【 ここから本文 】

モバイル&ワイヤレス


ソーシャルブックマークに登録 : Yahoo!ブックマークに登録 はてなブックマークに登録 del.icio.usに登録 newsing it!に登録 Buzzurlにブックマーク livedoorクリップに登録 Slashdotにタレコむ イザ!ブックマークに登録 Twitterでつぶやく
print 印刷用ページの表示


「iPhone」を衝撃発表!――コンピュータ・ベンダーの名を捨てたアップルの行く手

ついにベールを脱いだ、OS X搭載のスマートフォン。巨大市場での勝算はいかに

(2007年03月14日)

OSにMac OS Xを採用した
スマートフォン

 iPhoneの本体は非常にシンプルな、角面を丸めたメタリック・シルバーの板状の製品である。大きさは高さ115ミリ×幅61ミリ×厚さ1.6ミリで、重さは135グラム。iPodとほとんど変わらないサイズで、iPodと同様、持ち歩かない間は専用のドックに立てかけて充電とPCとの同期を行える。その際は、連絡先、予定表に加え、音楽、ポッドキャストなどの音声/動画再生に関する情報、そして、Webブラウザのブックマークやメール・アカウントの情報なども同期される。

 本体正面は、メタル・フレームに覆われるようにして、縦480ドット×横320ドットの3.5インチ液晶ディスプレイと、「Home」と呼ばれるただ1つのボタンが顔をのぞかせている。Homeボタンは、iPhoneがどんな状態にあっても即座にトップ・メニューに戻してくれるボタンだ。ディスプレイがそのまま操作パネルとなっていることもあり、誤操作への細かい配慮が行き届いている。上述した接近センサーだけでなく、スリープを解除しただけではロック状態になっており、操作を開始するには「slide to unlock」と書かれた画面上のスライダを指でなぞってロックを解除する必要がある。

 さて、iPhoneで、UIと同じくらいに画期的なのがスマートフォン用のOSである。これに同社の主力製品であるMacと同じ、Mac OS Xが採用されているのだ(iPhoneの場合、Macではないので、単に「OS X」と表記している)。

 ジョブズ氏によれば、iPhoneのリッチなアプリケーション動作環境を実現するために、マルチタスクや省電力動作、すぐれたセキュリティ機能、グラフィックス/オーディオ処理機能、開発フレームワークを備えたOSを探したところ、OS Xが最適という結論に達したという。同氏は講演で、「OS X搭載により、iPhoneではデスクトップPCクラスの高度なアプリケーションが利用できる。この市場でアップルは他社よりも5年先を行くことになる」と胸を張った。

 ただし、同社iPod担当バイスプレジデントのグレッグ・ジョズウィアック氏によれば、当面、iPhone向けソフトウェアの提供を行うのはアップルだけで、セキュリティ上の配慮から、サードパーティ製アプリケーションを受け入れる予定は今のところないとのことだ。

 Windows MobileやSymbian OS、Palm OSといった主要なモバイル向けOSを搭載するスマートフォンはどれも、豊富なサードパーティ製アプリケーションが用意されており、それらをユーザーが自由にインストールできることも魅力の1つだ(ただし、日本国内ではキャリア側でこれをできなくしている場合が多いが)。強力な開発フレームワークを用意しておきながら、他社によるアプリケーションの開発・提供を許容していないというのは矛盾しているという声も多い。

 その一方で、サードパーティから直接のアプリケーションの提供は認めないが、アップル側で認定したサードパーティ製アプリケーションの配布は行われるのではと予想する向きもある。これは、クアルコムの携帯電話向けOSのBREWを採用するキャリアが、セキュリティ上の理由からとっている方式と同じである。

iPhoneの3つの機能群

 先に紹介したジョブズ氏の言葉にあるように、iPhoneは、「携帯電話」「インターネット・コミュニケータ」「iPod」という3つの機能群を1台のコンパクトなデバイスに搭載した製品である。ここでは、機能群ごとに見ていくことにしよう。

(1)携帯電話──既存のスマートフォンと一線を画したUIが特徴

 まず、電話機能では、先に説明した直感的なタッチ操作で相手先の番号を選び、ダイヤルできるUIが最大の特徴となる。また、割り込み通話から三者通話へのスムーズな切り替えや、まるでメールのように発信元一覧を確認でき、任意の順番で再生可能なボイス・メール(留守番電話)機能などが備わっている。なお、通信方式は、欧米や日本、韓国を除くアジアで広く使われている4バンドGSM(Global System for Mobile Communications)/EDGE(Enhanced Data GSM Environment)方式で、Wi-FiとBluetooth 2.0による無線通信にも対応している。

