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【インタビュー】
極寒の地にも「熱問題」あり――南極基地の管理者が語る、マイナス50℃下のITマネジメント

データセンターの構成から過酷な伝統行事まで一問一答

(2008年05月02日)

ヘンリー・マルムグレン(Henry Malmgren)氏、34歳。彼は、米国が南極点付近に建設したアムンゼン・スコット基地で働くITマネジャーだ。冬期は気温が−50℃以下になる南極点の氷床の上で、Malmgren氏はデータセンターをはじめ、衛星回線や電話システム、さらには携帯ラジオに至るまで、電気通信やコンピュータに関するあらゆるものに責任を負っている。そんな同氏に、南極基地での仕事や生活などについて、衛星回線でインタビューした。

Robert L. Mitchell
Computerworld米国版

南極点は少しずつ移動する

──では、さっそくインタビューを始めよう。そちらの天気はどう?

Malmgren氏:とてもいい天気だ。気温は−53℃、風速は秒速3.2mしかない。こちらの基準では文句なしにいい天気だ。

──よく「南極点」と言われるが、正式な点があるのか。

Malmgren氏:もちろんある。南極点には、理髪店の回転看板のようなポールが立っている。アムンゼン・スコット基地のすぐ目の前だ。

──氷床は1年間に約9m動くと言われている。ポールの位置が実際の南極点からずれたりすることはないのか。

Malmgren氏:毎年1月1日に行っているセレモニーの際に、ポールの位置を調整している。米国地質調査所の調査団がここまでやって来て、太陽の位置に基づいて厳密な測量を行う年もあるが、われわれが測量用のGPS(全地球測位システム)を用いて可能なかぎりの精度で測量を行う年もある。

 こうして測量した南極点に新しいポールを立てていくので、これまでにポールを立てた場所を結んでみると、基地から伸びる1本のラインを確認することができる。ポールの位置は年々アムンゼン・スコット基地に近づいてきており、20年以内には発電施設の真下に南極点が位置することになりそうだ(写真1)。

写真1:南極点付近に立つHenry Malmgren氏。手前の南極点ポールは公認のものではなく、測量時の位置を示している
──地球温暖化の影響でそちらの土地が縮小していると報じられているが、実際そうなのか。

Malmgren氏:南極の積氷が縮小し、氷河流動速度が上がっていることは、衛星写真によってはっきりと確認されている。この速度を正確に数値化するには、現地でのさらなる研究が必要だが。

──以前、南極点の公式サイトにあるWebカメラで基地の様子を見たのだが、カメラが下のほうを向いていて建物の最上部が写っていなかった。これは単に調整不足が原因なのか。

Malmgren氏:そうではない。初夏の太陽は基本的に、水平線から昇って沈むのではなく、水平線上を一定の高さでぐるりと回る。そのため、カメラをそのように設置せざるをえなかったのだ。

 年の初めは太陽が非常に低い位置にあり、カメラを建物の方向にまっすぐ向けると、太陽の光によってカメラの虹彩絞りが焼き切れてしまう。太陽が高く昇る今の時期はカメラも上に向けてあるので、建物の全景が写っているはずだ。

──タイムゾーンは通常、グリニッジからの経度上の距離で決まる。すべての経線が1点に収束する南極点では、時間はどのようにして決まるのか。

Malmgren氏:時間は自由に選ぶことができる。われわれの場合、ニュージーランド標準時を使用している。輸送機はすべてニュージーランドから来ており、その予定に合わせるにはニュージーランド標準時を使用するのが最もわかりやすいからだ。

システム全般に直接携われることの喜び

──いったいなぜ、南極で働こうと思ったのか。

Malmgren氏:大学を卒業するまで米国の外に出たことがなかったが、交換留学生として欧州に行っていたガールフレンドがいて、彼女の話を聞くうちに国外で仕事をしたいと思うようになった。

 その後、就職活動中にたまたま南極圏での仕事を見つけ、全米科学財団(NSF)の契約業者である米国Raytheonに入社した。それからは、コロラド州デンバーにあるRaytheonの本社とアムンゼン・スコット南極基地を行き来した。同基地で夏と冬をそれぞれ2回ずつ過ごしたあと、現在の役職であるITマネジャーに就いたのだ。

──基地におけるあなたの役割は何か。

Malmgren氏:わたしの担当領域は、ITの上部構造から衛星、電話システム、携帯ラジオに至るまで非常に多岐にわたっている。要するに、電気通信やコンピュータに関するあらゆるものに責任を負っているということだ。夏の間は7人ほどのスタッフとともに250〜270人の職員をサポートしている。一方、2月中旬から10月中旬までの冬の間は人数が減って、4人だけで60〜70人の職員をサポートする。

──典型的な1日の業務はどのような感じなのか。

Malmgren氏:1日の勤務時間は最短で9時間、休みは週に1日だ。勤務日は、最初の2〜3時間をデンバーの本社から来たメールへの返信に費やし、その後、基地内を回って科学者たちに声をかけ、必要なものはないか、われわれに解決可能な問題は起きていないかを確認する。

 わたしがうれしく思うのは、マネジャーという立場でありながら、基地のシステム全般に直接携われることだ。ここでのわたしは、スポーツ選手のコーチのような存在だと言える。わたし自身は延べ5年間にわたりこの基地のシステムに携わっているが、スタッフのほとんどはここに来るのが初めてだからだ。

──最も多くの時間を占めるのはどのような作業か。

Malmgren氏:このところ最優先事項となっているのは情報セキュリティだ。最新の脆弱性情報を入手し、パッチを適用するといった作業に勤務時間の3分の1程度を費やしている。すでに2年ほど前から、このような状況が続いている。

──南極で働くスタッフを確保するのは簡単なのか。

Malmgren氏:ほとんどの場合、求人には多くの応募がある。わたし自身、4年間応募し続けてようやく採用されたほどだ。ただし、そのときの景気によっては十分に人が集まらないこともある。

 例えば今は、イラクやアフガニスタンの請負業者との間で衛星通信員を奪い合っている状況だ。こうした請負業者は、われわれよりはるかに高い給与を支払うことができる。むろん、イラクやアフガニスタンとは違い、こちらには「銃で撃たれることを心配せずに済む」という強みがあるのだが。

──南極ならではのマネジメント上の苦労を教えてほしい。
写真2:こちらは公認の南極点ポール(中央右の赤と白のまだら模様)。各国の国旗で囲まれている。後方はアムンゼン・スコット南極基地

Malmgren氏:補給物資を計画どおりに受け取るためには、1年半前に計画を立て、すべて発注しておかなければならず、これが遅れたら大変なことになる。この基地への補給物資は輸送機で送られてくるのだが、その輸送機はマクマード基地を経由してやって来る。そしてマクマード基地への補給物資は、貨物船で1年に一度輸送されてくるだけなのだ。

 また南極での業務は、肉体的にも厳しいものがある。基地が海抜3,650mの高地にあるため空気が薄く、多くの人が到着してすぐ体調を崩してしまう。

 わたし自身は、寒さや高度といった環境的な問題、新鮮な食べ物や野菜が少ないといった問題を除けば、南極ではないどこか普通の場所にいるような気分になることもある。でも、窓の外に目を向ければ、基地のすぐ目の前に南極点のポールが見える(写真2)。そんなとき、わたしは世の中で最高の仕事に就いているのだということを実感する。


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