SSDの価格はハード・ドライブの18倍、購入・活用には戦略が必要
コストの高いSSDにそれだけの価値はあるのか、企業ユーザーの回答は「イエス?」5,000人の従業員と280の支社を抱える銀行Associated Bankは、データ需要の大きな中規模ビジネスの典型的な例である。2006年に他銀行を買収した後、同銀行のストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)の規模が1年足らずで17TBから300TBに膨れ上がった。それ以降、オンライン化されるアプリケーションの数が増え、さらには保持されるデータの増加を課した連邦規制が施行されたため、現在では元のサイズの52倍である900TBにまで増加している。
ウィスコンシン州グリーンベイを拠点とするAssociated Bankのシステム・エンジニア、ダン・マーベス(Dan Marbes)氏は、I/O要件の厳しいアプリケーションのパフォーマンスを向上させると同時に、ハード・ドライブの設置スペースを削減するため、Solid State Drive(SSD)の導入を試みた。
そして、SANのビジネス・インテリジェンス(BI)アプリケーション用ストレージの最上層として、3台のSSDが購入された。小ブロックの読み取りで比較したところ、SSDの性能は、15,000rpmのファイバ・チャネル・ディスク・ドライブ60台よりも優れていた。
しかし、大ブロックのランダムな読み取りおよび書き込みにSSDを使用したところ、15,000rpmのハード・ディスク・ドライブがSSDに圧勝した、とマーべス氏は語る。これは、SSDを企業活動に取り入れることを改めて考え直す必要があることを示している。
SSDでは不揮発性のNANDフラッシュ・メモリ・チップが使用されている。このチップはDRAMチップよりは安価である。しかし、市場調査会社Forward Insightsのアナリスト、グレゴリー・ウォン(Gregory Wong)氏の分析によれば、SSDはいまだ15,000rpmファイバ・チャネルまたはシリアルSCSI(SAS)のドライブの18倍の価格だという。反面で、消費者のSSDとNANDフラッシュ・カード技術への乗り換えが進んでおり、データセンター・クラスの製品のコストに影響を及ぼしており、SSDもこの例にもれず価格が下がっている。
高価な買い物
市場調査会社IDCが発表した世界的な概況によると、クライアント・サイドのSSD(ノートブックPCやタブレットなどの消費者向け製品で使用されるSSD)は、今後5年の間に約10倍に増加すると見込まれている。つまり、2011年には1,100万台にとどまっているが、2015年には1億台に増えるということである。256GBのNAND型SSDの使用は、2011年現在SSDで使用されている全NANDの19%であるが、この割合は2015年には42%になると予測されている。さらに、高密度SSDへの関心は高まり、512GBのSSDに対する需要は2011年の0.3%から2015年には8%に増えるとも予想されている。
SSDへの移行が一気に進むのは、おそらく2012年下半期に価格がギガバイトあたり1ドルまで下がってからだろうと、ウォン氏は語る。消費者が購入するNANDフラッシュの数が増えれば増えるほど、フラッシュ・メモリ製品全体の価格も下がる。それはデータセンターも例外ではない。
現在はSSDフォームファクターにおけるNANDフラッシュの価格は、ハイエンドのSingle-Level Cell(SLC)で9ドル/ギガバイト、Multilevel Cell(MLC)3ドル/ギガバイト。そしてウォン氏によれば、エンタープライズMLC(eMLC)と呼ばれる新しいクラスのMLCは、消費者向けMLCフラッシュ・テクノロジーの30倍の速度で書き込みが可能であるが、コストは20%高くなる。それに対し、ファイバ・チャネルやSASドライブの価格はギガバイトあたり50~60セントである。
EMC、日立データシステムズなどのアレイ・メーカーの多くではSSDにも対応しているため、2.5インチもしくは3.5インチのハード・ドライブ・フォーム・ファクターでもアレイ・ドライブ・スロットにSSDが搭載できる。一部のベンダーは、自動階層化ソフトウェアも提供し、アクセス頻度が高いデータをSSDに自動的に移動させ、重要性の低いデータはコストの低いハード・ドライブに移動することでストレージのコストパフォーマンスを高められる。
Fusion-io、Texas Memory Systems、Micron、Virident Systemsなどが販売しており、オールフラッシュ・アレイやアプリケーション・サーバで使用可能なPCIe NANDフラッシュ・カードに関して言えば、価格は非常に高くなる。しかし、高速インターコネクトやフラッシュ・ストレージがサーバ・プロセッサーに近付いていることが影響することで、パフォーマンスも大幅に向上する。