(2)インターネット・コミュニケータ──OS Xベースで動作する高機能アプリケーション

画面3:Mac OS X標準のWebブラウザ「Safari」を搭載。縦横のどちらでも表示でき、ジェスチャーで画面を拡大することも可能

 コミュニケータとしてのiPhoneは現在のところ、HTMLメールに対応した高機能なメール・クライアントとMac OS X標準のWebブラウザ「Safari」、専用に開発されたグーグルの地図情報サービス「Google Maps」表示アプリケーション、そしてMac OS Xの「Dashboard」機能とそっくりのウィジェット機能が備わっている。これらの通信系アプリケーションは、無線LANが使える場所ではWi-Fiによる通信、使えない場所ではEDGEを使った通信にと、自動的に切り替わるようになっている。また、同製品には200万画素のデジタルカメラも内蔵される予定だ。

 最も頻繁に使うであろうメール・クライアントは、IMAPとPOP3の両プロトコルに対応している。アップルはIMAP方式を推奨しており、世界で2億5,000万人が利用しているヤフーのWebメール・サービス「Yahoo! Mail」と提携することで、Yahoo! Mailにメールが届くと自動的にiPhoneに通知が届くプッシュ型のIMAPを実現している。

 Safariブラウザは、最近ではノキア製携帯電話端末にも採用されているが、iPhoneに搭載されるSafariはアップルの独自開発によるものだ。Webページを画面全体に表示したり、部分的に拡大したり、スクロールしたりといった操作を、上述したタッチパネルでスムースに行える(画面3)。また、同時に複数のWebページを確認する「New Page」という機能もあり、これを使えば複数のWebページ間を自在に行き来することができる。

 iPhone用に最適化されたGoogle Mapsアプリケーションは、ある地域の店舗名検索を行った後、目的とする店舗の電話番号にそのままダイヤルするといったことが可能である(画面4)。


画面4:Google Mapsアプリケーションで地域名と店舗名を検索し、目的とする店舗にそのままダイヤルできる

(3)iPod機能──既存製品より機能・操作性が向上

写真6:iTunes 7と同じ「Cover Flow」機能が備わっており、直感的に聴きたいアルバムを探し出せる

 iPod機能では、既存のiPodと同様に楽曲や動画、ポッドキャストなどを楽しむことができる。iPodと大きく異なるのは、縦横どちらの表示にも対応した大きな液晶ディスプレイを生かした動画再生と、タッチ・スクリーンによる操作、そしてiTunes 7でも採用されている「Cover Flow」と呼ばれる美しいコンテンツ・ジャケット表示機能の搭載だ(写真6)。

 このように、さまざまな革新的アイデアが込められたiPhoneだが、アップルは同製品で使われている技術について200以上の特許を取得しているという。

 さて、iPhoneの価格と出荷開始時期だが、価格は内蔵フラッシュ・メモリの容量が4GBのモデルが499ドルで、8GBのモデルが599ドルと発表されている。出荷開始時期は、米国は今年6月の予定で、欧州では今年末、アジアは2008年以降の出荷となる。

 残念なことにこの「アジア」には日本は含まれない。iPhoneのGSM/EDGEという通信・通話方式は、そのままでは日本市場で使えないからだ。ただし、ジョズウィアック氏は「日本は重要な市場である」と日本での投入に関心を示しており、通信・通話方式の仕様拡充も含めてiPhoneの日本版を提供する準備があることをにおわせている。ちなみに、ジョブズ氏の基調講演には、ソフトバンク会長の孫正義氏も足を運んでおり、同氏はかなり心を動かされていた様子だった。

アップルがトップ企業との提携にこだわる理由

 アップルは、iPhoneの米国展開のパートナーとして、最終的にシンギュラー・ワイヤレスを選んだ。

 シンギュラーは2004年にAT&Tワイヤレスを買収したことで、それまでシェア2位だったベライゾン・ワイヤレスを抜き米国携帯電話最大手となったキャリアだ。

 Windowsが標準の座についたPC市場でマイノリティー・プラットフォームの苦悩を味わったアップルは、iPod以降の製品展開では、常により多くのユーザーにリーチできるように業界のトップ企業と手を組むことを心がけている。

