SOAを巡るホットな疑問
コスト削減効果の実際は? マイクロソフトのSOA戦略は?……かねてから理解するのが難しいと言われてきたSOA(サービス指向アーキテクチャ)。導入する企業が相次いでいる今でも、SOAにまつわる「疑問」には事欠かないと、多くの専門家は口にする。本稿では、その中からホットで旬な6つの疑問について、専門家の意見を交えながら掘り下げてみたい。
ジョン・ブロドキン
Network World米国版
【1】SOAは本当にコスト削減に寄与するのか?
レンタカー会社として知られる米国エイビス・バジェット・グループは2年前、旅行代理店との間の新しいチャネルの開設に合わせて、SOAをベースとする取引システムの運用を一部の部署で開始した。同社サービス・アーキテクチャ情報技術担当ディレクターのアショック・クマー氏は、「(SOAの導入によって)パートナー各社は、仲介業者を介在させず、われわれと直接ビジネスすることが可能になった。当然、仲介業者の分のコストが減り、新しいパートナーとの取引コストはSOAのおかげで、ほぼゼロになったと言ってもよい」と話す。
SOAのおかげで、エイビスは取引開始までの時間短縮にも成功した。従来は1カ月程度かかっていたのが1日で取引可能になったという。SOAを利用していれば、サービスのコンフィギュレーションを変えるだけで済み、巨大なアプリケーションを書き換える必要がないためだ。「これまで、新規パートナーとの取引開始に要するコストは4万ドルから5万ドルだった。現在は3,000ドルから4,000ドル程度にすぎない」(クマー氏)
どんな企業でもSOAの運用コストがゼロになることはありえない。だが、長期的に見れば支出の削減は可能だと、多くのIT専門家は指摘する。
『Service Oriented Architecture for Dummies』(以下、SOA for Dummies)の著者で業界アナリストでもあるジュディス・ハーウィッツ氏は、短期的な投資回収率(ROI)でSOAを評価すべきではないとアドバイスする。「短期的な利益を性急に求めてはいけない。実際に利益が生じるのは変化が起きた後だ」(同氏)
多くの場合、ソフトウェア開発の伝統的なアプローチは一からスタートすることが前提で、特定問題の解決を目的としている。それに対し、SOAの真の目的はリユースにあり、コンポーネント間の疎結合を実現する。それゆえSOA導入の効果は、ビジネス環境に変化が訪れ、コンポーネントが再利用されて初めて現れる。
「SOAの導入から数カ月の間は、さほど大きな利益は得られないかもしれない。だが、もし企業合併などがあったときは、そうした変化に柔軟に対応して、必要なソフトウェアを迅速に提供できるはずだ」(ハーウィッツ氏)
ならば、SOAへの投資額はIT支出の何%くらいになるのだろうか。この問いに、米国フォレスター・リサーチの上級アナリスト、ラリー・フルトン氏は次のように答える。
「これは答えるのが難しい質問だ。なぜなら、もし5年前にERPシステムを構築し、今回さらにSOAベースで新しいERPシステムを構築したとしよう。これら一連のプロジェクトで、ソフトウェアやその他に500万ドルを支出した場合、SOAに500万ドルを投資したと言えるだろうか。いや、そうは言えない。500万ドルはビジネス・ソリューションのために支出されたのだ」
SOA導入への見返りが最初にもたらされるのは、サービス提供に要するコストを削減できたときである。ただし、多くの企業がSOA運用の初期段階にある今、そうしたコストを削減できた企業はまだまだ少ないというのが実情だ。米国ソーガタック・テクノロジーのマイク・ウエスト氏によると、おそらく全体の10%から15%程度だという。
SOAによって収益を向上させた企業はこれよりずっと少ないと、ウエスト氏は推測する。従来とは根本的に異なるアプローチを用いて急激な変化にも対応できる基盤を構築することを考えると、致し方ないところもあるが、それでも導入する価値は十分にあるとウエスト氏は強調する。
「真のコスト削減と収益向上が実現するのは、フレキシブルなビジネス基盤を構築し、トップライン・ベースで収益性を高めることができたときだ。そのとき得られる利益は、ITによるコスト削減とは比較にならない」(ウエスト氏)
2002年にイーベイに買収され、現在は同社のオンライン決済子会社であるペイパルは、SOAで収益を上げている企業の1社だ。
コア技術担当バイスプレジデントのマシュー・メンゲリンク氏によると、ペイパルは同社の売買決算システムと外部のオンライン小売店とのリンク・ツールおよびサービスを、SOAの下で外部の開発者たちに提供している。ペイパルが開発者コミュニティに提供するAPIは現在のところ16ほどだ。
「それらのAPIを利用すれば、ペイパル上に小売りシステムを構築することもできる。そのための投資は少なくないが、見返りも十分に期待できる。基盤を整備すれば、顧客は確実に増えるからだ」(メンゲリンク氏)
【2】SOAに精通した人材を育てるには?
「必要な人数のアーキテクトをすべて雇っている顧客など見たこともない」と、フォレスターのフルトン氏は言う。実際、優秀なアーキテクトは絶対的に不足している。ただしそれは、IT業界の人間がSOAの定義で合意していないという単純な事実が理由の1つでもある。
SOAのコンセプトや要素技術はさほど複雑ではない。したがって、アーキテクトを確保する最良の方法は社内でトレーニングすることだと、ペイパルのメンゲリング氏は指南する。
エイビスのクマー氏によると、SOAベースのITインフラを構築する際は、伝統的なアプローチのときとは異なる意識を持つことが重要だという。「Javaプログラミングに精通し、Webサービスの作り方も熟知している人は多いが、それらをサービス指向のアーキテクチャに統合することは別問題だ」と同氏は指摘。そのうえで、「多くの人々がそのギャップに苦労している。外部のサービス・プロバイダーに頼る傾向が高いのは、そうした理由からだ」と実情を明かす。
ただし、SOAに精通した人材の一部は、多くのことを急いでやりすぎるきらいがある。「熱狂的な従業員はヒーローのように行動したがる」と、アナリストのハーウィッツ氏も「SOA for Dummies」に書いている。そうしたスタッフはしばしば、独自のコーディング・ルールを駆使して、競合他社を出し抜くような新機能を開発しようとする。
市場でのリーダーシップを確立するうえで、SOAのようなタイプの技術革新は確かに重要だ。しかし、慎重さを欠いては成功もおぼつかない。「十分に慎重であるべきだ。技術革新と創造性は常に一体化する必要がある」(ハーウィッツ氏)
























