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【インタビュー】
「ノー・カスタマイズ・モデルを貫き、アジアを代表するERPパッケージ・ベンダーを目指す」

牧野CEO、大手企業向けパッケージで成功を収めたワークスアプリケーションズの「次の10年」を語る

(2007年07月13日)

ERPパッケージ・ソフトウェア「COMPANY」の開発元であるワークスアプリケーションズ。ユーザーが求める機能をすべて製品に取り込むノー・カスタマイズ・モデルを追求して業績を伸ばし、創業5年目にして、国内大手企業向けHR(人事・給与)アプリケーション市場において、海外の有力ベンダーを押しのけてシェア1位を獲得。財務・会計アプリケーションなどもラインアップに加わったCOMPANYは、多数の大手企業から支持される国産ERPパッケージとして存在感を示している。編集部は今年3月、同社代表取締役最高経営責任者の牧野正幸氏にインタビューし、COMPANYの成功の軌跡と、創業11年目に入った同社の「次の10年」について聞いた。

聞き手・構成 河原 潤
本誌編集長

──ワークスを創業したときの経緯を聞かせてください。

牧野氏:国内ベンダーでは不可能と言われていた大企業向け業務パッケージ・ソフトを開発するために、1996年に創業しました。

 きっかけの1つに、IBM社外コンサルタント時代の業務経験があります。IBMが大企業の情報投資のROIを測定するプロジェクトを日本で担当しました。その結果、欧米の大企業はどこも投資を回収できることがわかったのですが、日本の大企業に関しては、総じてROIがマイナスになってしまったのです。原因を調べてみると、日本企業の場合、人事や財務、資金管理、物流といった1業務当たりのシステム・コストが欧米に比べて断トツに高いことが判明しました。欧米平均の実に3〜4倍でした。

国産業務パッケージが出てこなければ日本の競争力が低下していく

──この差はどこからきたのでしょう。

牧野氏:パッケージ・ソフトの普及率です。欧米では当時より基幹業務でパッケージを使うのが当たり前になっていて、オーダーメードで構築するのは、競合を出し抜くような先端領域のみに限られていました。ところが日本では事情がまったく異なり、業務パッケージを使うのは中小企業だけ。大企業は皆、ベンダーやSIerに莫大な額を支払って、オーダーメード・アプリケーションを発注していたのです。

 これではROIが出るわけがない。早晩、大企業向けの国産業務パッケージが出てこないと、日本の競争力がどんどん低下していくと危機感を募らせました。このときすでに欧州ではSAP、北米ではピープルソフトのERPパッケージが普及していました。ただSAPは米国市場で苦戦を強いられ、ピープルソフトも北米以外ではさっぱりでした。この製品分野は、その国の文化・商慣習の違いに大きく左右されるからです。両社がとった戦略は、対象市場のユーザー・ニーズをとことん吸収し、製品を基本的にノー・カスタマイズで使ってもらうというものでした。それを見て私は、彼らと同じようなパッケージ・ベンダーが日本でも出てくるべきだという思いを強くし、行動を起こすことにしました。

──SIビジネス全盛の時代に、その構想は日本の大企業に受け入れられたのでしょうか。

牧野氏:もちろん、目の前には高い高いハードルが立ちはだかっていました。例えば、SAPはERPパッケージを提供するのに、典型的な欧州企業が必要とする規模の10倍の規模のモジュールをそろえていました。それを一からやろうとしたら、大量の優秀な人材と途方もない額の資金が必要になりますが、どちらも集められるわけがありません。

 加えて、企業の情報戦略のトップに就く人々のスタンスの問題も大きかった。欧米ではある程度のROIが見込めていたので、勝負をかけて出世しようといった野心的なCIOが結構いました。一方、日本では頓挫してマイナスになる可能性のほうがきわめて高く、仮に成功したとしてもほめられる程度ですから、そんなリスクをとるCIOはどこにもいませんでした。

 そもそも当時の日本の大企業は総じて保守的で、IBMや富士通、日立、NECといった最大手ベンダー以外と組むことはまれでした。まして、一介のベンチャーが開発したパッケージ・ソフトを自社の基幹システムとして、使おうなんて、だれも考えもしません。

 私自身、最初からERPパッケージを自前で開発し、提供できるとは思っていませんでした。そこで、大手ITベンダー各社に、わが国独自の大企業向けパッケージがいかに必要かという話をして回ることにしました。コンサルティングの立場から構想を実現していこうと考えたのです。コスト削減はもちろん、社会貢献につながる話なので、乗ってくれる企業は少なくありませんでした。しかし、結局のところ、各社とも二の足を踏んで実現には至りませんでした。当時はSIビジネス花盛りでどこも人手不足。そんな状況で成功するかどうかもわからないパッケージ・ソフトの開発に、人と資金をつぎ込むことなんて到底できない、という判断です。

 構想がこのまま立ち消えになってしまっては、日本のタメにならない。ならばみずからの手でやるしかない。ある種開き直ってワークスを立ち上げ、「COMPANY」が生まれました。最初からシビアな戦いになることは目に見えていましたが、ともあれ、はじめの一歩を踏み出したわけです。

コスト・ロイヤルティーの高いCIOがパッケージを選んでいった

──その後、COMPANYは正に右肩上がりで市場シェアを伸ばしていきます。パッケージ・ソフトに対する日本の大企業の意識も徐々に変わっていったのでしょうか。

牧野氏:顧客が数社のうちは、まだ懐疑的に見られていました。でも、ちょうど景気にかげりが差してきた時期でもあり、ITコストを大幅に削減しないと生き残れないと危機意識を高める企業も多く現れてきて、これが当社にとっては追い風になりました。

 大企業の意識は大きく変わり始めていて、特にCIOに就任したばかり人や現業部門の人から、「基幹システムの構築は、こんなにコストをかけるものではないはずだ」との声が聞かれるようになってきました。そうしたコスト・ロイヤルティーの高い人々にCOMPANYは認められ、大きな成長を遂げることになったのです。

──実績を積み、いよいよ海外の有力パッケージの日本版との直接対決を迎えるわけですが、どのような強みをもって市場競争に臨んだのですか。

牧野氏:最大の強みはやはり、純国産パッケージとして、日本企業の法制度や商習慣に完全対応している点です。海外製パッケージの日本版も法制度への対応などはなされていますが、バージョンアップは当然、本国で行われます。彼らはバージョンアップのたびに日本版を作り直している状態で、これでは機能やノウハウなどの細部が製品に蓄積されていきません。

 日本の大企業というのは、いわば日本の文化の固まりであり、この国独自の複雑な業務の仕組みをたくさん持っています。それらへの対応は、機能の継続的な蓄積なくしてありえませんが、海外のベンダーにはそれができない。その結果、COMPANYは国内の企業から絶大な支持を集め、5年目には大企業向けHRアプリケーション市場の単年度シェアが50%を超え、SAPなどを抜いてトップに立ちました。

Profile
牧野正幸 Masayuki Makino
1963年生まれ。兵庫県神戸市出身。大手建設会社での海外購買管理プロジェクトを経て、1994年、コンサルティング会社を設立。1996年、阿部孝司、石川芳郎の両氏とともにワークスアプリケーションズを設立し、代表取締役副社長に就任。2001年、代表取締役最高経営責任者に就任


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