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【連載】
韓国の電子自治体事情
第1回 u-Koreaの社会経済的基盤と推進段階
(2006年03月24日)
情報化の進展は韓国社会を大きく変革させた。しかし、国内景気の悪化とともに産業界の国際技術力に優位性がなくなり、このことが国家的規模でのユビキタス戦略を推進する新たなプロジェクトを生み出す要因となった。1回目の今回は、韓国政府が掲げるIT戦略「u-Korea」の社会経済的基盤と推進段階について考察する。
高 選圭
韓国 中央選挙管理委員会 選挙研修院 教授
情報科学博士
1990年代以降に見られる韓国社会の急速な情報化の進展は、国民生活と経済に大きな影響をもたらした。韓国のインターネット利用人口は、2004年には3,000万人(総人口は約4,600万人:2000年現在)を突破し、ブロードバンド回線の加入利用者は1,110万人、全国の1,430万世帯の70%以上に普及した。
このように、インフラの整備とインターネット利用者の増加によって、2002年11月からは本格的に電子政府サービスが提供されている。2003年9月には行政サービスのインターネット交付が始まり、パソコンから各種証明書の出力も可能となった。
2004年からは住民票・建築物台帳・印鑑証明・戸籍謄本などのインターネット上での申請・交付が可能となった。更に、住民・戸籍・国税にかかわる業務の電子化により行政機関に許認可などの申請を行う際に必要だった20種類の添付書類が廃止された。
現在では納税者の24%が電子申告・納付・証明書の発給を受けており、公共事業の入札では91.4%、調達は97%が電子化されている。また、国民年金・産災保険・健康保険・雇用保険の連携システムが構築されたうえ、市町村行政総合情報システムの構築・稼働は、住民票・車輛・戸籍などのワン・ストップ・サービスを可能としている。
行政分野以外では、オンライン株式取引は金額ベースで現在世界一であり、オンライン・ショッピング利用率は世界2位という調査結果が出ている。インターネット・バンキングの利用者は2004年には2,581万人に達し、モバイル・バンキングでも毎月約500万件の取り引きが行われている。実に、オンライン取引が国内の全金融機関における営業支店の取引割合を超えているのである。
新しい経済成長の突破口として
韓国でのITの進展は産業の分野にも大きな影響を与えている。1997年のIMF経済危機以後、IT産業のGDP成長寄与率は43.1%を占め、国家経済危機の克服に大きく貢献した。IT産業は韓国GDPの15.6%(2003年)、IT産業の輸出は全体輸出の28.5%を占め、さらに貿易黒字の71%をIT産業が占めている。
このような韓国社会のITの進展と国民生活への利活用の拡大は、より高度なIT社会とサービスを求める社会的基盤となっている。そのうえで韓国政府は、ITを活用した経済成長、国民の政治参加・生活向上を実現するために、さらなる情報化政策を打ち出している。
また、経済の面では韓国が国際競争力を持っている半導体、移動電話端末機、パソコン、ディスプレイなどの国際的な技術格差は縮小しつつある。国内状況を見ても、最近の景気沈滞は深刻になってきており、新しい経済成長の突破口を作らなければいけない状況だ。また、少子高齢化に対応する社会福祉、労働力問題、産業資源の不足、開発対環境保存を巡る問題は国家的課題となっている。
こうした状況を踏まえて、韓国政府は国内経済成長の突破口としてIT839戦略(本誌2004年12月号参照)を打ち出し、新しい経済成長の原動力にしようとしている。u-Koreaでは、産業資源の効率的管理と生産過程の無人化などにより生産性を高め、より質の高い福祉の提供を目指す。
その結果、国民所得2万ドルと知能基盤社会が実現し、健康で安全なIT社会、すなわちユビキタス社会の到来となるのだ。更には、公共機関が提供するサービスでも世界一となるユビキタス社会を目指している。
| u-Korea社会の目標と戦略 |
知能基盤社会の実現は3段階で
u-Korea戦略で想定している知能基盤社会は大きく3つの段階を経て実現される。
まず、第1段階(Person to Person:2007年まで)は、ユビキタス社会が始まる段階であり、いつ、どこからでも有無線のBcN(Broadband convergence Network)ネットワークでつながるモバイル機器・デジタルTVなどを使ってだれでもサービスの提供が受けられる段階である。
第2段階(Person to Thing:2012年まで)は、ユビキタス社会の発展段階であり、主な施設と建築物にICセンサーを付け、それをネットワーク化して遠隔制御できる段階である。
第3段階(Thing to Thing:2013年から)はユビキタス社会の成熟段階となる。ネットワーク化されたICセンサー間の相互認識が可能となり、それを基にさまざまなサービスを提供できるユビキタス社会が実現される。ユビキタス社会になれば、ITの利便性が普遍化され、国民生活も大きく革新される。
韓国政府はこの3つの段階に合わせて、2007年までに有無線統合および通信放送融合サービス、BcN 50Mbps、RFID融合化などを計画している。また2012年までにはIPv6への転換、RFID知能化、BcN 100Mbps、国民所得2万ドルの実現という具体的な戦略を掲げている。
このu-Koreaを推進するにあたっては、産学官の連携と政府と民間の役割分担、そして効率的な推進組織の整備が必須だと考えている。
| u-Koreaの発展段階と提供サービス
|
<著者プロフィール>
高 選圭(ゴ・ソンギュ)
1966年生まれ。2000年東北大学大学院修了、情報科学博士。韓国世宗研究所研究委員、檀国大学講師、ソウル市市策電子政府研究所 首席研究員兼企画部長を経て、韓国中央選挙管理委員会選挙研修院 教授。国際大学GLOCOMフェロー、ハイパーネットワーク社会研究所共同研究員。著書は「日本の電子政府・電子投票」「日本の電子政府推進と個人情報保護」「韓国の電子政府構築と市民満足度」ほか多数。
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