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[国内]
【インタビュー】
マクニーリ氏来日会見、「サンは“統合された完成車”を提供する」
(2003年10月21日)
技術力を武器にインターネットの進展を牽引し、IT業界のリーディング・ベンダーとしての地位を築いたサン・マイクロシステムズ。ドットコム・バブルの崩壊で最も大きな痛手を受けたベンダーの1社である同社は、現在、業績回復の「起爆剤」を模索しているところである。10月21日、来日中の米国サン会長・社長兼CEO(最高経営責任者)のスコット・マクニーリ氏は、国内 IT系メディア記者との会見で、同社の「現在位置」について語った。
河原 潤
本誌編集長
──本日、日本で、ソフトウェアの新しい価格体系「Sun Java System」に基づくサーバ向け基盤ソフトウェア製品パッケージ「Java Enterprise System」が発表された。今後、このモデルを競合ベンダーが追随する可能性はあるか。
マクニーリ氏:Java Enterprise Systemの新しい価格体系は、システム・ベンダーであるサンならではの革新的なモデルで、マイクロソフトやIBM、HPなどには到底、真似することのできないものだ。なぜなら、各社とも、サービス料金を含めた既存のライセンス体系に強く依存しているからだ。顧客企業からの反応は上々で、われわれはこのモデルの提供開始を契機に、システム・ベンダーとしてさらなる成長を遂げようとしている。
| 米国サン・マイクロシステムズ 会長・社長兼CEOのスコット・マクニーリ氏 |
ここに新価格体系が書かれたカードがある(下の写真を参照)。この小さな名刺大のカードがすべてを物語っている。このサイズに、すべてのソフトウェア製品の価格表を収めることのできるベンダーは、当社以外ないだろう。この点だけをとっても、革新的な出来事だと思っている。
| Sun Java Systemの価格体系が記載された名刺大のカード |
──現在、Linuxプラットフォームについてどのように考えているのかを聞かせてほしい。
マクニーリ氏:サンは、サーバ向けLinuxと同時に、デスクトップ向けLinuxを提供している唯一のベンダーである。サーバでは、 Red Hat Linux、SuSE Linuxを展開しているし、本日発表されたJava Enterprise Systemは、Linux上で稼働させることが可能だ。特に、デスクトップLinuxに関しては、HP、IBMも手掛けてなく、システム・ベンダーでは、われわれだけが提供できるのだ。
Linuxプラットフォームに関する、サンの現在のポジションには大変満足している。一方、64ビット・コンピューティング、マルチスレッド処理への対応や、100CPUを超えるスケーラビリティといった要素を必要としている顧客には、従来どおり Solarisを提供している。つまり、サンは、顧客が自身にとって最適なプラットフォームを選べるように、選択肢を用意しているのだ。もちろん、われわれが提供するOSは、すべて純正のUNIXである。これは、SCOに聞いてもらえれば分かると思う(笑)。
──長らく業績が低迷しているが、打開策はあるのか。
マクニーリ氏:現在の状況は、さまざまな要因の組み合わせから来ている。ご存じのようにサンは、西暦2000年問題や、インターネット・バブル、あるいはテレコム・バブルなどの波に乗って、大きな収益を上げた。だがその分、バブルの崩壊後は反動も大きかったと言わざるをえない。
以前から、われわれには、金融、通信など各業界のサービス・プロバイダーと緊密なパートナーシップの下、優れたソリューションを提供していくという明快な戦略がある。どの業界も大変厳しい状況下であえいでいるというのが現状だが、近い将来、これらの業界は再び右肩上がりの成長に転じていくと考えている。それは、現代社会で電話がなくなることはありえないし、金融会社が必要とされなくなるはずがないからだ。
もちろん、計画がすべて成功するということはないだろう。だが、確固としたビジョンの下、ミッションを遂行していくということに関しては、私は何の不安も感じていないし、必ず良い結果が得られると信じている。その際に、景気が回復し始め、企業のIT投資が再び活発化するようなことになれば、もちろん、われわれにとって大きなチャンスである。あとは、記者の方々にもう少し前向きな記事を書いてもらえれば、これも好材料になるのだが(笑)。
──最近のサンの「革新」として、スループット・コンピューティングに注目が集まっている。顧客に対し、どのようにアピールしていくつもりか。
マクニーリ氏:まずは出荷という第一関門をクリアしなくてはならない。来年には、チップ・マルチスレッディング(CMT)技術を搭載したUltraSPARCプロセッサの新モデルを順次する。来年前半にハイエンド向け製品を、次に、ミッドレンジ向け製品をリリースする予定だ。
スループット・コンピューティングのかなめとなるCMTでは、同一性能のチップで2倍の処理性能を実現できるうえ、その実装に要するコストもわずかだ。コンピューティングのすべての分野で有効というわけではないが、特に、データベース、Webアプリケーション、ビデオ・ストリーミングといった分野では威力を発揮することになろう。
──今月初め、研究開発の中心人物だったチーフ・サイエンティストのビル・ジョイ氏がサンを退いた。今後、革新を進めていくのにあたって、その影響はどのぐらいあると考えるか。
マクニーリ氏:バークレー版UNIXから始まって、Jini、JXTAなど、ビルは、長きにわたってIT業界の技術革新を牽引してきた。しかし、サンにとっては、牽引者とは言えなかった。彼は業界全体にとっての「グローバルな宝」であり、サン以外の多くの企業も彼が生み出した技術革新の恩恵を受けてきた。ここで深刻な問題となるのは、その対価として、当社がビルに高給を支払い続けてきたことだ(笑)。
ビルがサンを離れたことで、一体何が変わるのかは私には分からないし、おそらく彼自身にも分からないのではないだろうか。ともあれ、彼が業界全体のテクノロジー・リーダーであることは間違いなく、今後の業界全体の進展を考えれば、(退社は)良いことであったと言えるだろう。
──「革新的な新価格体系」という本日の発表は、技術指向の強いサンという従来のイメージからはやや離れており、意外な印象を受けた。サンの戦略が少しずつ変わり始めているのか。
マクニーリ氏:今日のIT業界では、技術指向が過剰になりすぎているきらいがある。個々の細かい部品にこだわりすぎると、全体を見失ってしまう。サンは、自動車を構成する各部品を提供しておしまいというのではなく、完成した自動車を提供するベンダーである。しかも、「ビルディング・ブロック形式で組み立てることが可能な完成車」だ。自動車では、純正の部品を他社製のものに交換することが可能だ。同様に、われわれの顧客も、ディレクトリ・ソフトが気に入らなければノベルの製品を、ファイルシステムを他のにしたければベリタスソフトウェアの製品を、といった具合にコンポーネントを自由に変更することができる。新価格体系が適用されるJava Enterprise Systemも、このビジョンに基づいており、決して意外なものではないのだ。