写真7:2006年5月、超一等地であるマンハッタンの5番街にオープンしたApple Storeニューヨーク店

 デジタル楽曲販売サービス「iTunes Music Store」(現サービス名:「iTunes Store」)のスタート時には、米国5大レーベルの楽曲をそろえることに固執した。また、直営店の「Apple Store」は地価に関係なく、その都市で最も人通りの多い目抜き通りに出展することにこだわってきた(写真7)。今回、携帯電話にシンギュラー、推奨メール・サービスにヤフー、そして地図情報サービスにグーグルを選んだのは同様の理由からだと思われる。

 こうした業界のトップ企業と組む戦略で、アップルは同社の顧客層をより拡大することを狙っている。基調講演ではジョブズ氏はさまざまな電子機器の市場規模を比較し、携帯型音楽プレーヤー市場はワールドワイドで年間1億3,500万台規模、PC市場は年間2億900万台規模だが、携帯電話端末市場は年間9億5,700万台規模だと紹介。そのうえで、アップルは携帯電話市場参入1年目で1%のシェアを獲得することが目標だと語った。1%といっても、それだけでも1,000万台の出荷という規模になる。

 つまり、アップルはこれまでにないほど大きな市場の獲得に向けて動き出したことになり、iPhoneをMac、iPodに続く、アップルの第3の事業の柱として位置づけているようだ。

 このiPhoneを単なる革新的なコンシューマー製品というコンテクストでとらえる向きも多いが、過去、アップルはMacによってDTPやノンリニア・ビデオ編集といった新しい業界・市場を創出し、iPodの大ヒットで、音楽業界そのもののビジネスを大きく変えてきた。

 ジョブズ氏が講演中、「Reinvent the Phone」の言葉を繰り返していたように、アップルはiPhoneを通して携帯電話業界そのものを大きく再編しようとしていることは間違いない。この大きな門出にあたって社名からコンピュータを取り除いたことが、何よりその心意気の強さを表している。

iPhoneの登場が各所に与える影響

 iPhoneが世界の携帯電話市場に一石を投じる存在になることは間違いないが、このことはIT業界のビジネスにどのような影響を与えるのだろうか。予想されるものをいくつか挙げてみることにする。

 まず1つ、すぐに影響が現れる重要なポイントは、Webブラウザの勢力図の変化だ。これまでWebブラウザと言えば、やはり「Internet Explorer」が勢力を誇り、「Firefox」や「Opera」なども多くのユーザーを獲得してきたが、iPhoneが大ヒットすれば、Safariの存在も無視できなくなってくるはずだ。Safariに対応していないWebページは今後、見直しが迫られることになるだろう。もちろん、従来のWAPやiモード携帯電話がなくなるわけではないので、それらへの対応が不要になることはないのだが、世界市場を意識したWebページでは、Safariでも表示確認が行われることが必須になるかもしれない。

 また、iPhoneは、Google Mapsの宣伝媒体としての価値を引き上げるうえでも大きく貢献しそうだ。簡単に地域情報を見つけ出せるGoogle Mapsが、アクションを起こすためのツールである携帯電話と結び付いたことで、より検索とアクションの結び付きが強くなることは想像に難くない。

 Mac OS Xの開発プラットフォームとしての魅力にも大きな変化が起こるだろう。アップルは現在のところ、iPhone用のサードパーティ製アプリケーションを許容しないとしているが、容認するのは時間の問題と見てよいかもしれない。その結果、Mac OS XのCocoaフレームワークで開発されたソフトウェアは、Mac OS XとiPhoneのどちらへも簡単に移植できるようになると予想される。実際、ジョズウィアック氏は、「MacからiPhoneへのソフトの移植はほとんど手間がかからない」と認めている。それに、そもそもCocoaフレームワークはこれまでも、PowerPCやインテル・プラットフォームなど異なる環境に柔軟に適応できることが売りであり強みであった。

 一方、現行のiPod(ビデオiPod)の人気には、マイナスの影響が表れそうだ。低価格を売りにした「iPod shuffle」や「iPod nano」の売上げにはさして影響がないだろうが、価格的にもiPhoneに近いビデオiPodは、大容量のハードディスクを内蔵しているとはいえ、iPhoneの携帯電話を見たあとでは、古くささが強調されてしまう。この古くさく見えるというのは他社製のスマートフォンについても同じで、iPhone発表の直後、アップルの株価が急上昇するなか、ライバルとなるRIMやパームの株価は急激に落ち込んだ。

 さて、iPhoneの魅力の大きさは日本ではなかなか伝わりにくいものなのかもしれない。映画やテレビ・ドラマなど、iTunes Storeのビデオ・コンテンツがかなり充実している米国に比べ、日本市場のビデオ・コンテンツは大きく遅れをとっており、その点でもiPhoneの魅力は差し引かれてしまう。

