ビッグデータが変える企業、ビジネス、そして社会
これからのIT部門に必要とされる人材とは
アーキテクチャ科学研究系
教授
佐藤一郎氏
ビッグデータの背景にあるのは
ビジネスサイドからの要求
なぜ、いまビッグデータが注目されているのだろうか。
センサーやスマートフォンなどから大量のデータが生成されていること、発生頻度の高いデータのより迅速な処理や多様性を持った非構造化データへの対応が求められていることなど、さまざまな理由が考えられる。
「ただし、これらは技術的背景にすぎません。ビッグデータに関心が高まっている最大の理由は、ビジネスサイドからの要求にあります」と前置きし、国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系の教授である佐藤一郎氏(工学博士)は、このように語った。
「『STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)』による顧客管理をベースとした既存のマーケティング手法が通用しなくなっています。インターネットやソーシャルメディアの普及により、消費者の行動が大きく様変わりしているのです。消費者は企業が発信する広告宣伝よりも、他の消費者の発言や行動を信頼するようになりました。そうした中で企業は、個々の消費者の行動をひたすら分析し、先回りして対応していくしかありません。そこで必須となるのがビッグデータなのです」
もっとも、ここでいうビッグデータは必ずしも新しい取り組みではなく、実は以前からも行われてきたことだ。顧客のカード利用パターンから「異常なパターン」を検知する、クレジットカード会社の不正カード利用検知などはその代表例と言えよう。こうしたビッグデータ的な処理が、より広いビジネスの世界で一般化しようとしているのである。Google、Amazon.com、Facebookといった企業は、ビッグデータを活用することで、一気に世界のトップレイヤーへと成長した。
「ここ数年のIT業界は、厳しいコストダウンへの対応に終始してきましたが、ビッグデータは久々に訪れたビジネスチャンスをつかむためのトレンドです。今後、ビッグデータを活かすことができる企業とそうでない企業の差は、ますます広がっていくでしょう。ビッグデータへの取り組みが遅れれば競合他社の後塵を拝することになり、逆に、いち早くビッグデータに取り組んだ企業ほど有益なデータをより多く蓄積し、競争優位を獲得することができるのです」
ビッグデータを活かすためには
データ解析の人材確保が必須
では、今後の企業はいかなるアプローチによってビッグデータを活用することが可能となるだろうか。
従来のデータ活用は、特定の目的に沿ってデータを収集、解析することによって行われる。これに対してビッグデータの場合は、「目的そのものがどんどん変化していく」という点が異なる。ある解析結果が、違った観点からの解析を促すという形で連鎖していき、それにともなって必要なデータも増大していく。
そうした中で佐藤氏が強調したのが、データ解析に対する高い素養を持った人材の確保と育成の重要性である。
「すなわち、個々のデータではなく、多様なデータの組み合わせから価値を生み出していくところにビッグデータの本質があります。こうした組み合わせ方は、人間の勘や経験に頼るしかありません。膨大なデータから調べたい特性に合ったデータを発見し、的確な解析方法を選択して実行できる人材が必須です。機械学習などによるアプローチもないわけではありませんが、膨大で多様なデータの中から何らかのパターンを機械的に抽出するという処理は、きわめて限定的なのが現実です」
さらに言えば、ビッグデータを持っていても、有益な特徴やパターンを必ず抽出できるとは限らず、収益アップが約束されているわけでもない。また、仮に有益な特徴やパターンを抽出できたとしても、その結果を使うのは人や組織であることも忘れてはならない。
「詳細化、リアルタイム化したデータをビジネスにどう活かしていくのか、その鍵を握っているのは経営層ではなく現場です。現場に裁量を持たせた企業でないと、ビッグデータを活かすことはできません」



























