企業デスクトップの仮想化 〜MDOPの新顔、MED-V〜
仮想化技術のすべてをここで学べる!今回はサーバ仮想化から少し離れ、仮想化テクノロジーを利用した企業デスクトップの展開と管理を取り上げる。すぐに「VDI」ということばを思い浮かべた方は、かなりの“仮想化通”だ(しかし、VDIの話は次回で)。今回は、マイクロソフトが提供を開始したばかりのMDOP 2009の1つ、「MED-V」を紹介しよう。
山市良
2009年4月1日、MDOP 2009リリース ラインアップにMED-Vを新たに追加
「Microsoft Enterprise Desktop Virtualization 1.0」(以下、MED-V)は、「Microsoft Desktop Optimization Pack(MDOP)for Software Assurance 2009」を構成する製品の1つだ。
MDOP 2009は、2007年1月のMDOP 2008(英語版のみ)、2008年10月のMDOP 2008 R2(日本語版)に続く3番目のバージョンで、Windows Vista Enterpriseのソフトウェアアシュアランス(SA)契約ユーザー向けに、サブスクリプションライセンスとして提供されている。
MDOPを利用するにはSA契約が必要であり、知名度もあまり高くない。しかし、アプリケーションを仮想化する「Microsoft Application Virtualization(App-V)4.5」(旧名称:Microsoft SoftGrid)をはじめ、企業クライアントのデスクトップを最適化するためのユニークなツールとテクノロジーが含まれている。
MED-Vが正式にリリースされたことで、マイクロソフトが提供する製品やテクノロジーの多さに混乱してきた人もいるだろう。特に次の3つの名称は、同じ仮想デスクトップ関連のものなので混同しないでほしい。
■Microsoft Enterprise Desktop Virtualization(MED-V)
今回のテーマ。仮想デスクトップイメージの展開と管理、シームレスなユーザーエクスペリエンスを可能にする製品。 [関連リンク]Microsoft Windows Enterprise:Improving Virtual PCs with MED-V
■Windows Vista Enterprise Centralized Desktop(VECD)
Microsoft VDIやサードパーティのVDI製品上の仮想マシンでWindows Vistaを展開する企業向けに用意されたサブスクリプション形態のライセンス。 [関連リンク]Windows Vista Enterprise Centralized Desktop(VECD)のライセンス
■Microsoft Virtual Desktop Infrastructure(Microsoft VDI)
次回のテーマ。Windows Server 2008 R2に組み込まれる「Hyper-V 2.0」をベースにした仮想デスクトップ。 [関連リンク]Desktop Virtualization|Virtualized Desktop Products & Technologies
なお、MDOP 2009は日本語版で提供されているが、その中に含まれるMED-V 1.0は英語版での提供となる。筆者は、日本語環境に導入して動作を確認したが、特に問題はなかった。
MED-VとApp-V、TS RemoteAppも 見た目と使い勝手はほとんど同じ
まずは、下の画面1〜3を見てほしい。それぞれ、通常のデスクトップ環境とは異なる、不自然な状況になっている。画面1では、Windows Vista上で最新の「Internet Explorer(IE)8」と、Windows Vistaでは動かないはずのIE 6 Service Pack(SP)1が同時に動作している。画面2では、2007 Microsoft Office system(以下、Office 2007)がインストールされていないWindows Vistaのデスクトップ上にOffice 2007のアイコンが表示されており、Word 2007が実行中だ。画面3では、Windows Vista上でOffice 2007のWord 2007と、Office 2003のWord 2003が同時に動作している。
この3つの画面の状況は、それぞれMED-V、TS RemoteApp、App-Vで実現されている。使用されているテクノロジーはまったく異なるが、画面を見ればわかるように、ユーザーエクスペリエンスは同等だ。また、ローカルコンピュータにインストールされていないアプリケーションが動作しているという点も同じである。
いずれもアプリケーションの互換性問題の解決や集中管理を実現する、マイクロソフトのソリューションである。この中でMED-Vだけが、本連載のテーマである仮想マシンの仮想化テクノロジーを利用して実現されている。
TS RemoteAppとApp-Vでは 展開可能なアプリケーションがOSに依存する
MED-Vの仕組みや特徴を解説する前に、TS RemoteAppとApp-Vについておさらいしておこう。
TS RemoteAppは、Windows Server 2008の「ターミナルサービス」の機能の1つである。Windows Server 2003 R2以前のターミナルサービスは、サーバ側に作成されるユーザーセッションのデスクトップに「ターミナルサービスクライアント」や「リモートデスクトップ接続クライアント」で接続し、画面表示とマウスやキーボードの操作をネットワーク経由でやり取りする方式であった。
Windows Server 2008では、このような従来の利用方式に加え、サーバ側のデスクトップ上で実行中のアプリケーションの“ウィンドウ部分だけ”を切り取って、クライアントに送信、表示する機能がサポートされた。これがTS RemoteAppだ。
TS RemoteAppは、サーバ側で動作するアプリケーションをクライアントに表示しているだけなので、展開するアプリケーションはWindows Server 2008およびターミナルサービス(マルチユーザーセッションでの実行など)に対応している必要がある。IE 8環境にIE 7を展開することは可能だが、MED-VのようにIE 6 SP1を展開することはできない。
App-Vは、MDOP 2008から提供されている、仮想アプリケーションの展開ソリューションである。App-Vでは、インストールおよび構成済みで実行準備が整ったアプリケーションのイメージをパッケージングし、クライアントにストリーム配信して、クライアントのOSから分離された仮想ランタイム環境内で実行するという、非常にユニークなソリューションだ。
App-Vでは「App-V Sequencer」というソフトウェアを使用して、アプリケーションをパッケージングして仮想化する。その作業はクリーンなクライアント環境にアプリケーションをインストールして構成するまでをキャプチャし、システムに加えられた変更の差分を抽出して、App-Vクライアント上で動作するパッケージを作成するというものだ。
仮想化されたアプリケーションは、クライアントにインストールするという作業なしで、クライアントにキャッシュするだけで実行することができる。仮想アプリケーションはクライアントのシステムファイルやレジストリを一切変更しないため、同一アプリケーションの異なるバージョンを同時に実行することも可能だ。
MDOP 2009に含まれる最新のApp-V 4.5 CU(Cumulative Update)1では、App-VのクライアントとしてWindows XP SP2以降、Windows Vista、およびWindows 7をサポートしている。そのため、App-Vで展開できるアプリケーションは、これらのOS上で動作するものに限られる。また、展開するアプリケーションは、クライアントのOSで動作するものでなければならない。
例えば、Windows XPでは動作しないアプリケーションをWindows Vistaでパッケージ化し、Windows XPクライアントに配信して実行するということは原則できない(できることもあるかもしれないが)。さらに、IEなど、OSに依存するアプリケーションを仮想化することもできない。
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