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グリッド入門講座【後編】

グリッドの標準化動向とビジネスへの適用

(2007年04月05日)

企業システムとグリッド

 上述したとおり、OGSAが登場した背景には、ビジネス領域へのグリッドの普及という目的がある。

 では、科学技術計算の領域で発展してきたグリッドの技術は、ビジネス(ビジネスIT)のどの領域で効力を発揮しうるのだろうか。

 まず、今日における企業システムの多くは、会社の組織構造に準じた格好で、「縦割り型の構造」を成している。より簡単に言えば、企業の事業部ごと、または、部門ごとに、それぞれ個別のIT基盤が構築され、その上で異なる業務アプリケーションが動作しているというわけだ。

 大抵の場合、異なる部門の業務システムにかかる負荷は、時間帯や月ごと、日ごとによってバラツキがある。よって、例えば、ある月では、部門「A」の業務システムのリソースに十分な余裕があるものの、部門「B」の業務システムのそれにはまったく余裕がないといった状況が作られるのである。

 また、「A」と「B」の両部門のシステムが互いに孤立している場合、たとえ部門「A」のシステムに余裕があっても、そのリソースを部門「B」のシステムに振り向けることはできない。そのため、リソース不足を補うために、部門「B」のリソース増強を余儀なくされることもある。

 このような問題を解決する1つの手だてが、企業システムを構成するすべてのITリソースを仮想化し、グリッド環境として統合化することにほかならない(図5)。


図5:グリッドによるITリソースの統合化

 これにより、例えば、部門「A」のITリソースを、部門「B」のアプリケーションの処理に柔軟に割り振ることが可能になる。結果として、ITリソースの使用効率が高められ、ITリソースに対する投資の無駄も排除されるのである。

 おそらく、こうしたかたちでのグリッドの応用が、企業ビジネスの中では最もニーズが高く、また、メリットの見えやすい領域であろう。さらに、このようなグリッド技術を活用する手段も、すでに実現されているのである。

大規模バッチ処理での応用

 他方、科学技術計算系のグリッド技術を、そのまま適用できるビジネス領域もある。

 例えば、製造企業や製薬会社、および金融機関などでは、きわめて大規模な演算処理を必要とする業務領域がある。そうした業務のバッチ処理(演算系のバッチ処理)にグリッド技術を適用すれば、きわめてコスト効率の高いシステムが実現される。

 より端的に言えば、大規模な演算処理を1つの拠点の、特定のシステムにすべて担わせるのではなく、ネットワークに接続された複数の拠点のコンピュータに分散させて処理させれば、特定の拠点に高価な大型コンピュータを導入することだけが、問題解決の手段ではなくなるというわけである。

 しかも、コンピューティング・グリッドの適用範囲は、単一の企業のシステムのみならず、関連会社のシステムを巻き込むかたちで広げることもできる。換言すれば、グリッドを起点に、仮想的に統合化されたコンピューティング環境を、企業や組織の垣根を越えて構成することができるのである。

 さらに、グリッドによる仮想化と統合の仕組みは、演算処理の領域のみならず、データ処理・活用の領域でも同様に生かせる(図6)。


図6:データベース領域へのグリッドの応用

 例えば、企業の各事業所や関連会社に顧客情報が分散して保持されているとしよう。この場合、異なる組織のデータベース・システムに対して横断的な検索をかけ、必要な情報を引き出すのは困難となる。だが、データ・グリッドの技術で、各所のデータベースを仮想的に束ねれば、1つのSQL文を発行するだけで、各拠点のデータベースにアクセスし、その結果を統合化されたかたちで得られるようになる。さらに、グリッドの技術を応用すれば、データの複製を異なるサイトに配置しておき、損傷したデータを自動的に復旧することも可能になるのである。


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