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[米国]
IBM、“ワイヤ上に保存”する新しい原理のメモリを発表

MP3プレーヤー1台に50万曲の音楽を保存することも可能に

(2008年04月11日)

 米国IBMは4月10日、これまでのストレージ・デバイスとはまったく異なる原理を持つ新しいメモリ(技術)「racetrack」を正式に発表した。米国の科学雑誌Scienceの4月11日号に、racetrack関連の2つの論文が掲載される。

 同技術が実用化されれば、MP3プレーヤーなどに、一般的な製品が持つ記憶容量の100倍に相当する約50万曲の音楽あるいは約3,500本の映画を、従来より低コストかつ低消費電力で保存できるようになるという。その結果、「1個の電池で何週間も動作し、何十年も使用できる大容量パーソナル・ストレージが実現できる可能性がある」(IBM)とのことだ。

IBMが発表した新メモリ技術「racetrack」を用いたストレージ・デバイスの仕組み(資料:IBM)

 racetrackでは、保存データはワイヤ(磁性を持つ金属の細線)上に記録される。ワイヤはいくつもの微少区間(磁区)に細分化され、その1つ1つは、N極とS極を持つ棒磁石のように、ある一定方向に磁化される。これにより、「0」か「1」かのビット情報となる(例えばN極なら0といった具合)。

 このワイヤをシリコン・ウェハに垂直または水平に張り巡らしたものが、1つのストレージ・デバイスになるようだ。ただし、同じく磁性を利用するHDD(ハードディスク・ドライブ)とは異なり、磁化情報の書き込み/読み出しを行う部分は動かない(可動部分がない)ため、故障のリスクが減少する。また、半導体メモリのように、データの書き込みの度にデバイスが損傷することもなくなるため、無限に書き込みを行うことが可能になるという。

 単純に、より少ない面積でより多くの容量を保持することが可能になるため、従来のHDDを凌駕する大容量ストレージ・デバイスが実現することになる。

 racetrackで核となるのが、磁区を移動させる技術だ。前述したとおり、racetrackでデータの書き込み/読み出しを行う部分は動かない。そのため、ある磁区を磁化したら、その部分を移動をさせて別(隣)の磁区を磁化するという操作の繰り返しで書き込みが行われる(読み出しの場合は、磁区データの読み出しと移動の繰り返し)。この磁区の移動、および書き込み/読み出しには、電流(スピン偏極電流)パルスが用いられるという。

 今回、IBMフェローのスチュアート・パーキン(Stuart Parkin)博士をリーダーとするIBMアルマデン研究所のチームは、ワイヤとしてニッケル鉄合金を採用し、スピン偏極電流パルスを使って磁区の書き込みと移動に成功した。この、書き込みと移動のサイクルは20〜30ナノ秒(ナノは10億分の1)だったと、IBMは説明している。

 なお、読み出しを行う部分には、高性能素子(磁気トンネル接合素子:MTJ)が使われるほか、ランダム・アクセスを実現する新たな技術の採用で、より高速なアクセスが可能になるという。

 博士らは、「今後さらに研究を進めていけば、以前は想像もできなかった磁区ベースのメモリや論理デバイスが実現するかもしれない。(そうなれば)ストレージに関する考え方だけでなく、情報処理に対する考え方も一変するだろう」と語っている。

(Computerworld.jp)




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