化がSOA実践のハードルを下げる
しかし、理想とする全体最適化されたシステムへの移行は非常な困難を伴う。実際、2006年からSOAの実践を促進してきた日立は、「SOAの利点はわかるのだが、導入にかかるコストや導入後の変化の大きさを考えると二の足を踏む」との声を顧客から数多く聞いたという。
そこで日立が現在推進しているのが、個別の課題に対する部分最適から全体最適への流れでSOAの実践を進めるというアプローチだ。日立ではこれを「段階的システム最適化」と呼んでいる。
段階的システム最適化には以下のような特徴がある。
- 5つのパターンの組み合わせで、全体最適なシステム構築を推進できる
- システム課題に対する最適化の効果を確認しながら全体最適化を進める
- SOA実践を後押しする「SOAクイックスタートモデル」
日立が考えるSOAによる全体最適化の実践に段階的システム最適化は絶対に欠かせない概念だ。次節では、上に挙げた段階的システム最適化の特徴について、さらに詳しく見ていくことにしよう。

