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【Strategy】IBMのPC事業売却は良策か?
(2004年12月06日)
米国IBMが同社のPC事業の売却を検討しており、中国最大のPCメーカーである聯想(連想)集団有限公司(レノボ・グループ)と交渉中であるとニューヨーク・タイムズ紙が報じたが、そうした動きについて、アナリストの見方は分かれている。
売却が実施されれば、IBMは、1981年にパーソナル・コンピュータのリリースによって切り開いた、ホーム・コンピューティングの市場から撤退することになる。ハードウェアはIBMのビジネスの基盤だったが、ルイス(ルー)・ガースナー氏がCEO(最高経営責任者)に就任した1993年からは、陰りはじめた業績を盛り返すためにソフトウェア開発およびサービス提供への移行を進めた。その結果、1998年からは、IBMではソフトウェアおよびサービスによる収入がハードウェアによる収入を上回るようになっている。
IBMはすでに、コモディティ化が進むPC関連市場から一部退却している。2002年に同社は、米カリフォルニア州サンノゼに本社を置くサンミナSCIと約50億ドルの3年契約を結んで同社のデスクトップPC製品のほとんどの製造を委託したほか、ハードディスク事業を日立データ・システムズ(HDS)に売却した。証券アナリストたちはIBMは利幅の小さいPC事業から全面撤退すべきだと主張したが、ガースナー氏の後任となったサミュエル・J.・パルミサーノ氏を含む上層経営陣はそうした声には従わなかった。彼らは、「IBMの強みは包括的な品揃えにある」と主張し、PC市場で存在を維持したほうが、広範な専門知識を持つエンド・ツー・エンドのプロバイダーを求めている顧客の役に立つとしていた。
IBMがその戦略を転換してこの難しい市場から去るとすれば、今が良いタイミングかもしれない。米国ガートナーは11月29付けのレポートで、世界のPC市場の成長率鈍化と利益率縮小のために、上位ベンダーの10社のうち3社が2007年までに事業を売却または市場を撤退するとの予測を示したほか、IBMやヒューレット・パッカード(HP)のPC事業部門が切り離される可能性が高いと具体名を挙げた。「当社の予測では、世界PC市場は2005年以降少なくとも3年間不景気になる。その間は、出荷台数の伸びが従来のような2桁に達しなくなり、売上高の伸びはほぼ停滞する」とガートナーは述べている。
2004年4−6月期のIBMの世界PC出荷台数は、米国IDCによると約320万台。ガートナーとIDCのどちらの世界PC市場調査でも、IBMの出荷台数はデルとHPに次ぐ3位に甘んじている。また、上位ベンダーで過去数年間に利益をあげ続けているのは、1位のデルだけだ。
ジ・エンビジョニアリング・グループのアナリスト、リック・ドハーティ氏は、「IBMが好むのは特定のビジネスでの1位、悪くても2位。3位はあまり好まない」と語る。同氏によると、IBM CEOのパルサミーノ氏は投資家に対し、ビジネスユニットを継続的に監視して、「支配または革新できる市場だけで競争する」というIBMの戦略に合わないものを是正または除去していくと約束しており、そうしたIBMの全社的戦略にPC市場からの撤退は合致するはずだ。また、IBMは何年も前からレノボなどの中国ベンダーと製造上の提携を結んでおり、「最大のパートナーを譲渡先にしようとするのはさほど意外な動きではない」とドハーティ氏は指摘している。
英国プルーデンシャル・エクイティ・グループの証券アナリスト、スティーブ・フォーチューナ氏も、そうした転換が論理にかなっていると見ている。同氏は12月3日付けのリサーチ・ノートで、「PCビジネスは明らかに、(IBMの)長期的な中核戦略にとって重要ではない。時間とともに、IBMの戦略は、ますますサービスとソフトウェアへの重点を強めてきている。ハードウェアに留まっている範囲では、差別化して付加価値を提供することが可能な分野に注力の対象を絞ってきている」と述べている。
ただし、ドハーティ氏の予測では、IBMがPC事業から退くとすると、同社の幹部が以前主張したように、提供製品ラインナップが縮小されることに対する一部の顧客からの反対に直面することを覚悟しなければならない。法人顧客は、IBMの高品質な製品が自社のあらゆるITニーズを満たしてくれることを評価しているからだ。「性能に対する期待は高い。今、コンシューマー向けノートPCを推薦するとしたら、どの地域でも、IBM製品が一番だ。ThinkPadを落としても中のデータは失われない」と同氏。「法人顧客は確実な供給を望む。コンピュUSAのPC小売店に行かないとThinkPadを購入できないといった状況はIBMも避けたいはずだ」
米国メリルリンチの証券アナリスト、スティーブン・ミルノヴィッチ氏も、IBMがPC部門を売却した場合に考えられる、法人顧客の品質管理に対するリスクに言及している。「IBMは今後もIBMブランドのPCを販売したいと考えているかもしれない。つまり、レノボがIBMに、IBMというロゴが突いたPCを供給するようになる可能性がある」と同氏は12月2日のリポートで述べている。
IBMのPC事業を含むパーソナル・システムズ・グループは、数年間の不振と組織再編を経て、今年の第1〜第3四半期にはそれぞれ対前年比で売上高を大きく伸ばしている。10月の報告によると、2004年7−9月期のIBMの売上高は、モバイルPCの売上好調を背景に、前年同期比17%増の約33億ドルに達した。同様にモバイルPCの好調に後押しされて、2004年4−6月期と1−3月期の売上高もそれぞれ前年同期比16%増、同18%増となっている。
米国カレント・アナリシス(カリフォルニア州ラホーヤ)のアナリスト、サム・バウナニ氏は、最近業績も伸びているのに、IBMがPC部門を売却するのは馬鹿げた行為との見方を示している。IBMのThinkPadは、現在市販されているノートPCの中でも特に良くできている製品の1つと考えられており、顧客はセキュリティなどのハイエンド機能におけるIBMの先進性に満足しているというのだ。IBMはPC事業から完全撤退するよりも、むしろ、中国での製造提携や製品開発提携を拡大する可能性が高いのではないか、と同氏は見ている。
「私に言わせれば、(PC部門の売却は)まったく理にかなっていない。PC事業はIBMにとって大きな利益を生むプロフィット・センターではないが、同社の足を引っ張っているわけでもない。顧客はIBMブランドを求めている」とバウナニ氏は述べている。
(IDG News Service)

