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【インタビュー】
「目指すのは、日本社会に根づいた“情報インフラ企業”」――EMCの諸星社長

製品の単なる“日本語化”ではなく“日本化”を目指す

(2007年11月29日)

「日本化」を追求することで顧客の信頼を得る

──社長就任会見では、単なる製品の「日本語化」ではなく「日本化」を目指すということを強調されていました。どのような取り組みでこの目標に向かっていくのでしょうか。

諸星氏:日本でこの国の事情に合わせたソフトウェアを開発し、それを英語化して海外で売ろうとしても難しいものがあります。市場や商文化、ユーザーの使い方は国によって全然違ってきますので。それと同じで、基本的に米国で作られた製品を日本で売るには、やはり相当な工夫が必要です。

 日本は、EMCにとって今でも世界第2の市場です。そこで市場をリードするには、それなりのことをやらねばなりません。つまり、日本化はお客様へのメッセージであると同時に、EMC社内に向けたメッセージでもあるのです。

──製品に限らず、サポート/サービスや顧客とのつきあい方も含めてということですね。

諸星氏:もちろんです。一般的に言って、日本のお客様は特にベンダーに対する期待値が非常に高く、要求もシビアです。例えば日立や富士通ですと、何か問題があれば開発エンジニアまでもがお客様のところに飛んでいき対処しています。外資系の弱みとして、「問題がフィクスすれば、もうそれでいいじゃないか」といった風潮が少なからずありますが、それでは日本のお客様は納得しない。なぜ、この問題が起きたのか。どんな処置をとったのか。なぜ、その処置をとれば問題は二度と起きなくなるのか──そこまで説明して、お客様からの信頼を得るのです。

 ストレージはハードウェア機器として成熟し、壊れにくくはなりましたが、それでも故障は絶対に避けられません。壊れたときの対処、同じ原因で壊れないようにするための原因分析、対策、ひいては製造プロセスも変える必要も出てくるかもしれません。そういうところまでをきちんとフィードバック可能な体制を作らないと、日本のお客様に見放されてしまいます。相当に時間がかかることだと覚悟していますが、最も重要なことだと思っています。

──創業13年になりますが、まだ日本化が足りないのでしょうか。

諸星氏:現在、従業員が1,000人近くいて、うち日本国籍でない従業員は30人ぐらいで、あとは皆、日本人ですから、感覚的にはもちろんわかっています。

 米国の商文化を説明するのに、プラバー(Plumber:水道管工)の話がよく挙げられます。プラバーと、家の水道が故障したから、明日の朝9時に来てくれと約束しても、その時間に来たためしがないという話です。ひどい場合は遅れるどころか来ない。それなのに米国人はあまり怒りません。そんなものだと慣らされているからです。でも日本人だったら、30分も遅れればカンカンに怒りますよね。私も米国生活が長かったので、日本に帰ってきてそうしたサービスが予定時間ピッタリに提供されることに感激してしまいました。

 極端な例を挙げてしまいましたが、米国と日本とでは、そのぐらいサービス品質に対する要求の度合いが違うというわけです。米国で開発・製造しているといって、米国の平均的な品質だと、日本ではまったく売れません。幸い、当社には非常に能力の高い人たちがそろっているので、真の意味での日本化は、近い将来実現できると思っています。

市場での生き残りをかけてパートナー戦略を強化へ

──ITベンダーの成長戦略には大きく、研究開発に多額の投資をして自社の製品力を高めていく方向と、有力な技術・製品を持つ企業の買収を重ねることで業容を強化・拡大していく方向の2つがあります。EMCは近年、後者の戦略が目立っていますが、この方向性は当面続くのでしょうか。

諸星氏:確かにそう見えるかもしれませんが、EMCは研究開発にも相当な力を注いでいます。毎年、総売上げの約10%をR&Dに投資しています。その一方で、買収戦略も引き続き重視していきます。2003年以降に買収した企業の技術は、データ保護/最適化エリアの強化に大きく貢献しています。何でもかんでも買収するのでなく、ビジョンに基づいて、重要な技術、差別化になる技術を取り込んでいく方向に変わりはありません。

──ドキュメンタムやRSAセキュリティなど、米国EMCが買収した大手ソフトウェア・ベンダーの国内展開は今、どのような状況なのでしょうか。

諸星氏:RSAセキュリティの山野修社長には、EMCジャパンのリーダーシップ・チームに入っていただいています。お客様やSIerへの提案で、両社が営業を共にするような動きがすでに始まっています。

 ドキュメンタムについては、組織的にも一緒になっています。CMA(コンテンツ管理&アーカイブ)という事業部門を作り、そこでデマンド・クリエーションを行い、ECM(エンタープライズ・コンテンツ管理)製品に対するニーズがあれば、ドキュメンタムのスペシャリストが一緒に提案に出向くような体制をとっています。

 ECMは特に専門性の高い分野ですから、こうした体制がベストと考えました。今までSymmetrixを売っていた営業が、明日からはDocumentumも売れと言われても難しい。でも、築いてきたお客様との緊密な関係があるので、ニーズがあれば積極的にこたえていこうというわけです。

──米国本社の戦略と同様に、今後、国内においても日本企業の買収を行っていく可能性はありますか。

諸星氏:考えてはいます。本社からも、必要であれば(買収を)進めなさいと言われています。どういう種類の企業がその対象になるのか、基本的な戦略を練っている段階です。今のEMCジャパンに欠けている要素、強化したい要素を持っている企業があれば、買収を検討する可能性は十分にあります。

 ただし、SIerを買収することはないでしょう。当社にとってSIerはあくまでパートナーであって、競合するようなことにはなりません。

──国内でのパートナー戦略についてはいかがでしょう。

諸星氏:やはり相当な強化が必要です。ある面では、パートナーと一緒にやっていかないと市場で生き残れないと思っています。以前のEMCは、大企業のお客様がメインだったこともあり、直販が強かった。直販だけでやっていけた時代が長かったのです。もちろん、直接来て提案してくれというお客様にはこたえますし、バランスをとっていく必要がありますが。

 過去に、富士通やNEC、日立といった大手コンピュータ・ベンダーがコンサルもSIも全部やりますといった感じで大きなシェアを築いていた時代がありました。今では、NTTデータをはじめ、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、大塚商会などSIerの力が強くなってきています。SIerと一緒になってやらないと、今後の市場をリードしていくことはできません。これまでパートナー・プログラムが十分に整えられていなかったので、そこに着手しています。

──諸星社長が率いるEMCジャパンは、今後、どのような企業になっていくのでしょうか。

諸星氏:ITベンダーであるという以前に、日本の社会、文化に根づいた日本の企業として、従業員がここで働きたいと強く思える会社、パートナーからは一緒に仕事をしたいと声をかけていただけるような会社にしていきたいと考えています。その過程で、EMCグループが掲げるビジョンを達成していくことになります。もちろん、ビジョンを達成すること自体がゴールではなく、達成のその先にある会社の繁栄がゴールになります。


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