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[米国]
「クラウド型開発」への移行を企業に促すセールスフォース

オンプレミス開発並みに時間/コストをかけられない企業への貢献を強調

(2008年04月21日)

 SaaS(Software as a Service)がビジネス・モデルとして成功することを証明した米国Salesforce.comは今、クラウド・コンピューティング分野でも先駆者になることを目指しているようだ。Salesforce.comの会長兼CEO、マーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏は、先ごろ行われたイベントにおいて、従来のアプリケーション開発インフラから、クラウド型(開発インフラをサービスとして提供するモデル)のアプリケーション開発を可能にする同社の「Force.com」プラットフォームに移行すべきだと力説した。

 Benioff氏は、Force.comを、米国Microsoftの「Visual Basic」以来の画期的なアプリケーション開発技術と位置づけている。PaaS(Platform as a Service)を指向する新たな動きの広がりを考えると、Benioff氏とSalesforce.comの読みは鋭いと言える(関連記事)。

 Force.comを利用している企業顧客の話では、このSalesforce.comのホスティング型開発プラットフォームは、オンプレミス(自社運用型)ソフトウェア・インフラに多大な時間と費用を投資したくないと考える企業や、予算の制約からそうした投資を行う余裕がない企業の間で人気を呼んでいるという。

 クラウド環境におけるアプリケーションのホスティングおよび開発に対する企業顧客の満足度が高まれば、Force.comは、Microsoftや米国Oracle、米国IBMのような企業が提供する従来型のオンプレミス開発インフラに取って代わる可能性がある。このことは特に中小企業の市場に当てはまる。

 PaaSは先々週、大きな後押しを得た。Salesforce.comと、「Elastic Compute Cloud(EC2)」を手がける米国Amazon.comに続いて、米国Googleも「App Engine」でPaaS分野に参入したからだ。しかし、Amazon.comもGoogleも、企業顧客に特に重点を置いておらず、このことはSalesforce.comの差別化につながっている。Salesforce.comはMicrosoftやIBMと、企業開発者の支持の獲得を競うことになる可能性が高い。

 それでも、Force.comなどのホスティング型プラットフォームでアプリケーション開発を行うことを企業顧客に説得する際にはいくつかの課題があるようだ。米国の調査会社RedMonkのアナリスト、マイケル・コート(Michael Cote)氏は、「経営幹部が既存のIT部門に、コーディングのスキルや、複雑な開発インフラを統合する能力はもう要らないと告げれば、IT部門は居場所を失ったと感じるだろう」と指摘する。「大企業のIT部門は、自社がPaaSを導入したら、自分たちの仕事はどうなるのかと不安になるはずだ」(同氏)

 実際、英国CODA FinancialsのCEO、ジェレミー・ロシュ(Jeremy Roche)氏はこの問題にぶつかったという。同氏はCODAのIT部門に、同社のERPと会計アプリケーションの新バージョンを、Force.comを使って開発する方針を伝えた。CODAのIT部門は前述したような不安を抱いたに違いない。しかしRoche氏は、「われわれの会社にとって、ほかに選択肢はなかった。オンプレミス方式の開発を行うとしたら、インフラ構築のために50人以上の開発者、数百万ドルの費用、2年の開発期間が必要だっただろう。そのようなことは株主に話したくはなかった」と、苦しい胸の内を明かした。

 CODAは一部のJava開発者にForce.comプラットフォームの研修を受けさせた。「開発モデルがJavaと似ているからだ」と、Roche氏は説明する。研修期間は1カ月未満で済み、彼らは約6カ月で「Coda2Go」を完成させた。

 またRoche氏は、Force.comに関する不満点として挙げられているベンダー・ロックイン(ベンダーに囲い込まれること)について次のように語った。「MicrosoftやOracle、SAPのプラットフォームをベースにアプリケーションを開発したとしても、長期的に見れば、そのプラットフォームへのロックインがある程度は発生する。アプリケーションのアップグレードでもベンダーに依存することになるだろう」

 この点について、Force.comを利用する米国Appirioの創業者、ナリンダー・シン(Narinder Singh)氏は、「OracleやSAPの製品を使ったら、囲い込みを免れることはできない」と語る。Appirioは、企業向けにオンデマンド・サービスの利用に関するコンサルティングを行うとともに、「Google Apps」と「Salesforce」を連携させるアプリケーションを提供している(関連記事)。

 ただし、Force.comのようなまだ歴史の浅いプラットフォームでは、新しいアプリケーションはSalesforce.comの営業自動化サービスなどと結合せざるをえないことをSingh氏は認めている。

 「いずれにしても企業は、クラウド環境で自立的にアプリケーションを開発する価値を理解するようになるはずだ。Microsoftのように従来型のアプリケーション開発プラットフォームを提供する企業は、独自のPaaS製品の投入を迫られるだろう」(Singh氏)

 一方、Force.comについてのもう1つの批判に、「(Force.comでは)本質的にプロプライエタリなプラットフォームを使ってアプリケーションを開発することになるため、オンプレミスのJavaや.NETインフラを使う場合のような柔軟性の高い開発ができない」というものがある。

 住宅ローン投資会社Dreambulider InvestmentsのCTO、ジョナサン・スナイダー(Jonathan Snyder)氏は、「確かに、Force.com上でのアプリケーション作成には制約がある」と語る。しかし、社員10人の同社にとっては、同プラットフォームを使うことによる時間とコストの節約は、そうした制約を補って余りあるという。「われわれは小さな会社だ。サーバを買ったり、ゼロから開発を行ったりするリソースはない。その点、Force.comは本当に助かる」(同氏)

 Snyder氏の会社のような中小企業が、Force.comの恩恵を最も受ける、とRedMonkのCote氏は語っている。「Force.comなら、こうした企業でも費用を捻出できる。これはPaaSの非常に建設的な側面の1つだ」(同氏)

 Salesforce.comのBenioff氏は先週行ったプレゼンテーションで、Force.comのようなプラットフォームは、米国の中小企業だけでなく、ソフトウェア開発インフラに多額の投資を行っている開発途上国の企業にも新たな選択肢をもたらすとの認識を示した。

 「これまでのソフトウェア開発は多額の費用がかかり、複雑かつリスキーで、新興国ではあまり役に立っていない。クラウド・コンピューティングは、従来とは異なる選択肢を提供する」(Benioff氏)

 だが、いずれにしても、どれだけの企業がそうした新しいクラウド型の開発環境を選ぶかは、Salesforce.comやGoogleなどのベンダーにとっても、まだ未知数だ。

(Elizabeth Montalbano/IDG News Serviceニューヨーク支局)






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