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【解説】
ナノテク研究の前線からCPU/HDD/メモリの明日を読む[メモリ編]
ホログラフィ技術で次世代DVDを凌駕するメモリ――SLM、2光束干渉法、コリニア・ホログラフィ法……
(2008年02月27日)
CDやDVDとの整合性があるコリニア・ホログラフィ法
| 図3:コリニア・ホログラフィ法による情報の記録/再生 |
ホログラム記録には、図2で紹介した2光束干渉法がよく用いられるが、この方式は日本が得意とする光ディスク技術との整合性が必ずしもよくない。この難点を克服できるホログラム記録方式として、SLMをキー・デバイスとするコリニア・ホログラフィ法(注6)がある。
図3に示すように、この方式は記録メディア(反射層を持つホログラム光ディスク)に対して、見かけ上、1光束でのホログラムの記録/再生を可能にするもので、従来の光ディスクで用いられているフォーカス・サーボ技術がそのまま活用できる特徴を持つ。
図4(a)、(b)にコリニア・ホログラフィ法による記録/再生時のSLMパターンの一例を示す。記録時には、中心部と外周部に分離したページ・データを用い、中心部を記録データ、外周部を参照光形成に用いる。それぞれの部分から出る光をレンズで記録メディアに集光し、両者の位相干渉パターンを記録する。再生時はSLMに外周部のみ表示させ、ホログラム光ディスクから記録データ(中心部)を取り出す。
| 図4:コリニア・ホログラフィ法による情報記録(a、画像左)・再生(b、同右)時のSLMパターンの例 |
図5はコリニア・ホログラフィ法を用いるコリニア・ホログラム・メモリの基本構成である。ホログラムの記録/再生には緑色レーザを用い、ホログラム光ディスクのサーボ制御には赤色レーザを用いる。図5に示されているように、光ディスクの上部に位置する1つのレンズのみでホログラムの記録・再生ができる構成となっている。これが、CDやDVDなどの従来の光ディスクと上位互換性が取れる理由である。
| 図5:コリニア・ホログラム・メモリの基本構成 |
ホログラムは、記録された干渉パターンの方向や位置をわずかにずらすだけで、ほぼ同じ場所に何千もの画像イメージを重ねて書くことができる。これが、記録密度が飛躍的に高い理由の1つである。
| 写真1:コリニア・ホログラフィ法におけるシフト多重(記録材料は共栄社化学製のフォトポリマ) |
コリニア・ホログラフィ法では、写真1に示すように、シフト多重と呼ばれる手法でホログラムの多重が行われる。この写真は、0μmと示した位置にホログラムを1つ記録して、光スポット位置を100nmずつずらしながら再生した画像データである。もともとホログラムが書かれた0μm位置での再生像にはエラーが認められない。空間的にわずかに読み取り位置をシフトさせていくと再生像の信号部分(中心部分)が消え、3μmほどのシフトで信号再生像はまったく認められない。このことは、3μmシフトさせながらホログラムを何枚も多重できることを意味している。この例では光スポットの直径は、おおむね200μm程度であるが、この状態で光ディスクには3TBに達するデータの記録が可能になると考えられている。
国際標準規格として採択されたHVD方式のホログラム・メモリ
| 写真2:HVDシステムの内部写真(オプトウエア製) |
前節で紹介したコリニア・ホログラフィ法による光ディスク・メモリは、HVD(Holographic Versatile Disc)方式としてプロトタイプの構築が進んでいる。写真2は実際に構築されているHVDホログラム光ディスク装置の内部写真である。すでに密度換算でディスク1枚当たり200GB、160Mbpsの性能を持つ回転系システムでの動画記録・再生デモンストレーションも行われている。
技術的な性能向上を図ることで、将来的にはディスク1枚当たり1TB、1Gbpsの性能を有する装置の実現も可能と考えられている。
| 図6:HVDの構造 |
