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グリッド入門講座【前編】

グリッドの要素技術を知る

(2007年03月28日)

科学技術計算の領域で研究と開発が進められてきたグリッドのテクノロジー――その技術は今、ビジネスの分野へと適用の領域を着実に広げつつある。ここでは、日本におけるグリッド・テクノロジーの普及促進を目的に設立された団体、グリッド協議会の副会長である合田憲人氏(国立情報学研究所 リサーチグリッド研究開発センター 特任教授)と、同じくグリッド協議会の運営委員である伊藤 智氏(独立行政法人 産業技術総合研究所 グリッド研究センター)のレクチャーを基に、発展と多様化が進むグリッド・テクノロジーの全体像を、前後編の2回に分けて概観する。前編となる今回は、グリッドの基礎的な理解を深めていただくために、グリッドを構成する技術要素について解説する。

Computerworld.jp

グリッドの輪郭

 ITにおける「グリッド」とは、ネットワーク上に分散している情報資源(ないし、ITリソース)を、「安全に」、かつ「必要なときに必要なだけ」、そして「簡単に」(つまり、「ネットワークやITリソースの物理的な所在などを意識せずに」)活用するための仕組みを指す。

 また、少し難しい言い方をすれば、グリッドとは、ネットワーク上のコンピュータやデータ、実験装置、センサー、さらには人などの資源を仮想化して統合し、必要に応じて、仮想コンピュータ(Virtual Computer)や仮想組織(Virtual Organization)を動的に形成するためのインフラであるということになる。

 ちなみに、米国アルゴンヌ国立研究所兼シカゴ大学のイアン・フォスター(Ian Foster)氏は、次の3つを、グリッドの要件としている。

  • 集中管理されていない分散した資源のコーディネート
  • オープン・スタンダードなプロトコルやインタフェースの利用
  • 単純には得られない質の高いサービスの提供

 ともあれ、例えば、コンピュータを使用して計算処理を行う場合、通常は、ユーザー自身が処理対象のプログラムを実行するのに必要な計算能力を想定したうえで、以下の一連の作業を行わなければならない。

【1】プログラムを実行するコンピュータを特定する
【2】そのコンピュータに対してプログラムやファイルを転送し、ログインする
【3】プログラムをコンパイルして実行する
【4】実行の結果が出るのを待ち、結果が出たら、それをダウンロードする

 仮に、使用するコンピュータが1台であれば、こうした作業もさほど苦にはならない。だが、使用するコンピュータの台数が増えてくるに従って、作業のフローはきわめて複雑化することになる。

 グリッドは、分散コンピューティングにおけるこうした複雑性を排除してくれるものだ。

 グリッドを用いることで、どのコンピュータに計算処理を行わせるかの判断はもとより、ファイル転送やログインなど、分散処理に必要とされるほとんどの作業をソフトウェアが自動的に行ってくれる。つまり、ユーザーは、処理の手順書のようなものを作成し、システム側に送出するだけでよく、あとはグリッドのソフトウェアがすべてをこなしてくれるのである。

グリッドの分類

 グリッドには、いくつかの種類がある。

 その1つが、上述したような「複数のコンピュータに計算処理を分散させ、処理の高速化を図る」という「コンピューティング・グリッド」だ。また、それ以外にも、以下のような形態がある。

【データ・グリッド】 大規模/高性能データ処理サービス
【ビジネス・グリッド】 高信頼Webサービス
【PCグリッド】 遊休PCの活用によるメガ・コンピューティング・サービス

 もっとも、上記のような分類は必ずしも共通認識の上で形成されたものではなく、それぞれを個別に使うわけでもない。さまざまな用途のグリッド・テクノロジーを目的に応じて組み合わせ、各種のソリューションとして提供されるのである(図1)。


図1:グリッドの分類と応用例

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