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携帯電話向けプラットフォーム「BREW」の実力

実行/開発環境、配信/課金システムを提供するBREWの特徴、そしてJ2MEとの違いを知る

(2005年03月25日)

任意のアプリケーションをダウンロードして実行可能な携帯電話が人気を博している。国内の携帯電話向けアプリケーションは、サン・マイクロシステムズのJava 2 Micro Edition(J2ME)とクアルコムのBREWのどちらかのアプリケーション実行環境で動くようになっている。J2MEとBREWは、競合する技術として比較されることが多いが、BREWは開発環境と実行環境だけではなく、アプリケーションの認定、配信、課金までも踏まえた、携帯電話用アプリケーション・プラットフォームという点でJ2MEとは異なる。本稿では、このBREWの全体像を明らかにする。

草場匡宏
クアルコムジャパン

BREWが提供するさまざまなメリット

 BREWとはBinary Runtime Environment for Wirelessを略したもので、2001年1月にクアルコムによって発表された携帯電話用のアプリケーション・プラットフォームである(図1)。同プラットフォームは、携帯電話上のアプリケーション実行環境、PC上でのアプリケーション開発環境、携帯電話事業者に提供されるアプリケーションの配信・課金システムという3つのコンポ―ネントで構成されている。

 国内の携帯電話向けのアプリケーションは、NTTドコモの「iアプリ」やボーダフォンの「Vアプリ」など、サン・マイクロシステムズのJava 2 Micro Edition(J2ME)を用いて作成されたJ2MEアプリケーションが主流であった。J2MEは、携帯電話の機種ごとの違いを吸収し、互換性を高めることから多くのコンテンツ・プロバイダーに歓迎された。ただし、J2MEアプリケーションの実行にはランタイム・モジュールであるJVM(Java仮想マシン)が必須になるため、J2MEアプリケーションの起動に時間がかかったり、動作が遅かったり、ハードウェアの機能をすべて利用することができなかったりといった欠点を持つ。

 このような課題を抱えるJ2MEに対して、別のアプローチを行ったのがBREWである。BREWのアプリケーションは、J2MEのJVMのような仮想マシンを必要としないので、ハードウェアの性能を効率よく引き出すことができる。

 BREWアプリケーションに対応した携帯電話は、国内では2003年2月からKDDIが市場に投入している。現在でも、国内の携帯電話事業者でBREWアプリケーションをサポートした携帯電話を投入しているのはKDDIだけであり、しかも同社は主力製品をJavaアプリケーション対応携帯電話からBREWアプリケーション対応携帯電話へと移行させている。

 なぜ、KDDIはJava対応携帯電話からBREW対応携帯電話への移行を進めているのだろうか。それは、BREWを導入することで、携帯電話機メーカー、コンテンツ・プロバイダー、携帯電話事業者の3者が以下のようなメリットを享受できるからだ。

図1:BREWのコンセプトと3つのコンポーネント

携帯電話機メーカーのメリット
 BREWアプリケーションは、非力なCPUや少ないメモリの環境でも実行できるため、ローエンド携帯電話にも実装可能で、ハイエンド携帯電話に求められるマルチメディア機能もサポートする。また、BREWに対応した携帯電話は、メーカーや端末に依存することなく共通のアプリケーションを利用できるので、従来のように携帯電話端末ごとに独自の組み込みアプリケーションを開発する必要がなくなる。

コンテンツ・プロバイダーのメリット
 携帯電話の実機がなくても、PC上でCやC++といった標準的な開発言語でアプリケーションの開発を行える。さらに、BREW上で動作するJVMが用意されているので、既存のJ2MEアプリケーションを利用することもできる(ただし、処理速度はネーティブなJ2EM環境より遅い)。

携帯電話事業者のメリット
 BREWは、セキュアなアプリケーションの配信、課金システムを用意している。携帯電話事業者は、ユーザーに提供するアプリケーションの管理を容易に行うことができる。

BREWの実行環境を提供するチップセット「MSMシリーズ」

図2:「MSMシリーズ」のロードマップ

 BREWのアプリケーション実行環境は、クアルコムが提供する携帯電話用チップセットである「MSMシリーズ」に組み込まれている。携帯電話用のチップセットとは、通信制御を行うプロセッサと音声の伸長圧縮処理を行うDSP(Digital Signal Processor:変調や復調などの信号処理を行うプロセッサ)を1チップにパッケージしたものである。MSMシリーズは、プロセッサにARMのARM7/9を採用し、独自のDSPに加えASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向けIC)上にマルチメディア機能などをコントロールするAPIを実装している。

 MSMシリーズには、図2に示したようにさまざまなバリエーションが存在する。CDMA2000 1x(*1)、W-CDMA(*2)のGSM(*3)/GPRS(*4)といった第3世代携帯電話の通信方式に対応しているほか、第3.5世代携帯電話であるCDMA2000 1xEV-DO(*5)に対応し、今後は、HSDPA(*6)といった次世代の通信方式をサポートする製品も予定されている。さらに、機能を必要最低限に絞ったローエンド携帯電話用の低コスト製品から、高度なマルチメディア機能を備えたハイエンド携帯電話用の製品まで、複数のチップセット・レンジがラインアップされている。これらのチップセットを用いた携帯電話は、すべて、BREWの恩恵を受けることが可能になる。

 図3は、MSMシリーズのソフトウェア構成を示したものである。同チップセットのASICには、クアルコムが開発したリアルタイムOSであるREX(Real-Time Executive)とモデム処理、マルチメディア処理、GPSやBluetooth、USBなどのインタフェースの処理を行うAPIが実装されている。BREWアプリケーションは、これらのAPIを自由に呼び出すことができる。

 次に、BREWが備える「実行環境」「開発環境」「アプリケーションの配信・課金システム」という3つのコンポーネントについて、詳しく紹介しよう。

図3:「MSMシリーズ」のソフトウェア構成


*1:CDMA2000 1x……KDDIが採用している第3世代携帯電話の通信技術仕様の1つ。下りの最大転送速度は144kbpsである
*2:W-CDMA……NTTドコモが採用している第3世代携帯電話の通信技術仕様の1つ。下りの最大転送速度は384kbpsである
*3:GSM(Global System for Mobile Communications)……欧州やアジアを中心に利用されている第2世代携帯電話の通信技術仕様の1つ。最大転送速度は9.6kbpsである
*4:GPRS(General Packet Radio Service)……GSM方式の携帯電話網を使った第2.5世代携帯電話と呼ばれる通信技術の1つ。通信速度は最大115kbpsである
*5:CDMA2000 1xEV-DO……KDDIが採用している第3世代携帯電話のデータ通信専用の技術仕様の1つ。下りの最大転送速度は2.4Mbps(平均800kbps)である
*6:HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)……W-CDMAのデータ通信に特化し高速化した規格。理論上は約14Mbpsまで対応するという


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