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[世界]
需要減少のベクトル型コンピュータ――スパコン市場ではクラスタが優勢
「世界最速」奪回に向け、NECは新型ベクトル・スパコンを投入
(2007年10月29日)
かつての栄光を取り戻すべく、NECは先週、新型のベクトル・スーパーコンピュータ「SX-9」を発表した(関連記事)。しかし業界アナリストは、たとえ設計や性能が優れていたとしても、ベクトル型スパコンだけでIBMやクレイに対抗していくのは難しいと指摘している。
| 新CPUを搭載し、大幅な性能アップを図った「SX-9」 |
米国の調査会社プンドITのチャールズ・キング氏は、ベクトル型スパコンの将来性や市場性に疑問を呈する業界アナリストの1人だ。同氏はNECに対し、クラスタ製品にもっと力を入れるべきだとアドバイスする。
「NECはIBM追撃計画を打ち出しているが、クラスタ製品にも注力する必要があると思う。数年前からスパコンが復活の兆しを見せているが、その原動力となっているのはクラスタ・システムにほかならない。クラスタ・システムの登場により、10年前ならとても手が届かなかったと思われるような企業でもスパコンを導入できるようになった。スパコン市場はベクトルからクラスタへと移行したのだ」(キング氏)
NECによると、今回発表されたSX-9のピーク演算性能は839TFLOPS(1TFLOPS=1秒間に1兆回の浮動小数点演算)に達するという。同社主任エンジニアのデニス・ラム氏は、ベンチマーク・テストをまだ行っていないものの、SX-9は世界最速のコンピュータになるのではないかと語っている。
これに対しキング氏は、世界最速のベクトル・システムというNECの発表には多少の誇張が含まれていると指摘する。「おそらく同社が言っていることにうそはないのだろうが、フル構成のSX-9システムで839TFLOPSという性能は、PFLOPS(1PFOLPS=1秒間に1,000兆回の浮動小数点演算)レベルの性能を持続的に発揮できるIBMのBlueGeneよりもかなり遅い」(キング氏)
NECによると、102.4GFLOPS(1GFLOPS=1秒間に10億回の浮動小数点演算)のピーク・ベクトル演算性能を有する世界初のCPUをSX-9は搭載しており、PFLOPSレンジに近づきつつあることを強調する。ちなみに、現時点で世界最速のスーパーコンピュータは、ローレンス・リバモア国立研究所に設置されているIBMの「BlueGene/L」システムである。
調査会社IDCのアナリスト、スティーブ・コンウェイ氏は、SX-9が非常に興味深いマシンであり、設計も優れているとしながらも、ベクトル型システムの需要が減少傾向にあることを認めている。
「ベクトル型スパコンでは対処できないようなタイプの問題が増えている。気象予測や自動車設計などでは(ベクトル型は)今でも非常に有効だが、一般的な汎用スパコンよりも用途が限られており、ベクトル型アプリケーションは減り続けているというのが実情だ。10年ほど前はベクトル・マシンがスーパーコンピュータの世界を支配していたのだが、その時代は終わりを迎えている」(コンウェイ氏)
10年前は、気象予測や自動車設計などの業務に対応する数多くのベクトル・スーパーコンピュータ用アプリケーションが開発されていた。しかし、標準的なマイクロプロセッサをベースにするクラスタ・システムの普及に伴い、ベクトル・ベースのソフトは大幅に減っていると、コンウェイ氏は説明する。
スパコンの性能ランキングで知られる「TOP500 Supercomputer Sites」が初めて順位を公表した1993年当時は、66.8%のシステムがベクトル・ベースだった。しかし、2000年には12%、2005年には3.6%に減り、最新のランキングでは全体の1.2%にまで落ち込んでいる。
現在TOP500に入っているNECのシステムは20位の「SX-6(地球シミュレータ)」だけだ。このシステムは、IBMのBlueGene/Lに抜かれる数年前までランキングのトップに君臨していた。
NECのラム氏は、業界全体がクラスタ・システムに移行しつつあることを認めながらも、ベクトル・システムが今なお多くの分野で「有効性の高いプラットフォーム」であり続けていると強調する。
NECのSXシリーズは日本と欧州で多く使われている。だが、そうした既存ユーザーの中でもSX-9を歓迎するのは一部にとどまると、IDCのコンウェイ氏は見ている。
「ベクトル・マシン用に最適化されたアプリケーションの導入ユーザーは新世代のSXシリーズを歓迎するに違いない。NECがこの技術を新たな世代へとしっかり継承させていることは事実であり、同社の設計はいかなる基準から見ても非常に優れている。新モデルの登場は、一部のユーザーにとって非常に意義のあることだが、ベクトル・マシンの市場がスパコン市場全体の中で占める割合は、おそらく1ケタ台にとどまるのではないか」(コンウェイ氏)
(シャロン・ゴーダン/Computerworld オンライン米国版)
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