HVD方式のホログラム・メモリは、記録/再生とサーボ制御に2色のレーザ光源を使うことから、光ディスクの構造が工夫されている。図6はHVDの断面構造を描いたものである。基板上部にサーボ用のプリフォーマットされたピットが形成されており、この情報を赤色レーザーで読み取ることでディスクを制御する。ホログラムが記録されるのは、その上部に位置するフォトポリマ層(400μm程度の厚さ)で、緑色(あるいは青色)レーザーを用いて記録/再生を行う。特徴的なのは、記録層とピット部との間に設けられた波長選択膜(ダイクロイック・ミラー層)で、この膜によって記録/再生用のレーザ光がピット部に達しない工夫がなされている。これは、記録/再生光がピット部に達すると、散乱ノイズによってエラーが増加することによる。
このHVD方式は、国際的な標準化組織「Ecma International」で、ホログラム・メモリとしては初の国際標準規格として採択されている。日本発の技術が国際標準規格として採択されたことの意義は深く、今後の展開が非常に楽しみである。
HVD方式の実用化に向けて周辺技術や材料の革新も進む
| 写真3:磁気光学効果を用いた高速SLM(FDK製) |
コリニア・ホログラフィ法では、記録/再生のいずれにあってもSLMを利用する。レーザー光源や受光器への組込みを考えると固体デバイスが好ましく、またピクセル数の制限下で高速のデータ転送レートを実現するには動作速度の速いものが望まれる。この観点から、写真3に示す磁気光学効果を用いたSLMの開発が進んでおり、すでに1ピクセル当たり10ns(ナノ秒)レベルの高速光変調デバイスが完成している。このSLMも国産技術として開発されたもので、HVDとの組合せが期待されている。
ホログラム・メモリの実用化には、記録/再生用の材料がきわめて重要となる。多くのホログラムを多重化するには多重性にすぐれ、かつ記録感度の高い材料が望まれる。また、ノイズの少ないことも重要である。現時点では、これらの要求を満たす記録材料としてフォトポリマ材料が期待されている。フォトポリマ材料はWORM(Wright Once Read Many)メディアであるため、アーカイブ記録用やROMメディアとしての応用が考えられている。
今後5年以内には登場する大容量のホログラム・メモリ
ホログラム・メモリの開発が、最近にわかに再燃しているのは、光学機器が発展していることに加え、上述したように、記録材料としてすぐれたフォトポリマが開発されてきたことも主因の1つである。
記録/再生の面から考えると、従来の光ディスク技術が利用できるコリニア・ホログラフィ法は魅力あるものと言える。実際、その光学系は従来の2光束干渉法に比べると非常にシンプルであり、実用化の観点からは都合がよい。現行の光ディスク・メモリに次ぐものとしていくつかの方式が検討されているが、最近のホログラム・メモリの展開は一歩先んじた感がある。
2007年10月に、マレーシアのペナン島で、ホログラム・メモリの実用化を目指して「ホログラム・メモリ国際ワークショップ」が開催された。国内外の企業・大学から約100名の参加者があり、実用化に向け白熱した議論がなされた。その内容からは、少なくとも今後5年以内には、第4世代の大容量光ディスクとしてのホログラム・メモリが登場するものと思われる。実際、コリニア・ホログラム・メモリ自体は基礎開発から実用化開発にフェーズが移っており、いかに工業化していくかを考える時期にさしかかっている。
一方で、その次の世代のホログラム・メモリとして、コリニア・ホログラフィ法をさらに発展させた超光情報メモリの基礎開発が進んでいる。このメモリは、コリニア・ホログラフィ法を基本としながら、光フェーズロック方式と呼ばれる、光位相を巧みに使った技術(多値ホログラム体積記録技術)を実現しようとするものである。光位相を利用するためにノイズに弱いが、その難点を克服する光学系や、超高速で光位相をページ・データとして変調できるSLM、さらには超高密度記録に耐えうるナノ構造を有するフォトポリマ材料やリライタブル記録材料などの開発が進展している。
ホログラム・メモリの開発は実用化と基礎研究が非常に早いスピードで展開されてきており、今後とも目が離せない重要なメモリ技術と言える。
注6:本稿で紹介したコリニア・ホログラフィ法による光ディスク・メモリの開発の一部は、科学技術振興機構CRESTプロジェクト、文部科学省超光メモリプロジェクトとして、オプトウエア、FDK、共栄社化学、メモリーテック、船井電機との産官学共同研究事業として実施しているものである
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