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【連載】
韓国の電子自治体事情
第13回 慶尚南道 晋州(チンジュ)市 モバイル電子自治体の構築
(2006年09月01日)
韓国では政府、自治体が一体となりユビキタス社会への進展を図っている。電子自治体の充実が図られる一方で更なる住民の利便性を向上させるべく晋州市では携帯電話とPDAといったモバイル機器対応の電子自治体化を図っている。
高 選圭
韓国 中央選挙管理委員会 選挙研修院 教授
情報科学博士
ユビキタス基盤によるモバイル対応の電子自治体へ
| 日本語にも対応している晋州市のWebサイト(http://www.jinju.go.kr/jap/) |
韓国南東部に位置する慶尚南道(キョンサンナムド) 晋州(チンジュ)市は、都市と農村が複合する人口34万人のまちである。釜山広域市から程近く、慶尚道と全羅道(チョルラド)地域を結ぶ交通の中心地として、経済、文化も昔から栄えている。
晋州市は、u-Korea構築に伴い、ユビキタス社会のへの対応とユビキタス基盤に基づいた地域の情報化事業の一環として、モバイル電子自治体の構築を目指してきた。
その結果、生活、行政、災害、福祉といった情報を24時間365日いつでもどこからでもアクセスできるモバイル情報システムが完成し、2005年11月からさまざまなサービスの提供を開始している。
ちなみに、晋州市のユビキタス・インフラの構築とサービスの提供は、2005年の韓国における自治体の情報化ランキングにおいて、インフラ整備部門でベスト5に選出されている。
いつでもどこでもアクセス可能なモバイル用のWebサイトを構築
2005年度のOECD電子政府報告書「よりよい政府のための電子政府(2005 E-Government for Better Government)」では、住民に対するサービスの拡大と利用者のアクセス手段の多様化が強調されており、韓国ではユビキタス基盤を基にした電子自治体の構築が非常に重要なことだと認識されている。
特に、災害、福祉、経済、生活情報のモバイル媒体への提供は、住民の安全な生活と地域の競争力強化にも役立つとされる。
晋州市は、これらを実現するため、モバイル用のWebサイトを構築し、電子申請、市民参加、観光・生活情報を携帯電話と携帯情報端末(PDA)ユーザー向けに提供している。市政や入札情報などにもアクセスできるため、住民からの評価が非常に高いという。
更に、市民の生活不便要因となる環境汚染、交通問題、不良飲食品、予算の無駄遣い、不親切な公務員といったことを携帯電話やPDAから市役所へ申告できる。市役所の業務担当者と相談や連絡をしたい場合は、モバイル用のWebサイトにアクセスし、その部署を検索すると自動的に電話がつながるシステムになっている。
また、行政情報、観光地、飲食、宿泊施設、特産品情報などをデータベース化しており、これらをモバイル・ユーザー向けにも提供している。
住民意見を積極的に施策へ反映
住民ボランティア活動の支援も
晋州市で展開されているオンライン市民参加では、市政のさまざまな分野に展開されており、政策討論はもちろんのこと、予算編成に対しても住民が直接意見を述べることが可能だ。晋州市は、住民の生活環境の改善と福祉を充実させるため、住民から事業提案を積極的に施策へ反映させている。これまでに、自転車道路の建設、晋州城の復元など50以上の住民提案があり、その一部は実現している。
電子自治体サービスでは、電子申請、電子告知、電子納税、許認可手続のオンライン化とそのプロセスのインターネット公開が実現しており、モバイル用のWebサイトでも同様のサービスが提供されている。更に、住民らで利用できるサイバー・コミュニティが設けられており、行政に対する意見交換と住民同士の情報共有が頻繁に行われている。その中には、日本語と日本の文化に関心を持っている住民同士が運営している「友達」というコミュニティもある。なお、住民が自らのホームページを構築したい場合、晋州市ではそれを支援するシステムも運営している。
晋州市では、電子自治体の構築に伴って、地域内のボランティア活動が非常に活性化している。市のホームページ上では、ボランティア活動を支える総合管理システムがあり、同システムを通じて参加者と需要者間の情報交換が行われている。ボランティアの申請と需要状況が公開されており、高齢者介護や災害復旧など、18分野の活動内容をデータベース化している。
増加するモバイル・サイトの
観光客向け情報の充実にも期待
モバイル用のWebサイトのアクセス方法だが、携帯電話の場合は、ホットキー(Hotkey)方式、URL入力方式がある。ホットキー(Hotkey)方式は、ホットキーを利用して晋州市モバイル住所(WINC:54658#1)を入力してから接続ボタンを押すとアクセスできる。
URL入力方式からアクセスする場合、URL(http://m.jinju.go.kr)を直接入力し、移動通信社のポータルサイトへ接続してWINCメニューで「54658#1」と入力する。PDAでは、無線インターネットへ接続できる環境を用意し、インターネット・ブラウザから晋州市のURL(http://pda.jinju.go.kr)を入力する。これにより、モバイル用のWebサイトにつながる。
晋州市モバイル用Webサイトの1日あたりのアクセス数は、携帯電話が530件、PDAが130件程度である。サービス開始から間もないため、アクセスは多くはないが日々増加しているという。電子自治体がモバイルに対応することで期待されるのは、住民の利便性増加、行政内部の統合化とデータベース化による効率化、それから充実した最新の情報を観光客に提供することであろう。
| 晋州市のモバイル用Webサイトの説明。携帯電話やPDAでも、パソコンと同様のサービスが享受できる |
<著者プロフィール>
高 選圭(ゴ・ソンギュ)
1966年生まれ。2000年東北大学大学院修了、情報科学博士。韓国世宗研究所研究委員、檀国大学講師、ソウル市市策電子政府研究所 首席研究員兼企画部長を経て、韓国中央選挙管理委員会選挙研修院 教授。国際大学GLOCOMフェロー、ハイパーネットワーク社会研究所共同研究員。著書は「日本の電子政府・電子投票」「日本の電子政府推進と個人情報保護」「韓国の電子政府構築と市民満足度」ほか多数。
- 韓国の電子自治体事情
- 第1回 u-Koreaの社会経済的基盤と推進段階
- 第2回 u-Koreaの中核を担う「USN」と「BcN」
- 第3回 u-Koreaのネットワークを支える「IPv6」
- 第4回 ホーム・ネットワークとユビキタス都市(u-City)
- 第5回 u-Koreaの未来像──ITに基づく新しい知能基盤福祉社会とその課題
- 第6回 ソウル特別市 江南区──世界一の電子自治体・電子民主主義を目指す
- 第7回 ソウル特別市 地方税インターネット納付システム──生活密着型電子自治体の構築
- 第8回 釜山広域市 道路掘削インターネット申請システム──市民中心のデジタル先端都市へ
- 第9回 全羅南道 順天市 サイバー教育システム
- 第10回 慶尚北道 音声支援情報システム──韓国一の教育都市を目指す
- 第11回 ソウル特別市 端草区──GIS地域情報検索システム「生活ネット」
- 第12回 サイバー観光文化情報システム(三多館)──済州道 済州(チェジュ)島
- 第13回 慶尚南道 晋州(チンジュ)市 モバイル電子自治体の構築
- 第14回 韓国の事例から見えてくる電子自治体の今後の課題


