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グリッド入門講座【前編】

グリッドの要素技術を知る

(2007年03月28日)

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グリッドの情報サービス

 グリッドにおける「情報サービス」は、グリッドに接続されているITリソースの種類や状態を情報として収集し、ユーザーーに提供する一種のデータベース・サービスである。

 このデータベースに保存される情報には、静的な情報と動的な情報の2タイプがある。このうち、静的な情報には、例えば、コンピューティング・ノードの数や、各コンピューティング・ノードに搭載されているプロセッサ/OSの種類、メモリ容量などが含まれる。
 一方の動的な情報は、各ノードのメモリ/ハードディスクの空き状況やプロセッサの負荷状況などだ。グリッドの情報サービスでは、こうした動的な情報を定期的に収集・管理し、提供することになる。

Globus Toolkit

 前述したグリッド上のセキュリティ、資源管理、情報サービスなどの機能を提供するソフトウェアは、グリッド・ミドルウェアと呼ばれる。このグリッドミドルウェアのデファクト・スタンダードとしてよく知られているものに「Globus Toolkit」がある。

 Globus Toolkitには、前述したセキュリティと資源管理、および情報サービスの仕組みが備わっており、ユーザー認証には、公開キー認証の技術が用いられている。つまり、ユーザーは、グローバスのCA(証明機関)から発行された証明書を用いて、認証を行うというわけだ。

 Globus Toolkitではまた、シングル・サインオンを実現するために、「プロキシ・サーティフィケート」と呼ばれる方式が用いられている。これは、ユーザーが特定の処理をグリッドで実行したいと考えた場合に、処理に必要な一時的な証明書をプロキシ・サーバから自動的に送ってもらうという方式だ。

 例えば、特定のジョブを処理するために、グリッド上の「A」というサーバのみならず、「B」というデータベース・サーバからデータを引き出す必要があるとする。

 通常、この場合、サーバ「A」とデータベース・サーバ「B」に対する認証手続きを個別に踏まなければならない。しかし、プロキシ・サーティフィケートの仕組みを使えば、(サーバ「A」からデータベース・サーバ「B」へのアクセスが必要であると判断された時点で)一時的な証明書がデータベース・サーバBに送られ、認証処理が自動的に行われるのだ。

 さらに、Globus Toolkitの資源管理では、「ゲートキーパー」と呼ばれるプロセスが存在する。つまり、このプロセスが、ユーザーーからのリクエストを受け付け、ジョブを実行したり、ファイルを転送したりするのである。

 このほか、Globus Toolkitでは、「GIIS」と「GRIS」という2種のプロセスを組み合わせることで、情報サービスを実現している。

 GRISは、グリッド上のコンピュータの情報を収集するプロセスで、その情報はGIISに集められ、GIISから検索・参照できるようになっている。

グリッドのスケジューリング

 グリッドにおける「スケジューリング」の技術は、ユーザーが特定の処理を行いたい場合に、グリッド上のどのITリソースを使わせるかを自動的に決定する機能を提供する。

 グリッドのスケジューリングは、3段階に分かれており、最初のフェーズでは「資源探索」と呼ばれるプロセスが実行される。

 グリッドには、OSやソフトウェア、およびプロセッサが異なるさまざまなコンピュータが接続されており、それぞれのメモリ/ハードディスク容量や空き状況も異なる。

 そのため、ユーザーのジョブをどのコンピュータ上で実行させるのが適切かを決めなければならない。ゆえにまずは、ユーザーーのジョブを実行できる条件を満たしたコンピュータを探し当てる必要があり、なければならない。それを行うのが資源探索となるである。

 スケジューリングの第2フェーズは、探し当てたコンピュータの中から最適なものを選び出す作業であり、3番目のフェーズがジョブを実行するプロセスとなる。

 もっとも、グリッド上で複雑な処理を行うためには、いくつかの技術を複合的に用いなければならない。

 その1つは「コアロケーション」と呼ばれる技術であり、これは、グリッド上で並列して動くプログラムを実行する際に必要とされるものである。

 例えば、あるプログラムを動作させると、ジョブA、ジョブB、ジョブCというプログラムが立ち上がり、互いに通信を行いながら処理を実行していくとする。

 この場合、A、B、Cのすべての処理が同時間帯に実行されれば問題はないが、A、B、Cのいずれかのジョブの実行がコンピュータによって拒否され、結果として、1つのジョブのコンピュータへの割り当てが遅れてしまう場合がある。

