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[米国]
「インターネットの父」ヴィント・サーフ氏、地方自治体主導のブロードバンド整備を提言

「市民が整備を求めているのであれば、やはり自治体がかかわるべき」

(2008年05月12日)

 「インターネットの父」として知られる米国Googleのバイスプレジデント、ヴィント・サーフ(Vint Cerf)氏は5月9日、地方自治体主導のブロードバンド・ネットワーク構築を支持する考えを明らかにした。ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)だけに任せるのではなく、地方自治体がネットワーク整備に乗り出せば、高速インターネット網の普及に弾みがつき、さらに“ネット中立化”にもつながると述べている。

「インターネットの父」として知られる米国Googleのバイスプレジデント兼チーフ・インターネット・エバンジェリスト、Vint Cerf氏

 Cerf氏は、TCP/IPプロトコルなどインターネットの基礎アーキテクチャの設計を手がけたことで知られ、現在はGoogleでバイスプレジデント兼チーフ・インターネット・エバンジェリストの職にある。同氏は、9日に米国シアトルで開かれた昼食会の場で、地方自治体によるブロードバンド・ネットワーク構築を支持するとの考えを示した。

 シアトル市は現在、独自のブロードバンド・ネットワークの構築を計画中だ。南隣のタコマ市では、数年前に独自のファイバー・ネットワークを整備しており、シアトル市もこれに続くと見られている。

 現状、多くのISP(インターネット・サービス・プロバイダー)が、さまざまな理由から、回線のバンド幅を占める特定のアプリケーションやコンテンツをたびたび制限している。しかしCerf氏は「技術的な根拠はまったくない」と、ISP側の主張を退けた。

 「多くの人は、動画の使用が回線の渋滞を起こすとして問題視している。確かに特定のケースでは動画が原因になる可能性もあるが、実は処理量を増やせば解決する問題だ」(Cerf氏)

 Cerf氏によると、ギガビット・チャネルを利用すれば、ユーザーは1時間分の動画を約16秒で転送することができる。つまり、ユーザーはインターネットに相当な負荷がかかるビデオ・ストリーミングを利用するよりも、ダウンロードするほうを選ぶというのが同氏の見方だ。「ネットワークにとっても負担が軽いうえ、コンテンツのダウンロードに十分すぎるほどのディスク容量を多くのユーザーは有している」と同氏は付け加えた。

 一部のISPが問題にしているインターネットのバックボーン回線キャパシティ(許容量)についても、Cerf氏は「現在でもファイバー回線が持つキャパシティのほんの表面しか使われておらず、回線がパンクするという状態には程遠い」と述べている。

 ISPに対しては、単なるコスト上の問題からブロードバンド・ネットワークへの投資を避けていると批判する声が少なくない。これを同氏も否定せず、自治体のほうでブロードバンド・ネットワークの整備を主導することを提言する。「市民がキャパシティの拡大を求めているのであれば、回線の増設に対し資源を費やせるよう、市民自身で決定できることが望ましい。結局は自治体がかかわるべきという議論に戻る」(Cerf氏)

 自治体がネットワークを整備することには、公共事業と民間企業の間に競争が生じることを懸念する声もあるが、Cerf氏はこれを「馬鹿げている」と一蹴した。自治体が民間企業にネットワークの構築を依頼したり、運営を任せたりするケースは多々あり、両者はパートナー関係になるとCerf氏は話す。例えば、タコマ市はみずからネットワーク事業の管理・運営を行っているが、民間企業がISPとしてエンドユーザーにアクセスを提供するという形をとっている。

 さらにCerf氏は、ISP側は特定のアプリケーションへのアクセス制限を行うべきではないという従来からの主張を展開。「共有の資源を支配できる立場が悪用され不当な差別が生まれないよう、法を定めてもいいと思う」と述べ、ネット中立化を支持する立場をあらためて強調した。

 なお、ネット中立化については、先週新たな動きがあった。インターネット・トラフィックのブロック、あるいはスピード制限などを行ったブロードバンド・プロバイダーに対し、反トラスト法違反を適用するという内容の新たなネット中立化法案が議会に提出されたのである。

 当然ながらISP側は、そのような法案は不要であり、成立すればブロードバンド・ネットワークへの投資が鈍ると反論している。米国では現在、CATV業者の米国Comcastが一部のBitTorrentピア・ツー・ピア(P2P)プロトコルの利用を制限している問題が議論されており、こうした流れが同法案の背景にある。

(Nancy Gohring/IDG News Serviceシアトル支局)






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