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【インタビュー】
クアルコムの上級副社長、話題先行の「4G」を斬る

「3Gの延長線上にこそ、超高速無線サービスの市場が広がる」

(2007年05月18日)

ここにきて、次世代無線ブロードバンド・ネットワークの定義づけと構築に向けた主導権争いが本格化してきた。そんななか、3G(第3世代)無線ネットワーク・チップ技術の主要サプライヤーである米国クアルコムは、「4G(第4世代)」という呼び方こそしていないものの、早くも、新たな超高速無線サービス市場の開拓に向けて動き出している。クアルコムで国際マーケティング担当シニア・バイスプレジデントを務めるビル・デビッドソン氏に、同社の次世代無線技術戦略の方向性について話を聞いた。

ジョン・ブラウ
IDG News Service ドュッセルドルフ支局

米国クアルコム IR(投資家情報)/国際マーケティング担当シニア・バイスプレジデント ビル・デビッドソン氏

 4Gのネットワーク技術として、現在3Gで採用されているCDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多重接続)ではなくOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:直交周波数分割多重)を推進することで、CDMA関連の知的財産権を多く所有しているクアルコムを出し抜いてやろうと考えている企業があるとすれば、そのもくろみは失敗するに違いない。

 というのも、このほどIDG News Serviceのインタビューに応じたクアルコムのビル・デビッドソン氏によれば、同社はすでにOFDM、OFDMA(OFDM Access)、MIMO(Multiple Input Multiple Output:空間多重化技術)などに関連する主要特許を1,000件以上も取得しているからである。

 ご存じのように、これらはいずれも、WiMax、LTE(Long-Term Evolution)、UMB(Ultra Mobile Broadband)といった主要4Gネットワーク技術の基盤となる技術である。ちなみに、OFDM/OFDMA特許のうち約150件は、同社が2005年に買収した無線ブロードバンド技術のフラリオン・テクノロジーズを通じて手に入れたものだ。

 以下、デビッドソン氏へのインタビューの内容をQ&A方式で紹介しよう。

――OFDMは、クアルコムにとってまったく新しい技術なのか。

 実は、創業時には、われわれはCDMAではなくOFDMを採用しようと考えていた。それが、最終的にCDMAを選択することになったのは、CDMAのほうが広域無線ネットワーク上でさまざまな処理を行うのに適していたからだ。当社は、今もそうだと確信している。

――OFDM技術に関しては、今後も企業買収で取得していくつもりか。

 ここ2〜3年の間に、当社が買収活動を活発化させているのは事実だ。なかでも、フラリオンの買収は最大規模のものだった。

――クアルコムの買収戦略において、知的財産権は大きな意味を持っているのか。

 そう言ってもいいだろう。ちなみに、フラリオンの買収では、2つの大きな成果が得られた。1つは、モバイルOFDMの実用的なシステムを構築することのできる、現時点では(世界で)唯一のチームを手に入れることができたこと。そしてもう1つが、買収を通してフラリオンが所有する知的財産権を取得できたことだ。

 ただし、当社の企業買収戦略では、「特許をわがものにする」ことよりも、「開発か購入か(build-versus-buy )」の判断に基づいて製品を市場に投入する時間を短縮し、エンジニアリング・リソースの強化を図ることのほうに重点を置いている。

――クアルコムがいまOFDMに関心を寄せる理由は?

 10MHzブロックおよびそれ以上の周波数が使えるようになってきたことが大きい。ただし、効率の面で、OFDMがCDMAよりも優れているというわけではない。しかしながら、利用できる周波数が広がったことで、インプリメンテーションなどは多少楽になるはずだ。

――とはいえ、より高速な新しいサービス、つまり4Gでは、OFDMが大役を担うことになると目されているようだが。

 いや、それほど大げさなものではなく、OFDMについては、単に周波数の利用効率を上げる技術だととらえている。それに、率直に言って、「4G」という言葉は使いたくない。なぜなら、この新サービスが現在考えられているような使われ方をするのであれば、今日の3Gと大して差があるとは思えないからだ。

――しかし、4Gは3Gよりもはるかに高速になるはずだが。

 4Gでは、まだ有線でも達成されていないようなデータ通信速度が実現されるといった話が広まっているようだ。確かに、この広大な周波数帯域を介してHDTV(高精細TV)の視聴などが可能になるのは間違いないだろう。だが、商用化となると、エンドユーザーにとってコストが実用的であるかどうかといったことについても考えなければならない。

――つまり、今のところ、4Gは必要ないと?