そうは言っても、フラッシュ・ベースのPCIeカードがこれほど高価である理由をすべての人が「理解」してくれるわけではない。UniSource Energyの子会社Tucson Electric Powerの情報サービス部門でインフラストラクチャ・サービスのスーパーバイザーを務めるクリス・リマ(Chris Rima)氏は、社内のNetApp 3170 NASアレイのパフォーマンスを向上させるためのフラッシュ・カードを1枚3万ドルで購入した。
Tucson Electricの上級システム管理者であるトニー・エデルブロック(Tony Edlebrock)氏の話によれば、Performance Acceleration Modules(PAM)と呼ばれるNetAppのフラッシュ・カードを導入した結果、PeopleSoftとOracleのカスタマー・ケアおよび請求書発行システムのパフォーマンスが向上し、それまで8~12時間かかっていた夜間のバッチ・プロセスが、4~6時間に短縮された。
「フラッシュ・キャッシュが優れているのは、挿入するだけでどこでもパフォーマンスがすぐに向上する点。プロトコル遅延は減少し、スループットが大幅に向上した」とリマ氏は語る。一方で「ただ、なぜあれほど価格が高いのかだけは理解できない」ともいう。
NetAppによれば、同社のNASアレイで同社のPAMフラッシュ・カードを使用すると、パフォーマンスを維持または向上させながら、ディスク・ドライブの台数を最大で75%削減できるという。
フラッシュの戦略と用途
ただし、一部のPCIeフラッシュ・カードは価格が途方もなく高いため、1つのタスクだけでなく、複数の使用方法がある場合に限って購入すべきだとリマ氏は指摘する。
Tucson Electric Powerでは、6枚のフラッシュ・カードをPeopleSoftおよびOracleの全データベースのフロントエンドで使用している。これらのカードは、UnisourceのVMware仮想マシン(VM)500台の3分の2、GISマッピングシステム、および停電を管理するデータベースのためのフロントエンド・キャッシュとしても機能している。これらのカードには、1つのクラスタとして構成された2台のNASサーバごとに、40TBから60TBのデータが記録される。
リマ氏によれば、Tucson Electricは、今年ネットオークション・サイトのeBayが配備したストレージ・システムに似ているすべてがSSDであるストレージ・アレイを2012年にNimbus Systemsから購入することを検討している。
eBayでは、仮想マシン(VM)の追加導入を切望していた事業部門のI/Oストレージ要求に対応しきれなくなった際、品質保証(QA)部門がハード・ディスク・ドライブのアレイをSSDストレージと交換することにした。
1年の間に100TBのストレージを交換したeBayは、標準ストレージ・ラックのスペースを50%縮小し、電力消費を78%削減し、I/Oパフォーマンスを5倍にすることに成功した。その結果、現在eBayは、それまで45分かかっていた新規VMのネットワーク接続作業を、わずか5分間で完了できるようになった。
eBayのQA部門では、これまでネットワーク接続ストレージ(NAS)とストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)の両方を使用していた。しかし本格的な刷新に先駆け、まず最初に2U(3.5インチ高)サイズのNimbus S-class SSDシステムを1台とHALOストレージ・オペレーティング・システムを導入した。
eBayのQAシステム管理担当マネージャー、マイケル・クラフト(Michael Craft)氏によれば、現在eBayは従来使用していたハード・ドライブ・ストレージに匹敵するキャパシティを持つSSDアレイを12台所有している。
リマ氏は、「Tucson Electricは、NANDフラッシュをフロントエンドのキャッシュとして使用することによって、より多くのデータを高密度シリアルATA(SATA)ハード・ディスクに移動し、パフォーマンスを向上することを検討している」と語っている。リマ氏によれば、この方法を用いると、SSDストレージの追加購入に関してエグゼクティブの承認が得やすくなる。
「データセンターのスペースをコストに加算すれば、18ヵ月間のROIを正当化するのは容易。なぜなら、環境の一部で300GBのファイバ・チャネル・ディスクの代わりに2TBのSATAディスクを使用できるからだ。これはつまり、ハード・ドライブの数が減っても、パフォーマンスは変わらないということでもある」(リマ氏)
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