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【連載】
関西圏における自治体広域連携

第6回 引っ越しのワンストップ化を実現する「関西引越し手続きサービス」

(2006年06月02日)

引っ越しをするとさまざまな変更手続きが必要になるが忙しさのあまり、届出を忘れてしまうこともある。こうしたわずらわしさを解消してくれるのが関西手続きワンストップ協議会が始めた「関西引越し手続きサービス」である。

中野 潔
大阪市立大学 創造都市研究科 都市情報学専攻 教授 
大阪安全・安心まちづくり支援 ICT活用協議会 副会長

 関西手続きワンストップ協議会は平成17年1月末、「関西引越し手続きサービス」を開始した。同サービスは、引っ越しを予定している利用者が現住所や氏名、電話番号、電子メールアドレス、引っ越し先の住所などを入力し、公共サービス事業会社やクレジットカード会社、運送会社、通信販売会社、新聞社など、移転情報を伝えたい企業を選択リストから選択すると、それをきっかけに住所変更手続きなどが開始されるというもの。これにより、上記のような基本情報を、利用者が何度も繰り返して届け出るという煩わしい作業が不要になる。

 関西手続きワンストップ協議会は、平成16年12月に設立された。図1の組織図は、平成17年春時点の同協議会の組織図から筆者が抜粋して作ったものである。総会や有識者や有力財界人による会長、副会長などの記述を省いた。この図に登場する企業のすべてが、引っ越し手続きの選択リストに登場するわけではないが、この顔ぶれを見れば、選択リストの内容の想像がつくだろう。


図1:関西ワンストップ協議会の組織概念図(抜粋)

参加企業の事情に合わせ3つのパターンを用意

 図2は、引っ越し手続きにおける情報の流れを示したものである。手続きを出す対象組織のシステム構成によって、3つのパターンが用意されており、どのパターンにおいても利用者は「関西引越し手続きサービス」のWebサイト(以下、ワンストップウェブ)にアクセスして、基本情報を入力する必要がある。

 基本情報とは、図2に列挙した項目である。加えて、手続きの対象となる組織を選択する。なお、選択しなかった組織には利用者の基本情報は渡されない。


図2:「引越し手続きサービス」の情報の流れ

 ワンストップウェブにおける3つのパターンのうち、Webサイト連携型では連携のために対象組織の受付サイトを新規に構築したり、修正したりする必要がある。大規模な公共サービス事業会社が、この型を選ぶ例が多いようである。仕組みは次のようなイメージになる。まず、ワンストップウェブから対象組織の受付サイトに飛ぶ。受付画面には、基本情報が既に入力されているから、利用者はその組織特有の情報、例えば、電力会社やガス会社の顧客識別記号、閉栓時刻などを入力すればよい。

 2つ目の電子メール連携型の場合、データベース化された受付システムがなくても、あるいはデータベース化されているが電話で受け付けるのを基本としているものでも、対応しやすい。この方法では、利用者が電子メールの送信について承認すると、利用者の基本情報を載せたメールが対象組織に届く。それに対しての返信が利用者に来るので、その指示に従って手続きを進めることになる。

 3つ目の申請書郵送・提出型は、システム化をしていない組織や最終的に書面が必要な組織に向いている。この方法では、利用者が基本情報を含む申請書データをダウンロードし、印刷する。そして、利用者が持参したり郵送したりすることで手続きをする。

 いずれの型においても、対象組織に基本情報を渡すと、ワンストップウェブの役割は終わる。後は利用者と対象組織とのやり取りにまかされる。このため、ワンストップウェブのサーバー内には、利用者の個人情報を残さない。この設計思想は、個人情報保護の意識が高まった現在、Webの運営の簡易化に大きく貢献している。

創業ナビでの経験を活かしワンストップ化を実現

 規制緩和に伴い、エネルギーや通信の分野で競い合っている公共サービス事業会社が手を組むのは、従来、難しいと思われてきた。しかし、電話や電力、ガスが加わらなければ、引っ越しのワンストップなどと称しても掛け声倒れとなってしまう。

 関西でこのサービスを最初に大々的に始めることができた背景には、平成15年秋にスタートした会社設立手続きワンストップポータル「創業ナビ」での経験がある。創業ナビは、最終的に全国に展開されたシステムだが、最初の開発と実証実験は、大阪産業創造館や関西の官民連携、民間コミュニティーの結束の下で実行された。

 公共サービス事業会社と言えば大企業だが、関西経済連合会などの経済団体のまとまりがよく、官民連携の関西広域連携協議会のような横断的な組織が効果的に機能しているのである。

 ワンストップウェブにうまく結集できた大きな理由の1つがこれである。また、創業ナビの開発の際、GPP-Webリンクというアプリケーション・システム向けに、Web間連携のための利用しやすいプロトコルを開発していたことも大きかった。今回のワンストップでも、Webサイト連携型ではこれを採用している。

水道を対象とするには自治体の対応がカギとなる

 「関西引越し手続きサービス」の今後であるが、まず、通販会社や新聞社などの参加企業を増やしていくこと、そして水道の対応や郵便の転送依頼対応などに、注目が集まることになろう。

 水道の場合、各市町村が事業主であり、それぞれの利用者システムのレベルに大きな差がある。Webサイト連携型にするには、システムの変更が必要になるが、予算規模の小さい自治体ではそれが負担になる可能性がある。

 郵便の場合、成り済ましをどう防ぐかが課題になる。電力やガスの場合は顧客番号で管理され、また現場での確認処理が入るため、成り済ましを行ってもあまり旨みがない。ところが郵便の場合、重要な通知を転送させる届けを顔を見られずに出せるなど、不正に使われる可能性があり、その影響が甚大になりうる。この危険性は自治体の転入、転出届けでも同様に存在する。

 そうした課題はあるとしても、ワンストップウェブのメリットは大きい。全国で関西に続く地域が出てくるのではないだろうか。

(月刊e・Gov 2005年10月号より)





関西圏における自治体広域連携
第1回 大阪の防犯運動と情報通信システム(1)
第2回 大阪の防犯運動と情報通信システム(2)
第3回 豊中市の「安全安心情報ネットワーク」実証実験
第4回 関西発のセキュリティ関連ツール「PALne/PS」
第5回 池田市発の安心・安全対策「ANSINメールシステム」
第6回 引っ越しのワンストップ化を実現する「関西引越し手続きサービス」
第7回 データ放送を用いたライブカメラ画像配信システム
第8回 非接触ICカードの非常時における活用方法
第9回 非接触ICカードによる所在確認システムは十億円前後か
第10回 電子自治体進展度調査と関西情報化実態調査
第11回 創造都市と物報惣複合体

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