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グリーンIT

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グリーン・データセンターを実現するマルチレベル手法

コンポーネント/サーバ/ラック/設備から検証する

(2008年01月29日)

環境問題への関心が一般的にも高まってきていることを受け、IT業界でも“グリーン”や“エコ”がキーワードとして急浮上してきた。一言で「グリーンIT」と総称されているが、製造工程での有害物質排除からリサイクルによる再資源化、さらには電力効率の向上などアプローチは多岐にわたっている。本稿では、特にデータセンターを取り巻くグリーンITに着目し、その中でも電力効率の向上を実現するマルチレベルでの取り組みを紹介していく。「グリーン・データセンター」を考える際に、現状で特に注目度が高く、各社からさまざまな取り組みが発表されているため、いわば最もわかりやすいテーマと言えるだろう。

渡邉利和

注目が集まるデータセンターの“グリーン化”

 データセンターの電力効率が注目されるようになった背景には、この分野で“グリーン化”の取り組みがまだ始まったばかりだという事情がある。環境省が公表している「温室効果ガス排出量速報値」(表1)を見ると、2005年に比べて2006年はCO2の排出量がやや減少していることがわかるが、それでも京都議定書で定められた基準年である1990年と比較すると、11.4%の超過状況にある。分野別に見た場合、ITにおける電力消費が含まれる「業務その他部門」では排出量の増加が目立ち、他の分野がCO2排出量削減に努力しているのに比べて、IT分野での取り組みが立ち後れているように見える。このことが、グリーンITに注目が集まる背景となっている。


表1:分野別の二酸化炭素(CO2)排出量 *資料:環境省

 コンピュータやIT機器は直接CO2を排出するわけではないが、電力を消費することで排出されるCO2量に対して間接的に責任を負う形となる。コンピュータは事実上、“演算処理を実行する電気ストーブ”であり、消費した電力は最終的には熱に変換される。

 電力効率の向上は、基本的に機器の稼働において必要最小限の電力利用だけで済むようにしようという発想である。効率改善にはマイナス要素があまり見当たらないこともあって、各社が積極的に取り組んでいる。ただし、家電製品とは異なり、単純に最新の省エネ・モデルへの買い替えにはつながらない点がデータセンターの特徴だろう。

 というのも、データセンターの総電力消費量のうち、IT機器が直接消費している割合は30%程度であるからだ。残る70%は、電源や空調といった設備側で消費されている。つまり、データセンター全体での消費電力を考える場合、電源設備や空調設備で効率改善を図るほうが、より大きな成果が期待できることになる。このため、データセンターのグリーン化に関しては、単にデバイス・レベルで電力効率を考えるだけでなく、全体的な視点で実情を把握することが重要であり、レイヤごとに分析していくマルチレベルでの取り組みが必要となる。

データセンター・レベル ── 設備面からのアプローチ

 データセンター・レベルで重要となるのは、建物そのものや空調設備、配電設備などである。そもそもデータセンターの総電力消費量のうち、70%程度がIT機器以外で利用されているため、設備面の効率化で得られる効果は非常に大きいと言える。なかでも注目トピックとして挙げられるのは、「水冷システム」と「直流給電システム」である。
 

■水冷システム

 水冷システムは、発熱しているIT機器の冷却に水を利用する方式である。メインフレームやスーパーコンピュータで以前から使用されてきた方式であり、新しい技術というわけではないのだが、データセンターの電力効率改善を考えるうえで再評価され始めている。

 IT機器は水を嫌うため、水冷システムに対するユーザーの不安は少なくない。電力の効率化と直接関係しないが、データセンターでは、不燃性ガスを使い酸素を遮断して消火する消火設備が一般的で、通常の店舗やオフィスにあるような、スプリンクラーで散水する消火手法は使われない。これも、IT機器に水をかけると被害が拡大するという不安があってのことだ。冷却水は外部に漏れないように細心の注意を払って運用されているが、それでもユーザーの警戒心を払拭するには至っていない。

