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[欧州]
EUの知的財産権行使指令案、欧州議会が妥協案を可決

(2004年03月10日)

 欧州議会は3月9日、フランスのストラスブールで開かれた本会議の票決で、ソフトウェア、レコード音楽、特許発明技術などの著作物の偽造や不正コピーと闘うための知的財産権行使指令案の妥協バージョンを承認した。欧州議会が承認した案では、インターネット上で音楽ファイルを交換する個人に対する刑事制裁などが排除されている。

 この承認案は3月11日にベルギーのブリュッセルで開かれる、欧州連合(EU)加盟諸国の政府代表の会議に提出され、承認を受けるはこびになっている。すでに9日の欧州議会の票決以前の段階で、各国政府は欧州議会および欧州委員会と合意に達しているため、11日の段階で何か変更が加えられることはまずない。新指令が成立したら、EU加盟諸国15カ国は、18カ月〜2年以内に同指令を自国の国内法に反映させることになる。

 著作権侵害防止のための新しいEUの指令案を批判していた人々も支持していた人々も、欧州議会がこの妥協バージョンの知的財産権行使指令案を承認したことに対して落胆を示している。

 消費者団体や市民権運動家たちは、著作権保護の法律は本来、海賊版CD、高級品の模造品、偽薬などの行商人を止めさせるためのものだったが、はるかに広範に適用されるものに変えられてしまったと述べており、新しいEU指令は、他人が作成した物をコピーして金を儲ける者だけでなく、インターネットから音楽とコピーする個人を弾圧するのに利用されるだろう、と主張している。

 一方、レコード会社やソフトウェア・メーカーなどの知的財産権(IP)の所有者たちは、この新指令は正しい方法への一歩だが、期待していたものにはほど遠いとしている。ビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA)のブリュッセル・オフィスの公共政策担当ディレクター、フランシス・ミンゴランス氏は「権利者たちはそれに不満だが、それは中途半端な解決として受け入れられる」と語る。権利者たちは、EUの行政執行機関である欧州委員会に対して、あらゆる種類のIP侵害を刑罰対象とする、より厳しい別の法案を推進するよう働き掛けてきた。

 フランスのストラスブールで開かれた欧州議会の本会議で議員(MEP)の過半数が支持した妥協案は、一部議員が望んでいたほど厳格なものではなかった。個人による小規模なIP侵害行為を犯罪とする試みは却下された。また、権利者がIP侵害容疑者の銀行情報やコンピュータ情報を要求できるのは、重大事件の場合だけに限定され、容疑者の家宅捜索には、「管轄権を有する司法当局」が署名している裁判所命令が必要とされた。もっと簡単に権利者が容疑者の家宅捜索を行えるようにすることを望んだMEPもいた。

 一方、インターネット上の市民の権利のために闘うグループ「European Digital Rights」のEU問題担当ディレクター、アンドレアス・ディートル氏は、「この法案では、管轄権を有する司法当局」が裁判所書記官でも構わないので不適切だ。我々は、そのような裁判所命令には裁判官が署名しなければならないと法律に明記させたかった」と述べている。

 しかし、自社のインターネット接続サービスの契約者についての情報開示を強制されることに反対していた通信会社は、この妥協文言は受け入れられるとしている。「この指令が全体として、欧州の政策立案者たちが目指しているIPR (知的財産権)行使への整合調和したアプローチを生み出すかどうかについては我々は疑問を抱いているが、少なくとも現在は、我々の業界セクターと我々の顧客にとって不可欠な一連の保護条項が用意されていることがわかる」と、欧州の旧国営系独占電話通信会社からなる通信業界団体「ETNO: European Telecommunications Network Operators' Association」のマイケル・バーソロミュー事務局長は語っている。

 EU加盟国の著作権侵害防止のための国内法の間に整合性を持たせることを目的として、欧州委員会は4年前にこのEU指令案を起草し始めた。偽造行為や海賊行為(不正コピー)の流れを食い止めるためには、欧州全体に共通の法律が不可欠だ、とそれに取り組んでいる欧州委のフリッツ・ボルケスタイン域内市場担当委員は昨年のインタビューで述べた。

 欧州委によると、1998年〜2001年の偽造および海賊行為による経済生産の損失は、年間約80億ユーロ(約99億米国ドル)にのぼっている。また、BSAによると、欧州で昨年(2003年)に購入されたコンピュータ・ソフトウェア全体の約35%が不正コピーされた。5月にEUに加わる中欧と東欧の諸国では、この問題はさらに深刻な可能性がある。マイクロソフトは、それらの地域で使われているコンピュータ・ソフトウェア全体の65%が不正コピーであると推計している。

 偽造・海賊行為の多くは国境にまたがっているため、それらの問題と闘うために汎欧州の法律が必要だと言う考え方は広く受け入れられている。しかし、クリフォード・チャンス法律事務所ブリュッセル・オフィスのパートナー(弁護士・共同経営者)でIP法に詳しいトーマス・ビニエ氏によると、欧州議会が支持した妥協案は最低基準を定めているだけであって、EU全体にわたる整合調和したアプローチを示すものではない。

 英国やイタリアを含む一部の国の法律は厳しすぎて「権利者によって濫用されがち」(ビニエ氏)であり、EU全体のルールを整合調和させるためには、それらを緩和させる必要がある。

 「知的財産(IP)の保護の問題は、一般に主張され信じられているほど白黒の区別が明確ではない。汎欧州の法律は、権利者が可能ならば競争上優位に立とうとしてIP法を濫用するという事実を考慮に入れたものにする必要がある。欧州議会が承認した法案にはそれが欠けている」とビニエ氏は指摘する。

 5月にEUに新規加盟する10カ国は、このEU指令案の策定にはほとんど関わっていない。この指令案は、複雑な法案であるにもかかわらず、異例の速さで策定と検討が進められてきた。このような法案では一般的な手続きである欧州議会での2度めの検討は今回実施されず、EU加盟国が増える5月1日よりも前に成立する見通しである。

 9日の欧州議会での票決前に、既存加盟諸国の各国政府が欧州議会および欧州委員会とともに妥協案を完成させたため、2度目の検討は不要になった。「元共産主義圏の中欧諸国にとっては、これは民主主義についての奇妙な経験だろう」とビニエ氏は述べている。

(IDG News Service)






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