【 ここから本文 】
- TOP
- > News : ハードウェア
- >
ハードウェア
ソーシャルブックマークに登録 :
印刷用ページの表示
IBMがPC事業を中国レノボに売却!
企業ユーザーの反響
製品、ユーザー・サポート、そして“IBMクオリティ”はどうなる?
(2005年02月18日)
IBMは2004年12月8日、同社のPC事業を中国最大のPCベンダーであるレノボに売却すると発表した。レノボはこの買収により一躍、出荷台数でデル、ヒューレット・パッカード(HP)に次ぐ世界3位のPCベンダーの座につくことになる。「IBM PC」と言えば、全世界で使われている今日のWindows PCの源流である。IBMがその伝統あるPC事業を売り払ったというニュースは、PC業界、個人ユーザー、そして企業ユーザーに大きな衝撃を与えた。本稿では、IBMのPC事業売却発表を受けての、米国の企業ユーザーやアナリストの反応を紹介するとともに、「ThinkPad」の聖地とも言うべき、同製品の開発拠点である日本IBM大和研究所が今後どうなるのかについても触れたい。
パトリック・ティボドー/キャロル・スリワ/トム・クラジット
Computerworld米国版
IBMのPC事業売却に伴い
レノボとIBM、新会社を設立
IBMは昨年12月8日、同社のPC事業を中国最大のPCベンダーであるレノボ(聯想集団有限公司)に対し売却すると発表した。IBMのPC事業の売却額は12億5,000万ドル(約1,288億円)であるが、同事業が抱える5億ドルの負債も引き継ぐため、レノボ側が支払う買収総額は17億5,000万ドルとなる。
レノボは、12億5,000万ドルの買収額のうち、6億5,000万ドルを現金で、残りの6億ドルを同社の株式によってIBMに支払う。これによりIBMは、レノボの株式の18.9%を取得することになる。なお、売却手続きは今年6月までに完了する予定だ。
| 写真1:発表会見で握手を交わすレノボ会長の柳伝志氏(中央)と、IBMのスティーブン・ウォード氏(右) |
IBMのPC事業売却の背景には、デルが仕掛け、同社の躍進の舞台となったPCの低価格戦争による影響を受けて、収益が悪化していたことが挙げられる。IBMは今回の売却を契機に、システム・コンサルティングのような成長性や収益性の高い法人向けのサービス事業に、より注力する方針だという。加えて、中国のPC市場で今後も成長が見込めるレノボとの関係を強化し、レノボを大口の顧客企業ととらえ、同社の合理化の支援を行うことで、サービス事業の収益を拡大するという狙いもある。
一方のレノボは、これまで商圏が中国国内とアジアの一部の国に限られていたが、今回の買収によって海外市場への本格参入の足がかりを得ることになる。レノボのCEO(最高経営責任者)である楊元慶氏は、北京での記者会見で「この買収を契機に、世界市場においてもトップを目指す」と語った。また、レノボは今回の買収に伴い、IBMと共同で新会社を設立すると表明している。この新会社のCEOには、IBMのシニア・バイスプレジデント兼パーソナル・システム・グループのゼネラル・マネジャー、スティーブン・ウォード氏が就任し、新しい本社はニューヨーク市外に置かれる(写真1)。
米国の市場調査会社ガートナーの調査結果によると、昨年7〜9月期のPCの出荷台数のシェアは、1位デル(16.8%)、2位HP(15.0%)、3位IBM(5.6%)の順であった(図1)。ちなみに、この時点では、レノボは8位に位置していたが、今回の買収によって同社は、PCの年間売上高が現在の4倍増となる約120億ドルに達し、デル、HPに次ぐ世界3位のPCベンダーとして躍進することになる。
| 図1:2004年第3四半期のPC市場ベンダー別出荷台数(暫定値) *資料:米国ガートナー (2004年10月)。デスクトップPC、ノートPC、x86サーバの会計で算出。富士通は富士通シーメンスも含めて、単一企業として計算している |
企業ユーザーが危惧する
今後の製品の品質とサポート・サービス
