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[英国]
英国政府、IDカード・データベースの構築方針を大転換
(2006年12月26日)
英国政府は、IDカード用に単独のデータベースを構築・運用するとして注目されていた計画について、従来の方針を転換することを明らかにした。
英国政府はこのほど、「National Identity Register(NIR)」と呼ばれる大規模な国民識別情報登録データベースを単独運用するのではなく、既存の3つのシステムに分散させて運用することに決定したと発表した。ジョン・リード内相は、今回の決定は「理にかなった」ものであり、「政策の後退」を意味するものではないと強調している。
NIR計画の方針転換は、今後10年間で54億ポンド(106億ドル)かかると見積もられていた同計画の費用を削減するために不可欠な措置であったという。運用費の一部は、IDカードを使用する国民が支払う料金でまかなわれるほか、コスト削減の一環として、虹彩スキャン・データの利用も中止されることになった。これにより、認証に利用される生体情報は、指紋および顔スキャン・データの2種類となる。
英国内務省の戦略的行動計画には、「NIRは、国民の個人情報を安全に記録し、管理するシステムであり、他の行政システムと連携して個人情報を共有し、身分確認業務に使用する」と記されていた。
NIRでは、生体認証データ、経歴データ、管理用データという3種類の情報を扱うが、これらの情報は今後、3つの個別のサブシステムで管理されることになる。内務省は、「セキュリティを確保するという観点からも、既存システムの長所を生かすという観点からも、情報を分散することには大きな意義がある」と力説している。
まず、生体認証データは、当面の間、亡命者の保護やバイオメトリック・ビザの発行などに使用される既存の生体認証システム内に保管される予定だ。もっとも、英国政府は2010年に「NIRの本稼働が始まり次第、新たな生体認証サービスへ移行する」と説明しており、現行の体制のまま運用が続けられるわけではない。
また、英国労働厚生省(DWP)の利用者情報システム(Customer Information System:CIS)が保有する経歴情報については、「技術的な実用のめどが完全に立ったうえで運用を開始する。DWPのCIS技術は、国民保険番号を持つすべての英国市民の記録を管理するのに、すでに使用されている」という。
IDカードおよびパスポートなどの利用状況に関する管理用データは、公開鍵基盤(Public Key Infrastructure:PKI)情報とも呼ばれている。同データは、現在は毎年600万通の電子パスポートを発行するID旅券局(Identity and Passport Service:IPS)のシステムが管理することになっている。
とはいえ、今回の運用方針の変更は、計画全体の信頼性を向上させるのにはあまり役立っていないのが実情だ。
上記の3つのシステムのうち、生体認証システムは急場しのぎの不十分なものであることがすでに判明しており、経歴情報の利用については技術的に実現できるかどうかすらわからない。また、電子パスポート・システムについても、IDカード情報の容量を考えるとキャパシティの拡張が不可欠である。
さらに、これらのシステムに保管されているほかのデータとNIRデータを明確に隔てる策も講じる必要がある。
もともと連携するようには設計されていない3つのシステムを使って、完全な情報を搭載したIDカードを運用し、万全のセキュリティ確認体制を整えるのというのは、きわめて困難な取り組みである。
IDカードを照合するスピードも、こうしたサブシステムのパフォーマンス特性によって大きな影響を受ける。また、生体認証情報の格納に使用するシステムが応急的なものであることから、しばらくの間は同データのチェックに時間がかかってしまう可能性が高いと予想される。将来的には新たなバイオメトリックITシステムが登場すると言われているが、皮肉にもこれ自体が不安要素の1つとなっている。
内務省は、「生体認証技術においては、いわゆる『誤一致』や『不一致』が数%の確率で現れるため、データの照合が正しく行われていることを、専門家が手作業で確認する必要が生じる」と説明している。
しかし、わずか数%と言っても、IDカードの発行数からすると、実際には年間数千件の誤りが出ることになる。これを人間がチェックするには、膨大なリソース──すなわちコストがかかるわけだが、予算には限りがある。
同計画を進めるにあたって、政府は2007年4月ごろからおよそ12カ月間にわたって、5〜10件の技術を買い上げる予定だ。最初のIDカードは2009年中に発行され、翌2010年から本格運用が開始される見込みとされている。
(クリス・メラー/Techworld オンライン英国版)
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