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【インタビュー】
「イノベーション」で生存競争を勝ち抜け!

『ライフサイクルイノベーション』の著者、ジェフリー・ムーア氏が語る「イノベーション戦略」

(2007年08月03日)

ベストセラーとなった『Dealing With Darwin』(邦題『ライフサイクルイノベーション』)によって、ビジネスマンたちに「イノベーション」の重要性をあらためて刻みつけたジェフリー・ムーア氏。氏は同書で、14種類の具体的なイノベーションについて論じ、それらをどう適用していけば、企業が生存競争で勝ち抜いていけるかを示した。Computerworldオンラインでは、そんなムーア氏に、企業がいま取り組むべきイノベーション戦略について語っていただいた。

ジュリア・キング
Computerworld オンライン米国版

――イノベーションは本質的に破壊的なのか。

 (私が言うところの)破壊的イノベーションとは、(さまざまな種類のイノベーションの中の)1つのタイプを指すのだが、この種のイノベーションは新たなカテゴリーのビジネスを生み出すため、マスコミに大々的に取り上げられることが多い。劇的で、ネタに事欠かないからだ。

 2つ目のイノベーションは、競合企業の攻撃をかわすタイプのもの。3つ目は、生産性に関連するものだ。いずれにしろ、企業が実践すべき標準的イノベーションは、他社との決定的な違いを顧客のマインドに植え付ける「差別化」だ。これこそが、優れた経済的利益を企業にもたらすことになる。

――誤った方向のイノベーションは、企業にとって「起こしやすい過ち」の1つなのか。

 というより、企業が起こしがちな過ちは、むしろ「明確なイノベーション戦略の欠如」だ。生産性を向上させても、削減したリソースを次の契約を取るために顧客に還元してしまったのでは、下向きのスパイラルに陥るだけだ。生産性向上プロジェクトで削減したリソースを自社のために使わなければ、イノベーションは進まない。

――優れたイノベーション戦略を展開している企業、失敗している企業をそれぞれ挙げていただきたい。

 コンシューマー分野で成功しているのは、明らかにアップルだ。

 同社は、デザイン、マーケティング、ユーザー体験のすべてにおいて、すばらしいイノベーション戦略を展開しており、他社との決定的な差別化に成功している。

 これに対して、ソニーのイノベーション戦略は失敗だと言えよう。ソニーが革新的でないと言っているのではない。他社との差別化が十分に図られていないと言っているのだ。

――あなたは自分のブログで、H.L.メンケンの言葉を引用し、「あらゆる複雑な問題には、明解、単純、そして間違った答えがある」と記しているが、今日のITにおける「明解、単純、間違った答え」とは?

 ITにおける集中化あるいは分散化の最大の課題として、人々はまず「IT自体のコスト」を挙げるが、この場合のコストはあくまでも戦術上の要素にすぎない。ITのような戦略的構想にこうした考えを当てはめるのは、ばかげているとしか言いようがない。

 高コスト構造下にある米国企業にとって、低コスト構造下にある競合企業との差別化を図るうえで、数少ない切り札の1つとなるのがITだ。であるのに、何もしないでIT支出を抑えることだけに躍起になっているのは、愚か以外の何ものでもない。

 イノベーション戦略に関して、コスト削減のことしか頭にない、想像力の乏しいCEOやCFOを、私は評価しない。それに、高コスト経済の中にあって、ITをテコ入れするイノベーション戦略を持たない企業などには、何の価値も認めない。

――それはつまり、ITを早期導入すれば、必ず競争優位に立てるということか。

 いや、そうではない。イノベーション戦略を持っていなければ、テクノロジーを導入しても単なる「浪費」に終わってしまう。差別化戦略についての明確な展望がない限り、何を早期導入しようと価値はない。生産性向上を目的とした早期導入も、バグの多さというリスクを考えれば有益とは言えない。

 競争優位とは、企業が自らを差別化する方向と優位性とのベクトルを合わせることで、初めて意味をなすものだ。このビジネスのベクトルを見極めることができれば、それに即したテクノロジーを早期導入することで、「勝ち」が約束されるはずだ。

――あなたから見て、史上最大のイノベーターはだれか。

 個人的なイノベーションにはあまり関心がない。興味があるのは、(最新刊の原題の一部にもなっている)「ダーウィン的」イノベーション──すなわち均衡が分断される瞬間だ。こうしたことは、個々の人間には起こりえず、緊張状態が積み重なり、最終的に自らを一から再構築しようとする組織にのみ起こるものだ。