 そもそもの話、iPhoneは現在のところ日本市場の通信方式に対応していない。ただし、これについては上述したようにアップル自身が日本市場に関心を示していることに加え、シンギュラーの次世代インフラ整備が進んでいることも追い風になっている。

 初代iPhoneがGSM/EDGEのみの対応なのは、おそらくアップルがシンギュラーという大手キャリアの強力なしでは成功できないことを理解し、同社に対して最大限の便宜を図った結果だと思われる。シンギュラーの3G(第3世代)携帯電話のインフラがまだ一部都市でしか実現していない。しかし、同社は現在、高速通信が可能なHSDPA通信網を急速に拡充中で、これがある程度整備されていけば、今後のiPhoneへの搭載の可能性も強くなる。HSDPA通信網は、すでに日本でもNTTドコモやソフトバンク・モバイルが採用を始めている。

COLUMN
シスコとアップル、それぞれの言い分──iPhone商標権問題は話し合いから法廷闘争へ

ロバート・マリンズ/IDG News Service サンフランシスコ支局

 米国シスコシステムズは今年1月11日、「iPhone」の商標権が侵害されたとして、米国アップルを提訴した。シスコによると、アップルはかねてからiPhoneの商標取得を希望していたが、両社が合意に達する前にアップルが同名の製品を発表。話し合いは一転、法廷闘争に発展する気配だ。

 シスコが商標権を主張する“iPhone”は、同社の1部門であるリンクシスが2000年から利用しているIP電話機の登録商標である。リンクシスはアップルに先駆け、2006年12月に携帯IP電話機をこの名前で発表している(写真B)。シスコの広報担当者であるジョン・ノオ氏は、2年前からアップルがiPhoneの商標取得を希望しており、両社で協議していたことを明らかにしたうえで、今回のアップルの姿勢を以下のように批判した。

写真B:米国リンクシスのIP電話機「iPhone WIP320」

 「われわれは1月8日夜にも商標譲渡の条件について協議した。しかし翌日、ジョブズ氏がMacworld Expoで“iPhone”なる携帯電話機を発表したとき、われわれはアップルから署名済みの契約書を受け取っていなかった。アップルはわれわれと長期にわたり商標取得について協議している。これは、アップルが、iPhoneの名称がシスコのものであると認めている証拠だ」

 一方、アップルのiPod担当バイスプレジデントのグレッグ・ジョズウィアック氏は、IDG News Serviceの取材に対し、「シスコのiPhoneはIP電話であり、アップルのiPhoneは携帯電話だ。この2つは異なる製品であり、アップルはシスコの商標を侵害していない」と語っている。

 こうしたアップルの主張に対し、シスコのシニア・バイスプレジデント兼法務責任者のマーク・チャンドラー氏は以下のように反論する。

 「現在のシスコのiPhoneはIP電話機の名称だが、将来的には家庭用電話機、携帯電話機、オフィス用電話機などにも幅広く利用される。なぜなら “電話”は、今後PCとの融合によって無限の可能性を秘めたデバイスになるからだ。そのためにもわれわれは“iPhone”というブランドを守る必要がある」

 強行とも言えるアップルの行動に対し、専門家の間ではアップル劣勢という見方が広まっている。

 米国の法律事務所ホプキンス&カーリーの商標弁護士であるアロン・リービ氏は、「アップルがシスコとiPhoneの商標獲得について協議していたのであれば、アップルによる故意の侵害と見なされる可能性がある。どのような形であれ、アップルがiPhoneの名称を使うのは“危険な動き”だ」との見解を示した。

 また、リービ氏は今後の展開として、「アップルはシスコが2006年夏まで“iPhone”という名称で製品を発表していなかったことを理由に、名称の使用が可能だと考えていたと主張する可能性がある」と指摘する。

 なお、1月31日になって両社は、シスコが同社の提訴に対してアップルが応じるまでの期限を延長することで合意に至ったという声明を発表した。


前のページへ < 123 > 次のページへ





関連記事

▲ページの先頭へ戻る


Insight

Android携帯「G1」にも備わる“キル・スイッチ”、ユーザーの反応は?

猛反発が巻き起こったiPhoneのときとは状況が異なる

Insight 記事一覧





key Person

Androidはまだ強力なライバルとは言えない――マイクロソフトのバルマーCEO

「SymbianやBlackBerry、LiMoのほうが“少し”手ごわい」

key Person記事一覧



Main Topics

SOA



Weekly Ranking

集計期間:01/02〜01/08



Computerworld Global
米国
英国
中国
ドイツ
オーストラリア
シンガポール
その他の国