 とはいえ、クーラーを使用して空気を冷やし、冷気をIT機器に吹き付ける空冷システムは、水と空気の比熱の違いから、冷却効率に大きな差がある。この差はそのまま冷媒の流量の差につながってしまう。つまり、空冷システムでは大量の冷気を流し続けるために送風機の出力を大きくする必要があり、その分、電力消費量も大きくなるわけだ。

 また、メインフレームやスーパーコンピュータで水冷システムが使われなくなった理由は、水が嫌われること以外にも配管工事が必要であったり、機器の移動が困難になったりといった問題も関係している。冷却能力の点では空冷に対するメリットは大きいが、こうした点からも、水冷方式が急速に普及するとは言い難い。ただ、米国では、“水アレルギー”に対する反応が日本ほど強くなく、水冷を採用するデータセンターも少しずつ増えていると言われている。ブレード・サーバを筆頭にIT機器の高密度実装が進み、局所的に大量の熱を発生するようになると水冷化は不可避だという予測もある。そのため、将来的に水冷システムの採用が拡大していくことはまちがいないだろう。
 

■直流給電システム

 発電所から送られてくる電力は、そのままIT機器で利用されるわけではない。家庭用の電力は交流100Vになっており、壁のコンセントにプラグを挿すだけで利用できるが、それでも電子機器が実際に利用する電圧に変換するための電源ユニットなどが機器に内蔵されているのが普通だ。

 データセンターの場合、産業用の高圧電流の給電を受け、内部に電圧変換や配電設備を設置して各フロアに給電するのが一般的である。当然、電圧変換の際には電力ロスが発生することになる。

 IT機器は最終的に電圧が数V程度の直流を利用している。電力会社から供給される交流高圧電流をIT機器に給電するためには、電圧や直流への変換処理が必要となる。この変換効率が100%であれば問題はないが、実際には70%程度の変換効率が一般的であり、変換に際して電力ロスが発生している。変換効率を高めるために電源装置の改良に取り組むベンダーも増えてきており、最新の電源装置では変換効率90%以上をうたう高効率製品も出てきている。

 一方、電流変換の回数を減らすことでロスを回避しようという動きもある。通常のデータセンターでは、電力会社から給電された電力を屋内の変電設備に引き込み、そこで電圧を200Vや100Vといった値に下げてフロアに給電する。この際に、変電設備の内部で交流から直流への変換処理が何度か発生している。さらに、各フロアに給電された交流は、サーバなどが内蔵する電源ユニットで直流に変換されている。これを、最初から直流に変換して給電してやれば変換回数が減少し、変換に伴う電力ロスを回避できるというのが直流給電システム(図1)の基本的なアイデアである。


図1:直流(DC)給電と交流(AC)給電の比較 *資料:NTTファシリティーズ

 一見、合理的で有効な電力利用の効率化策に思えるのだが、直流給電に関しては反対論も多い。それというのも、電力伝送に関する電圧と電流の関係性が問題となるからだ。電力は電圧と電流の積になるため、電力を一定とした場合、電圧を上げるほど電流量は少なくなる。また、伝送ロスは基本的に電流量に比例するため、一定の電力を供給する場合、電圧を上げて電流量を減らすほうが効率的な伝送が可能になる。これが高圧線を使って長距離伝送を行う理由である。ただし、ショートといった万一の事故が発生した場合には、交流と直流でその対処方法が異なってくる。

 交流では電圧が正弦波に沿って変動し、プラス/マイナスが切り替わるタイミングで電圧が「0」になる。常に一定の電圧がかかっているわけではないため、これが一種の安全装置となる。しかし、直流の場合は電圧が一定であるため、漏電対策はより厳密なものが求められる。コンセントへの差し込みプラグに関しても配慮が必要だという。