| 写真2:企業ユーザーからの評価が高いIBMのノートPC「ThinkPad」シリーズ |
IBMがPC事業を売却することについて、同社製PCを利用している企業ユーザーはどのように受け止めているのだろうか。Computerworld米国版が行った調査では、多数のユーザーが今回の売却によって、少なからず影響を受けるだろうと答えている。
回答者の多くは、今年第2四半期にレノボがPC事業を引き継いだあとのIBMブランドの行方や、製品のサポート・サービスが保たれるのかどうかといった懸念を抱いている。
米国に本拠を置く、ある非営利組織では、利用している600台のPCのほとんどがIBM製だという。しかし、同組織のCIO(情報統括役員)は、「今後、PCの入れ替えの際には、デルやHPといった選択肢を真剣に検討するようになるだろう」と述べた。
米国の市場調査会社NPDテックワールドのリサーチ担当ディレクター、スティーブン・べーカー氏は、「ThinkPad」(写真2)のブランド名をレノボに使わせることが、IBMにとって大きなリスクになると指摘する。「ThinkPadユーザーは価格よりも機能や製品設計を重視している。米国の大企業にPCを販売した経験のないレノボにとって、ThinkPadブランドの品質と顧客の評価を維持していくことは容易ではない」(べーカー氏)
もしもThinkPadが平凡な設計思想のノートPCに変わってしまったり、製品の品質が低下したりするようなことがあれば、企業ユーザーの間でのIBMブランドの評価に傷が付くことになる。このことはさらに、IBMのソフトウェアおよびサーバ事業にも悪影響を与える可能性がある、とベーカー氏は指摘する。
米国の保険会社であるブルー・クロス・アンド・ブルー・シールド・オブ・フロリダのシステム・プログラマー、アイク・ハンリー氏は、IBMの今回の動きには失望したと述べ、「また1つ、米国の象徴が切り売りされた」と嘆息する。
こうした企業ユーザーの懸念に対し、IBMのパーソナル・コンピューティング事業担当CMO(最高マーケティング責任者)であるディーパック・アドバニ氏は、「大手企業ユーザーの多くは、IBMによるPCのサポートを望んでおり、実際、PC事業の売却後も引き続き、IBMからサポートが提供されることになる。レノボは今後少なくとも5年間は、IBMの開発計画にのっとり、これまでと同等の品質基準に従ってIBMブランドのハードウェアを生産する」と答え、製品品質については何ら変わりがないことを強調する。
また、米国の市場調査会社IDCのアナリスト、ロジャー・ケイ氏は、「企業ユーザーがさまざまな懸念を抱く可能性はあるが、両社は事実を説明することで、顧客を安心させることができる」と見ている。
ささやかれる
サーバ事業売却の可能性
IBMがPC事業を売却したことで、同社の顧客の一部から、将来、サーバ事業も売却される可能性があるのではないかという憶測が飛び交っている。
この憶測に対して、米国モバイル・トラベル・ガイド(米国の石油会社エクソン・モバイル・グループの独立部門)のCIOであるポール・マーキュリオ氏は、「現在のIBMの長期的目標からするとPC事業は戦略的に重要なラインではない。トランザクション・サービスこそがIBMのコア・ビジネスだ」と指摘し、IBMはサーバ事業の売却を考えてはいないと見ている。
米国シカゴのIBMユーザー・グループ「シェア」代表者で、国立衛生研究所のCIOでもあるロバート・ローゼン氏もマーキュリオ氏と同様に、「これまでに知り得た情報からは、IBMのサーバ事業売却の可能性は見い出せない」と語る。
一方、米国の市場調査会社であるD.H.ブラウン・アソシエイツのアナリスト、トニー・イアムズ氏の意見はこうだ。
「PCの売り上げがサーバの売り上げに、そして、サーバの売り上げがPCの売り上げにつながる。こういった傾向があるため、もしかしたらIBMのサーバ事業にも何らかの影響があるのではないか」
なお、IBMのアドバニ氏は、サーバ事業をレノボと統合する予定はないが、IBMの営業担当者がIBMのサーバと一緒にレノボ製PCを販売するようになるだろうと述べている。