 コアロケーションは、このようなケースを回避するための技術であり、(上の例で言えば)同じ時間帯に3つのジョブが必ず実行されるように、コンピュータをあらかじめ予約しておき、処理を行わせる仕組みである。

 また、ジョブAの結果をジョブBが受け取り、ジョブBの結果をジョブCが受け取って処理を行うような場合、「このジョブは、この時間帯までに必ず終わらせる」というデッドラインを設けるケースがある。そうした場合も、設定したデッドラインに従って、コンピュータの予約を入れなければならない。

スケジューリングとCondor

 グリッドのスケジューリングに広く用いられているツールとして、「Condor」と呼ばれるソフトウェアがある。
 このソフトウェアの機能は、大きく3つに分けることができる。1つは、「マッチメーキング」と呼ばれるもので、これは資源探索と(コンピュータに対する)ジョブの割り当てを行う。

 また、2つ目の機能は、先に説明したチェック・ポインティングの機能で、3つ目が「DAGMan」というジョブ・ワークフローのスケジューリングを行う機能である。すなわち、DAGManは、ユーザーユーザーが指定した順番どおりに、複数のジョブを実行してくれるのである。

 また、グリッドのスケジューリングを行うツールとしては、NAREGIのスーパー・スケジューラも注目を集めている。このツールは、国立情報学研究所を中心に開発が進められている。 

グリッドのデータ管理

 グリッドにおけるデータ管理とは、グリッド上に分散するファイルのデータやデータベースを共有するための仕組みだ。

 この仕組みによって、ユーザーは、自分の処理に使いたいファイルがグリッド上のどのコンピュータにあるかを探索したり、目的のファイルにアクセスしたりすることができる。

 また、グリッドのデータ管理では、高速ファイル転送のサービスも提供されている。

 最近では、インターネットのブロードバンド化が進展しているが、通常の回線では、例えば、10ギガ・ビットの回線スピードがフルに確保されるわけではない。グリッドの高速ファイル転送サービスは、そうした問題を解決するサービスであり、10ギガ・ビットの帯域幅があるならば、それをフルに使えるようにする仕組みである。
 さらに、グリッドのデータ管理では、頻繁に使用されるファイルのコピーを作り、適切なサーバ上に配置するといった機能も提供されている。

グリッドのプログラミング

 グリッド(主に、科学技術計算用途のグリッド)のプログラミングは、並列コンピュータ上で使われている既存のプログラミング・モデル「MPI」をそのまま使うか、そのモデルを拡張したものを使うかのいずれかによって行われている。

 また、グリッドにおけるリモート・プログラムの実行呼び出し(リモート・プロシージャ・コール)の統一規格として、「GridRPC」と呼ばれる規格もある。これは、グリッドの世界的な標準化団体である「OGF(Open Grid Forum)」が策定している規格であり、平易なプログラミング・インタフェースや、並列プログラムのための非同期呼び出しAPIなどが盛り込まれている。

 さらに、この規格を実装したシステムとして、米国テネシー大学が開発した「NetSlove」)や筑波大学の「OmniRPC」、および、産業総合研究所と東京工業大学などが開発した「Ninf-G」がある。

 Ninf-Gは、Globus Toolkit上に構築されたGridRPCのリファレンス実装ミドルウェアであり、グリッド上のセキュリティに関連した機能(ユーザー認証や通信の暗号化など)は、Globus Toolkitの機能をそのまま用いている。また、Ninf-Gは、グリッド環境へのプログラムの移植が容易であるといった特徴も備えている。

 なお、コンピュータの専門家以外の人が、グリッドに処理を行わせるのは簡単ではない。そこで、グリッドでは、コンピュータの専門家以外の人でも、アプリケーションの実行がすみやかに行えるような仕組み(すなわち、アプリケーション実行支援の環境)も提供されている。

 その一例が、「UNICORE」と呼ばれるグリッドのミドルウェアだ。このミドルウェアでは、ユーザーが記述した処理の手順に従って、ジョブを実行したり、データベースへのアクセスを行ったりするのであるうことができる。

 以上、今回は、グリッドを構成する技術要素について説明してきた。次の「後編」では、グリッド技術の標準化動向と、グリッド技術のビジネスへの適用について解説することにしたい。

(Computerworld.jp)


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