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【解説】
PLC(電力線通信)、 企業では普及しない?
IT業界の定説――嘘か真実か?
(2008年02月20日)
セキュリティの問題は
企業利用での懸念事項
もう1つ、そもそも企業にとってPLCが必要なのかという問題もある。オフィスが普通に有線LANケーブルを引き回せる構造であれば、わざわざ不安定なPLCを使う必要はない。また、会議室などでは無線LANを利用するケースが増えているため、あらためてPLCを導入する必要がないという企業もあるだろう。オフィスではPLCのみでネットワークを構築するというパターンは考えにくいと言えるのかもしれない。
またネットワーク管理者としては、管理とセキュリティの問題が気になるところだ。PLCアダプタの接続はとても簡単で、親機と子機の2台で同時にボタンを押すだけで接続できる。これはコンシューマー向けに設定を簡単にしているためだが、オフィス利用では問題となる。PLCアダプタを無断で持ち込まれると、内部でネットワークを利用される可能性があるからだ。PLCアダプタ間での信号は、厳重な暗号化によって保護されているが、物理的に内部に持ち込まれてしまえば情報漏洩につながる可能性もあるだろう。
このように、PLCには接続自体の問題のほか、通信速度、電波障害、ネットワーク管理などの問題が存在する。それでは、PLCを使うメリットはいったいどこにあるのだろうか。次節より探ってみることにしよう。
部屋数の多い学校や
社員寮などで導入が進む
PLCが実際に、どのようなシーンで導入されているかについて、企業向けPLC製品を販売するNECネッツエスアイのSI&サービス事業本部・情報ネットワークソリューション事業部、木村順一氏は次のように説明する。「まず、学校でPLCを利用する例が増えています。現在、文部科学省によって全国の小中学校へのインターネット導入が進められていますが、校舎の多くが古いため、有線LANを引けない、もしくはコストがかかり過ぎて工事できないという状況にあります。そこでPLCを使って、各教室でネットワークが利用できるようにするという事例が増えているのです。また、ホテルでの利用も増えてきています」
同社の企業向けPLC製品は、PLCアダプタにDS2製チップを採用したUPA方式である。UPAの特徴であるリピータ機能が備わっていることで、通信距離が長くなるほか、分岐があっても接続しやすくなるというメリットがある。学校やホテルなど、建物中に多く部屋があって、かつ電源ラインが長くなるような環境では、この方式のPLC製品が有効と言える(図3)。
同様の例として、竹中工務店の社員寮(神戸市)でもPLCが導入されている。ここでは住友電工のPLCアダプタ(UPA方式)が選ばれており、社員寮の90室にPLCネットワークが構築されている。分電盤を挟んではいるものの、リピータ機能のあるPLCアダプタによって接続が可能になっている。
| 図3:ホテルでのPLC導入例 |
事例から見えてくる
PLCの企業での使い道
| 写真1:NECネッツエスアイのPLCを使ったテレビ電話会議システムの例。テレビの下側にPLCモデムが設置されている。同社のある顧客企業では、既存の社内網が細いためにテレビ電話会議システムを導入することができなかった。そこでBフレッツとPLCを使った独自のネットワークを構築してテレビ電話会議システムを導入したという。下はPLCモデムの拡大写真 |
NECネッツエスアイによれば、数はまだ少ないが、全国に支店を持つ大規模企業での導入事例もすでに存在する。同社のある顧客企業がそうで、その企業には社内網が存在するが、回線が細いためにテレビ電話会議システムの導入が難しかったという。そこでPLCを活用し、社内網とは別にテレビ電話会議システム(写真1)を導入した。
NECネッツエスアイ企画部コーポレートコミュニケーション室の中澤弘巳氏は、「この企業では、アクセス線としてBフレッツを使い、各会議室へはPLCで接続してテレビ電話会議システムを構築しています」と説明する。この例では、テレビ会議のために別個にネットワークを構築したわけだが、末端をPLCにしたおかげで、コストを抑えながら高速接続が可能になったという。つまり、既存の回線に問題がある環境で新たにネットワークを構築する場合には、接続の一部にPLCを用いるのが有効と言えそうだ。
さらに、全国で展示即売会を行う企業での導入事例もある。この企業では各地の会場を巡って展示即売を行っているため、現地に行かないとネットワークが利用できるかどうかがわからないという問題があった。そこで同企業ではPLCアダプタを携行し、現地でPOS(Point Of Sales)などの売上げ管理に利用しているそうだ。
このように、毎回異なる場所で業務を行う企業などでは、コンセントさえあればネットワーク環境を構築できるPLCが重要な役割を担うことになるかもしれない。ともかく、イベントや展示などが多い部署では、PLCのセットを常に持っておくと便利だろう。
LAN導入が難しい場所で
PLCは有効な手段に
現在では、コンビニエンス・ストアでのPLCの導入事例も出てきている。コンビニではバックヤードの店長室と、店舗のレジでの管理が必要となる。古い店舗で有線LANがない場合には無線LANを使うことになるが、壁を隔てるため接続できないシーンも多い。NECネッツエスアイによれば、店長室と店舗をPLCで接続する例が増えてきているという。工事なしで接続できるPLCが、ネットワーク構築にコストをかける余裕のない企業にも有効であることを示す事例である。
また、有線LANを引きにくい古い建物やロビーなどでPLCを利用するのも、この技術のよい活用方法である。ロビーでの事例としては、NECネッツエスアイ自身が本社で利用している。同社の本社ロビーは大理石のフロアなので、有線LANを敷設することができず、そのためロビーに置くPCは、PLC接続を利用しているそうだ。このように、何らかの理由で有線LANの敷設がかなわない場合には、PLCの出番となる。