 例えば、コンセントにプラグを差し込んで回路が形成される際に、一定の確率でアークが飛ぶことがある。一般家庭でもコンセントにプラグを差し込む際に「パチッ」と火花が散ることがあるのを思い浮かべていただきたい。これは確率的な現象であり、完全に抑制することは不可能だそうだが、この挙動も交流と直流とでは大きく変わってくる。交流の場合は電圧が「0」に落ちた段階でアークも止まるが、直流の場合は電圧が一定であるために一度発生したアークが長時間持続してしまう可能性があるという。この現象を未然に防ぐためには、プラグ側で何らかの安全対策を施す必要がある。こうした周辺対策や安全基準の見直しなどを加味すると、「効率化のためにすぐに導入できる対策とは言えないのではないか」というのが筆者の正直な感想だ。また、前述のとおり、データセンター全体に占めるIT機器の電力消費量は30%程度と言われており、ここを直流給電化して効率改善を図っても、効果はさほど大きくないという指摘もある。

 米国では、Yahoo!がIntelなどと共同で直流給電システムを開発し、各サーバの電源ユニットを直流電源に交換することで電力消費量の削減に成功したという事例も紹介されており、コンポーネント単位で低消費電力化を推進する場合には改善が見込めるようだ。しかし、データセンター全体という視点で見た場合には、給配電設備や屋内配線の全面的な刷新・交換、安全対策の整備などが必要不可欠であり、既存設備とのギャップが大きくなる。そのため、一般的なデータセンターが足並みそろえて直流給電に向かう可能性は低いと思われる。

 なお、直流給電に関してはもう1つ考慮すべき点がある。それは、アナログ電話のシステムはすべて直流を前提に構築されているということだ。IT機器ベンダーもテレコム業界向けとして直流モデルをラインアップしており、直流電源を扱うノウハウをそれなりに蓄積している企業もある。地域の通信拠点として運用されていた電話局の設備がデータセンターに転用されるケースがあることを考えると、直流電源の利用に関しては現実味があるとも言える。しかし、現状では直流電源に関する設備やノウハウが一般化しておらず、ノウハウを持った企業とそうでない企業との差が大きいことも問題だと言えるだろう。
 

加速するベンダー各社の取り組み

■日立製作所

 日立製作所では10年ほど前からデータセンター事業に取り組んでおり、2007年秋には、今後5年間でデータセンターの消費電力を最大50%削減することを目標に掲げた「CoolCenter50」プロジェクトを開始している。これについて同社は、データセンター内で使用されるIT機器のほか、給配電設備や空調設備など、データセンターで使用されるほとんどの機器を自社グループ内で手がけているため、総合的に取り組める点が強みだとしている。IT機器と設備側の両方にノウハウを持つ企業は世界的に見てもほとんど存在しないため、その点でユニークな取り組みであることはまちがいない。

 また、同社によれば、データセンター全体を考えた場合、グリーン化はそう簡単に実現できるものではないという。例えば、建物について考えると、日本は世界有数の地震国であるため、耐震性への配慮が必要となる。現在、主流となっている建物の構造は、揺れに耐えるのではなく、揺れを受け流して被害を避ける「免震」である。免震構造を実現するためには建物を軽くする必要がある。しかし、ブレード・サーバの利用拡大などによってラックの重量は増加傾向にあり、より高い強度が求められるようになってきている。

 上記のように、データセンター内のあちこちで相反する要件がぶつかり合っているのが実情のようだ。IT業界のトレンドは米国主導で動く傾向が強く、グリーンITもその例に漏れないが、建物までを含めて考えると、日本の地理的特性や建築基準、安全対策、保安基準といった国内の法規制への対応も考慮する必要がある。そのため、国内で経験を積んだベンダーの担うべき役割も大きなものがあると言えよう。

■IBM

 米国IBMは、グリーンITを実現するための包括的なプロジェクト「Project Big Green」を展開している。同社もまた、IT機器に限定されず、設備まで含めた包括的な取り組みが行える数少ない企業である。IBMの場合は自社のデータセンターで稼働している3,900台のサーバを30台のメインフレームに統合することで電力消費量を80%削減する計画も明らかにしている。これが成功すれば、安価なIAサーバを多数分散することでコスト削減を実現する「スケールアウト・モデル」から、再度大規模統合へ移行するパラダイム・チェンジを引き起こす可能性も考えられそうだ。


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