「企業の全体最適から社会の全体最適へ」──サンの新社長、末次朝彦氏が今後のビジョンを語る
Javaをはじめとするソフトウェアのオープンソース化やユーティリティ・コンピューティング・モデルの本格展開など、サン・マイクロシステムズは今、大きな転換点に立っている。Computerworld.jp編集部は、今年4月にサン・マイクロシステムズの日本法人の代表取締役社長に就任した末次朝彦氏に同社の今後のビジョンと戦略について話を聞いた。
だれもが利用できるネットワークを目指して
──米国では最近、マクニーリ会長のCEOからの勇退やJavaのオープンソース化への見通しなどが大きな話題になったが、サンは全体としてどう変わろうとしているのか。
変わるところと変わらないところがはっきりある。設立当初から掲げてきた「The Network Is The Computer」というビジョンは変わっていない。過去にはその趣旨を理解していただけなかった時期もあったが、今ではそれが当たり前の時代になった。当社はそうしたビジョンの下で、システム・カンパニーとして大きな発展を遂げてきた。それを支えた要素がサーバ、Solaris、ミドルウェア、そしてJavaである。今後の目標はこのネットワークをだれもが使えるようにすることであり、そのように変えていかなければならないと考えてる。
──JavaONEでも公表されたJavaのオープンソース化の方向性について、トップ・ダウンですんなりと決定できないのはなぜか。
私の理解では、オープンソース化の方向性はすでに決まっているが、その方法論が問題になっているのだと思う。Javaはすでにサン自身のものではなくオープン・コミュニティのJCP(Java Community Process)によって管理がなされており、サンだけでそうした決定を下せる性質のものではなくなっている。たぶんそれが理由なのではないか。例えば、Solarisの場合はサン自身が管理していたためにオープンソース化もすんなりと決めることができた。
──企業コンピューティングはどのように変化しつつあると認識されているか。
適用業務という言葉があったように、かつては特定の業務領域ごとにコンピュータを導入し、業務の効率化が進められていた。しかし、このやり方では、適用領域が非常に限られてしまうだけでなく、システムの運用や管理に多大な手間とコストがかってしまう。それが今では、企業全体を最適化するインフラとしてコンピュータが使われるようになり、経営やビジネスに欠かせないものになりつつある。
次のステップは何かというと、それはサービスによる社会全体の最適化だ。コンピュータやソフトウェアそのものを購入するのではなく、必要なサービスを買うというモデルを実現できれば、大企業が実現した全体最適と同じような効果を中堅中小企業もあまねく享受できるようになる。
当社では、グリッド・サービスやユーティリティ・コンピューティングのモデルを構築し、サービスを提供することによって、こうした環境を実現しようとしている。
──そうしたモデルが実現されると中堅中小企業にサーバが売れなくなってしまうのでは。
そのような心配はない。そもそも中堅中小企業においては、サーバやOS、アプリケーションの運用に手間やコストをかけるのはきわめて非効率的であり、必要なサービスを必要に応じて利用できたほうが望ましい。プロが運用するデータセンターやASP(Application Service Provider)で当社のシステムが利用され、そのサービスを使うユーザーが増えれば、当然われわれのビジネスも拡大していくことになる。
──国内のビジネスの現状について、サービス・ビジネスは順調に拡大しているのか。
現実的にはまだハードウェア・ビジネスのほうが大きい。好調なミッドレンジ・サーバのビジネスを中心に全体の6〜7割を占めている。当社は国内の他のコンピュータ・メーカーとは異なり、システム・インテグレーションは基本的に行っておらず、パートナーの皆さまにおまかせしていることもあって、当社自身のサービス事業の比率を劇的に高めるのは難しい。ただし、インフラにかかわるプロフェッショナル・サービスなどの提供は行っており、そういったところからサービスの比率は徐々に増えてきている。
ASPやデータセンターとの協力関係を強化
──パートナー戦略を含む国内の今後のビジネス・ビジョンについてお聞きしたい。
パートナー・ビジネスの基本的なモデルを変えようとは考えていない。ただ、先ほど紹介した「社会の全体最適を追求する」という観点から、ASPやデータセンターなどのパートナーの皆さんとの協力関係をより強化していきたいと考えている。
──具体的にはどのように強化していくのか。
ユーティリティ・コンピューティングのモデルに基づいて新たなサービスを市場に提供するパートナーの皆さんを支援するかたちで、お互いにリスクを共有しながらビジネスを拡大していきたい。
例えば、パートナーさんがビジネスを立ち上げる際には、当然、初期リスクを抱えることになるわけだが、システム提供料をリソースの使用率で課金するといった体系にすることができれば、リスクをシェアしながらマーケットを広げていくことができる。そういったかたちで、パートナーの皆さんと協力していきたいと考えている。
──米国ではサン自身が今年3月にグリッド・サービスの提供を開始しているが、日本国内でも同様の展開を行う予定があるのか。
日本国内では、サン自身がセンターを持つことは今のところ予定していない。むしろ、データセンターを運営するパートナーの皆さんと協力してサービスを展開していくことを重視していきたい。それによって米国と同様のサービスを提供することができると思う。
──複数のデータセンターと協力しながらさまざまなサービスの提供を支援していくということか。
そのとおりだ。われわれはプラットフォームの選択肢を広げる「Exit Strategy」というビジョンに基づいて、サービスを提供するいかなる企業とも協力していきたいと考えている。われわれのビジョンは、Javaという共通の環境でアプリケーションやサービスを開発してもらうことで、必要に応じて自由にプラットフォームを選択できる環境を実現しようというものだ。
われわれはJava環境に最適化したSPARC/Solarisプラットフォームを提供しているが、同時にx86ベースのローエンド・サーバも提供している。その上では、SolarisもWindowsもLinuxも稼働させることができ、ユーザーに自由な選択肢を提供することができる。
──データセンターについてはすでに他のコンピュータ・メーカーも積極的に展開しているが、サンはどう差別化するのか。
差別化する必要はないと考えている。たとえ、データセンターを運営しているのが大手のコンピュータ・メーカーであったとしても、われわれの優れたインフラを利用してくれる顧客になりうると本気で考えているからだ。あくまでもデータセンターやASPと競合するつもりはない。
──Javaコミュニティなどディベロッパー支援にどのように取り組もうとしているのか。
この分野は、国内戦略の中でも最も重要なテーマの1つに位置づけている。これまでは、社内、カスタマー、パートナー、開発者のそれぞれに独立したコミュニティが存在し、別々に支援プログラムを実施してきたが、これを一本化し、特に開発者コミュニティの支援に集中的に力を注いでいきたい。
──今後のビジネス目標について、ハードウェアとソフトウェア別にどのような数値目標を設定しているのか。
ユーティリティやグリッドというモデルの環境下では、もはやハードウェアやソフトウェアという切り口で目標を決めることは難しい。私が心に抱いている目標は、国内のビジネス全体を3年以内に現在の倍の規模に拡大することだ。
──最後に、国内のユーザーの皆さんに一言メッセージを。
サンは、真の意味でのオープン・システムの提供を目指している。それは、お客様にとって、入るときの敷居が低く、出るときの敷居も低いという自由な選択肢を提供できるExit Strategyに基づいている。ぜひ安心して活用していほしい。



