 他の団体が提唱する新技術(いわゆる4G)と同等、あるいはそれ以上の性能を発揮する、現行の3G技術ベースのロードマップがすでに出来上がっているということだ。

――ということは、WiMAXやLTEも必要ではないということか。

 わたしに言わせれば、「LTE(Long Term Evolution)」と「UMB(Ultra Mobile Broadband)」は同等の技術だが、WiMAXは性能面でこれらに匹敵するようなものではない。いずれにしろ、人々がいま「4G」と呼んでいるものが「既存ネットワークに取って代わることになる」という見方は誤っている。当社は、何年も前から、「次なるネットワークは、既存の複数の無線技術を効果的に組み合わせたところに生まれる」と主張してきた。

――今の「WiMAXはLTEに匹敵しない」という指摘について、もっと詳しく説明していただきたい。

 WiMAXの技術基盤は、元来、固定無線アクセス環境から生まれたものだ。われわれの業界には無線通信に対する技術の有効性を示す「リンク・バジェット」と呼ばれる考え方があるが、WiMAXはエンジニアリング面で妥協を強いられ、パフォーマンスの面でも問題があるだろう。また、もともとモバイル規格として開発されたものではないため、WiMAXは周波数効率でも劣る。

――4Gにおける知的財産権の問題についての見解を伺いたい。

 当社が所有するOFDM、OFDMA、MIMOポートフォリオは最強のレベルにあり、あらゆるOFDM/OFDMAシステムに適用できると確信している。WiMAX支持派は、WiMAX規格における知的財産の現状がきわめて明確かつシンプルであるかのように言っているが、WiMAX関連の知的財産を主張する企業は膨大な数に上り、今日の3Gにおける知的財産の状況のほうがWiMAXのそれよりはるかに分かりやすい。

――クアルコムは、今後何らかのかたちでWiMAXにかかわることになるのか。

 「Wi-Fiがいずれ3Gに取って代わる」と盛んに叫ばれていた数年前、われわれは「クアルコムのチップセットでWi-Fiをサポートしてほしいと顧客が望むのなら、それに応じる」との立場を取っていた。WiMAXに対しても、それと同じ姿勢で臨む。われわれは現実主義者であり、市場(の流れに)に従う。

――フィンランドのノキアでCEO(最高経営責任者)を務めるオリペッカ・カラスブオ氏は、先ごろ開催された同社の株主総会で、1つの企業、すなわちクアルコムが業界全体にルールを押し付けることを許してはならないと語った。そして、これは「クアルコム対ノキアの問題」ではなく「クアルコム対業界全体の問題」だと主張している。これに対して、何か反論があれば。

 わたしに言わせれば、ノキアが業界を代表して旗を振るということ自体が、おかしなことだ。クアルコムさえいなくなれば、ノキアの競合や潜在的な競合となる携帯電話機メーカーはほんの一握りになり、ノキアの天下になってしまうだろう。

 一方で、当社のビジネス・モデルはコンシューマーに多くの選択肢を提供するものであり、そのために、ノキアは顧客に対して一方的な価格づけを行うことができなくなっている。こうしたことから、ノキアは、当社が知的財産を所有していることを逆手にとって、「クアルコムが業界を牛耳っている」と印象づけようとしているのだ。

 クアルコムはノキアの脅威となるような競争を数多く創出している――これこそが、われわれが彼らに非難される理由にほかならない。






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