 「イノベーション」とは、ある“異端者”が組織と衝突することによって、あるいは組織に抵抗することによって生まれるものだというふうにわれわれは考えがちだが、大規模企業の場合には、そうした考えは当てはまらない。大企業がイノベーションを起こすためには、人々がそれについて熟考し、オープンに、そして系統だてて考えるための「基盤」が必要なのだ。

――企業は本質的にヒエラルキーであり、コラボレーティブではないはずだ。にもかかわらず、今日、地理的にも企業の分散化が進んでいる。これは、イノベーションにどう影響するのか。

 非常に大きな問題だ。それを乗り越えるには、戦略に基づいて差別化できるものは社内で行い、できないものは外部に出す──すなわちアウトソーシングする──といったビジネス・ネットワークの変革を進めるべきだろう。

 また、企業はビジネス・パートナー、サプライヤー、顧客とのネットワークにおいて、もっと俊敏性を高めるべきだ。われわれはこれまでも、その目標に向かってクライアント/サーバ、EDI、XML、ポータルなどといったテクノロジーを活用してきたわけだが、なかなかうまくいかず、必ずしも俊敏であるとは言えなかった。

――となると、次なるテクノロジーの候補は?

 今日、情報アクセスのためのテクノロジーと言えば、何と言ってもSOA(サービス指向アーキテクチャ)だろう。これまで実現しえなかったさまざまなレイヤのコラボレーションが、SOAによって可能になった。

 このSOAは、決してレガシー・システムを駆逐するものではない。レガシー・システムの上にSOAシステムをかぶせることにより、既存システムの機能をサービスとして引き出すことを可能にするものだ。このようして複合アプリケーションを構築していけば、それがすなわち「SOAへの移行作業」となる。SOAについては、IT関係者に「導入すべきだ」という認識はあるものの、残念なことにそれが「急務である」とまでは考えていないようだ。

――将来「イノベーティブ」になるために、IT部門が今から始めておくべきことは?

 身近にいる最もイノベーティブな事業部門のリーダーと話す機会を持つようにすることだ。そして、「競合企業が太刀打ちできないように、向こう2〜3年のうちにわれわれがやっておくべきことは何か」といったことを聞いてみるとよい。彼が、例えば「より優れた製品づくり」と答えたら、「具体的にどう優れた製品か」と、さらに掘り下げて聞いてみることだ。

 次に、説得力のあるイノベーション戦略を立案する。それから知恵を絞って、そのイノベーションを実現あるいは後押しするための適当なテクノロジーを30日以内に決定する。

 続いて、それを実践に移すための予算案を立てる。急成長している企業ならば、多額の予算を確保することも可能だろうが、大抵はそううまくはいかない。代わりに、どこかで生産効率を上げる必要が出てくるだろう。ただし、その際にも、コストを削減することばかりに気を取られず、まずは削減したリソースをどこに配分するかを明確にすることだ。

 生産性改善プロジェクトに見られる共通の問題点は、(削減したリソースがしかるべき部署に割り当てられることなく)経営の改善に寄与しないまま四半期以上も“漂流”してしまうことだ。しかし、せっかくのリソースを遊ばせておくのは、あまりにももったいない。脂肪は、早いとこエネルギーに変換してしまうべきだ。

 そのためには、(事業部門のリーダーたちと)「差別化するためのIT」について今すぐにでも話し合いを始めるのがよい。なかには聞く耳を持たないリーダーもいるだろうが、そういう連中は無視して、ビジネスに情熱とエネルギーを注ぐリーダーとだけ手を組むことをお勧めする。

ジェフリー A.ムーア

職業:執筆業──『Dealing With Darwin』(邦題『ライフサイクルイノベーション』翔泳社刊)、『Crossing The Chasm 』(邦題:『キャズム』翔泳社刊)、『Inside the Tornado』(邦題:『トルネード経営―「超成長」への戦略』東洋経済新報社刊)の著者、コンサルタント、ベンチャー・キャピタル・パートナー
肩書き:コンサルティング会社キャズム・グループ代表、モーア・ デビドー・ベンチャーズの出資パートナー
居住地:カリフォルニア州サンマテオ
好きなテクノロジー:「BlackBerry」、ブロードバンド
余暇の過ごし方:ゴルフ、読書
唯一嫌いなこと:雨どいの掃除
高校では:「オタク」だった
最近読んだ本:『The Curious Incident of the Dog in the Night-time』(邦題『夜中に犬に起こった奇妙な事件』早川書房刊)(マーク・ハッドン著)
手本となる人:「私の子供たちであるマーガレット、マイケル、アンナのようになりたい

(Computerworld.jp)






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