マイクロソフトの大成功と大失敗
マイクロソフトは大したものだ。ちまちましたことは一切しない。同社の成功は世界を揺さぶり、失敗するときには思いっきり台なしにする。
アスタ・ラ・ビスタ(さようなら)、Vista
Windows 3.xは“ブルースクリーン”を、それを有り難いと思わない国民に広めた。Windows Meはノミだらけの犬のような駄作だった(Microsoft Bobについては敢えて取り上げない)。
しかし、われわれに言わせれば、Windows史上最悪のバージョンは「Vista」である。発売が何年も遅れたのに、搭載が見込まれた画期的な機能は実質すべてが削ぎ落とされていて、リリース時の度を越した誇大広告によってさらにそのヒドさが増してしまった。
めちゃくちゃな互換性、パフォーマンスの問題、ありえないほどイライラする「ユーザーアカウント制御(UAC)」など、Vistaの破滅は初めから決定づけられていたのだ。Microsoftのコアな支持者や働くオタクたちも、こぞって敬遠した。そして、Microsoftは、ハードウェア・メーカーに対して“Vista対応”のステッカーをちっとも対応していないハードに貼らせたとして訴えられる。
でも、よくよく考えてみると、Vistaに対応しているものなどいなかったのだ。Microsoftを含めて。
(flickr/Amio Cajander)

徒労感を覚えるモビリティ
テクノロジーの世界には、簡易版Windowsを搭載しようとして失敗した携帯端末の死骸が散乱している。2004年にはスマートフォン全体の4分の1がMicrosoftのOSを搭載していたが、今年販売されたスマートフォンで「Windows Mobile」もしくは「Windows Phone」を搭載しているのは2%に満たない。
けれども、すべてが完全に消えてしまったわけではない。Windows Phone 7.xは市場シェアとまではいかないが尊敬は勝ち得ており、提携するNokiaのスマートフォンに搭載されることで、国際的な存在感を見せていくことだろう。世界的には(差し当たって)今もNokiaが市場を席捲しているためだ。
Gartnerに至っては、Microsoft-Nokiaの携帯電話の販売台数が2015年に「iPhone」を上回ると予測しているほどだ。一方、タブレットでは、働くオタクたちが待ち焦がれる「iPad」に代わるデバイスがWindows 8で提供されるかもしれない。1年後に発売されたらすでに時代遅れだった、なんてことがなければいいが。
(REUTERS/Paul Hackett)

Microsoftよりの使者
Microsoftほど、ユーザーを小ばかにして混乱させる技に秀でた企業はない。初期MS-DOSに表示された“Are you sure(Y/N)?”(=本当ですか?『はい/いいえ』)という確認メッセージから、Windows Vistaの「ユーザーアカウント制御(UAC)」に至るまで、Microsoft製品には、わかりにくいくせに妙にへりくだったところがある。
この姿勢が最も具現化されていたのが、“Officeアシスタント”として「Office 97」で登場したペーパークリップの擬人化キャラ、“クリッパー”だった。
クリッパーはすぐさまパロディの標的になった。Microsoftでさえ物笑いの種にしていたほどで、ソフトウェアに対する同社の間違ったアプローチのシンボルでもあった。「Office 2007」が発売されたとき、クリッパーはお払い箱となっていた。
(flickr/Shayne Kaye)

だれに対する反トラスト?
Microsoftは21年間にわたり、アメリカ政府と反トラスト訴訟で争った。侵略的マーケティング、また競合を潰す目的でデスクトップを独占していると非難されたMicrosoftは、米司法省とEUの双方から狙われた。PC市場におけるMicrosoftの締め付けを緩和しようとした訴訟だったが、無残にも失敗。
しかし、Microsoftの評判は永遠にダメージを被る結果となった。裁判における同社の振る舞いは、トーマス・ペンフィールド・ジャクソン判事によると、「不正確で、誤解を招きやすく、曖昧で、見え見えの虚偽である」と見なされた。
法廷での重要証人だったビル・ゲイツ氏は断固として非協力的で、CEO在任中に起きたことはほとんど何も思い出せないと証言した。要するに、Microsoftはジャクソン判事が宣言したとおり、あらゆる点で独占的な態度のガキ大将だったのだ。
(REUTERS/Francois Lenoir)

