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[米国]
IBM、カーボン・ナノチューブICの開発に成功
(2006年03月23日)
米国IBMの研究者が、従来のシリコン技術とカーボン・ナノチューブ分子を組み合わせた電子ICを開発、ナノスケール・プロセッサの実現に向けて大きな前進を果たした。
「開発したハイブリッド回路は、現時点では従来の回路よりも高速ではないが、概念を証明する重要な成果だ」と、IBMのトーマス J.ワトソン研究センターの研究スタッフ・メンバー、ジョーグ・アペンゼラー氏は強調する。
この研究成果は、3月23日付けのScience誌に掲載された論文の中で明らかにされたもので、高速プロセッサの設計に大きな影響を与える可能性がある。
インテルの共同創業者ゴードン・ムーア氏が、チップの集積度は2年ごとに2倍になると予測してから40年が経つが、多くのエンジニアがムーアの法則を維持するのが困難になってきていると考えている。
半導体最大手のインテルは、2007年までにチップの回路線幅を65ナノメートル(nm)から45nmに縮小する計画を表明している。しかし、多くのエンジニアは、チップの集積度をこれ以上高めると、発熱などの深刻な障壁にぶつからざるをえないと見ている。ハイブリッド・プロセッサは、こうした問題を回避できる可能性がある。電子がナノチューブ内を低摩擦で高速に流れるからだ。
アナリストは、IBMの研究成果は目標達成に向けた重要なステップだと見ている。「IBMは、この技術が10〜15年後に業界のゲームのルールを変えるという見通しに立って取り組みを進めている。今回の成果はそのビジョンの実現につながるきわめて大きな成果だ」と、ラックス・リサーチのアナリスト、バヒ・マミクニアン氏は評価する。
カーボン・ナノチューブは以前から、チップの高速化や省電力化、高密度化などを可能にする優れた物理特性を持つことが研究者の間で注目されていた。
例えば、米国ナンテロがナノチューブを使って高密度の不揮発性メモリの開発を進めているほか、ナノチューブの熱伝導特性を用いてプロセッサの発熱を抑える取り組みも日本の富士通や米国ナノコンダクションなどで進められている。
しかし、ラックス・リサーチのマミクニアン氏によると、IBMの研究がこれらと大きく異なっているのは、カーボン・ナノチューブをシリコンの代替として本格的に利用しようとしている点にあるという。「カーボン・ナノチューブをシリコンに代わる技術として本格的に注目した例はこれまでに見られない」(同氏)
カーボン・ナノチューブは、炭素原子で構成される人の髪の毛の5万分の1ほどの直径の円筒状分子だ。IBMの研究チームはカーボン・ナノチューブに一般的なワイヤを接続し、くしの歯のような形状にすることに成功した。これにより、既存の半導体プロセスを利用して、1つの分子を回路の全コンポーネントの基盤として利用することが可能になった。
「われわれは、ナノチューブをシリコン・チップで現在採用されているのと同様の標準的なアーキテクチャに組み込むことに成功した。これにより、チップのいっそうの小型化と高速化を図れるようになる」(アペンゼラー氏)
開発されたICを交流(AC)電源で動作させ、トランジスタのパフォーマンスを測定するリング・オシレータと呼ばれるツールで測定した結果、動作速度は最大で50MHzに達したという。これは回路内のナノチューブでこれまでに記録された速度よりも10万倍も高速な値である。
「現在のシリコン・チップの速度にはまだ及ばないが、高速化にはそれほど時間はかからないだろう。車を最初に開発するのが、速く走る車を開発するよりもずっと難しいのと同じである」とアペンゼラー氏は述べている。
(ベン・エームズ/IDG News Service ボストン支局)