失敗の継続と継続の失敗
“Think Different”(『違う視点で考えること』、ただし、ジョブズ氏の考えと違わない範囲で)を教え込まれたトップレベルのエグゼクティブ集団を擁するAppleに比べ、スティーブ・バルマー氏が汗まみれの青いボタンダウンシャツを脱いで引退するときが来ても、Microsoftの選手層はそれに十分なほど厚くはない。
ゲイツ氏が去って久しく、彼が後継者に選んだレイ・オジー氏も1年前に退社してしまった(オジー氏は名言していないが、バルマー氏との確執が原因と思われる)。ここ1年で、ロビー・バック氏、スティーブン・エロップ氏、ジェイ・アラード氏といった多くの上級幹部が、より良い環境を求め、怒るとイスを放り投げてくるCEOから身を守ろうと、Microsoftを離れていった。
バルマー氏が彼らを(あるときは急かすように)ドアの外まで送り出しているとしたら、指揮権を引き継ぐ人間はもうほとんど残っていないだろう。そこには未来へのヴィジョンもない。
(REUTERS/Ray Stubblebine)

Windows 95のときみたいに盛り上がろうぜ!
Microsoftが世界を支配していたころを覚えているだろうか? クリントン政権中期に短くも輝いていたあの時、確かにそう感じたものだ。
3億ドルの販売キャンペーン、そしてジェイ・レノやローリング・ストーンズらの助けを借りたMicrosoftは、新しいコンピュータOSの発売を文化的イベントに仕立て上げた。故スティーブ・ジョブズ氏がオタクっぽさをアートに仕立て上げる何年も前のことだ。
「Windows 95」のデビューはMicrosoftの最高の瞬間だっただけでなく、テクノロジー志向の話題がメインストリームのニュースを席捲した初めての出来事だった。そして、これが最後ではないだろう。
(flickr/Marcin Wichary)

Xboxが目印
「Xbox」はレドモンドで生まれて即刻消滅することのなかった、マウス製品以外の唯一のハードウェアだ。家庭のリビングルームに置かれる唯一のMicrosoftブランドでもある。
「Xbox 360」における“死の赤リング”問題で、Microsoftは修理交換に10億ドル以上を計上したにもかかわらず、Xbox 360はゲーム開発者から最も望まれるプラットフォームであり続けている。また、Xbox LIVEの会員数は今や3,500万人を誇り、Microsoftで最も成功したソーシャルメディア事業となっている。
驚くほど良い出来のモーションセンサー「Kinect」を加えたXboxは、「Wii」世代にとっても有望な選択肢だ。特に、「Halo 3」や「Red Dead Redemption」をプレイするには歳をとり過ぎた、ダサいわれわれの世代にとっては。
(REUTERS/Yuriko Nakao)

(Microsoftの)オフィスで会いましょう!
来た、見た、勝った。WindowsがコンピュータOSで優位を占めているのと同様に、Microsoftのオフィス製品もPC向けビジネスソフトで他を凌駕している。
当然のことながら、競合ソフトのWindows 95対応版を故意に機能させないようにしているとNovellが主張しても、Microsoftが傷つくことはなかった。当時取りざたされていた、PCにOfficeをバンドルするよう、昔ながらのやり方でハードウェアOEMにゴリ押ししているというクレームに際しても、損害はなかった。
今もなお、特に2007年にクリッパーをお払い箱にしてからというもの、Officeが持つ利点は、そのマーケティングの影響力と同様、他に抜きん出ている。
現在、「Google Docs」との競争に駆り立てられたMicrosoftは、「Office 365」でOfficeをクラウド展開しているところだ。
(REUTERS/Ray Stubblebine)

Windows 7という至福
Windows 7が地味なOSなら、それだけで安定感があると言える。Windows Vistaという大惨事に続くOSであることを考えれば、ほとんど奇跡にように思える。
単純に“ひどくない”という理由から、Windows 7はMicrosoftの評判を回復させた。控えめなそのラウンチは、Vistaの教訓から謙虚になったMicrosoftの姿を暗示しているようだった。
いまや人々はタッチ操作に適するというWindows 8の可能性にワクワクしているくらいだ。3年前にはこんなこと、だれも予想していなかった。
(REUTERS/Shannon Stapleton)

大きすぎて潰せない
多くの失敗をもってしても、なおMicrosoftは金のなる木だ。直近3か月だけでも60億ドル近い収益を上げている。
スティーブ・バルマー氏が先日のWeb 2.0サミットで言及したように、今年のWindows搭載機の販売台数は3億5,000万台にものぼるという。ゆえに、大々的に失敗しつつも生き延びるというMicrosoftの底力は、ほぼ無限大なのだ。
そしてこれが、携帯電話、タブレット、テレビゲーム機、クラウドなど、レドモンドが注視するどの分野でも、Microsoftが侮れない因子でありつづける所以である。とにかく、大きすぎて潰せないのだ。
(flickr/ToddABishop)


















