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セールスフォース・ドットコムの開発言語「Apex」は次世代のSaaSを導くか?

【Salesforce.com Dreamforce '06リポート】
(2006年11月30日)

2006年10月9日〜11日(米国時間)の3日間、米国カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニ・コンベンション・センターで、米国セールスフォース・ドットコムの年次ユーザー/ディベロッパー・コンファレンス「Dreamforce '06」が開催された。SaaS(Software as a Service)というコンセプトが大きな注目を集めるなか、この市場のリーディング・ベンダーである同社は、コンファレンスの“目玉”として、オンデマンド・アプリケーション用の開発言語/プラットフォーム「Apex」を発表した。以下、同プラットフォームの概要が示された基調講演の模様をリポートする。



河原 潤
本誌編集長

ベニオフ氏、マルチテナント・モデルの優位性をあらためて強調

 SaaSと呼ばれる、新世代のASPサービスが注目を集めている。米国の市場調査会社ガートナーによると、2005年の企業向けソフトウェア市場売上高のうちでSaaSは約5%を占めており、同社はこの数字が2011年には25%に達するという予測を示している。


写真1:「SaaS、オンデマンド・アプリケーションの将来とは?」と聴衆に問いかけるマーク・ベニオフ氏

 そして現在、この市場を牽引するのが、小・中規模向けのオンデマンドCRM「Salesforce」で成功したセールスフォース・ドットコムである。1999年創業の同社は8年間で、全世界に2万4,800社の顧客企業を擁し、年商5億ドルを超える大手ベンダーに成長している。サンフランシスコに本拠を置く同社は2003年以降、毎年この地でユーザー/ディベロッパー・コンファレンスを開催している。2回目までは同市内のホテルを会場に使っていたが、回を重ねるごとに規模が大きくなり、今年は参加者数が5,000名を超える大規模なイベントとなった。

 年に1回開催される同社最大のプライベート・イベントということで、Dreamforceでは毎回“目玉”の発表が用意される。昨年9月の「Dreamforce '05」では、SaaSをCRM以外のさまざまな業務アプリケーションにも適用する試みとして「AppExchange」が発表されて話題を呼んだ。成長著しいSaaSの旗手の次なるビジョンは何か──開幕日の9日、会場前には早朝から聴衆が長い列をなし、今年の目玉の発表を待った。

 開幕の基調講演を務めるのはもちろん、会長兼CEO(最高経営責任者)のマーク・ベニオフ氏である(写真1)。身長193cm、顎髭をたくわえたワイルドな風貌。多くのメディアに取り上げられ、この1年でさらに知名度を上げた同氏を、満席の会場は大きな拍手で迎えた。

 「当社はインターネットという舞台を築いた先達の偉業からインスピレーションを受けて出発した。イーベイ、ヤフー、グーグル、アマゾン・ドットコムといった企業がコンシューマーWebの世界を確立するのを見て、それと同じことをビジネスWebでも実現できるはずだと考えたのがわれわれの出発点である」(ベニオフ氏)

 ベニオフ氏は、セールスフォースと、同社がインスピレーションを受けた企業の共通項はマルチテナント・モデルにあると話し、同社のデモンストレーションで恒例となったSalesforceとGoogle Mapsのマッシュアップ機能を挙げ、このモデルの優位性を聴衆に訴えた。

Ajaxの採用で操作性が向上した「Winter '07」

 その後、ベニオフ氏は同社CMO(最高マーケティング責任者)のジョージ・フー氏を壇上に呼び、フー氏から、2006年にリリースされる予定のSalesforceの次期バージョン「Winter '07」に備わる主要な新機能/サービスが紹介された。同氏は、ユーザー・インタフェースにAjax(Asynchronous JavaScript + XML)が全面採用され、詳細情報のホバリング表示やカレンダーのポップアップ・リマインダ機能などが加わった点や、コールセンター/ヘルプデスク向けの「Salesforce Service & Support」でシスコシステムズの技術を採用した「Call Center Edition」が用意された点などを、デモを交えて説明した。

業界初のマルチテナント対応言語「Apexプラットフォーム」



写真2:セールスフォースはApexの投入で、「カスタマイズ可能なSaaS」という将来像を示した

 Winter '07の説明の後、再びベニオフ氏が登壇。今回のDreamforceのメイン発表だとして、Salesforceアプリケーション用の言語/開発プラットフォーム「Apex(エイペックス)」を紹介した(写真2)。

 Apexは、Javaによく似た構造を持つ言語を核としたマルチテナント型オンデマンド・サービス対応の開発プラットフォームで、今後、ユーザーは自社で利用しているSalesforceのコードに直接変更を加えたり、独自に作成したコードを追加したりすることができるようになる。また、ユーザー企業や同社のパートナー企業が、一から独自のSalesforceアプリケーションを構築することも可能だという。

 「Apexは、オンデマンド・アプリケーションのSalesforceに強力かつ柔軟なカスタマイズ性を与えるものだ。ボタンの形状変更から複雑なビジネス・ロジックの変更・追加までがユーザー側で可能になる」(ベニオフ氏)

「Apex」──オンデマンド・アプリケーション開発言語/プラットフォームとは?

 Apexは、Salesforceをはじめとするセールスフォースのオンデマンド・サービス群の構築に使われた開発言語/ツールをベースにまとめあげられた、マルチテナント型オンデマンド・アプリケーションのための開発言語/プラットフォームである。その公開は、Apex言語以外のプラットフォームが、Salesforceの次期バージョン「Winter '07」のリリースと同時期の2006年内を予定している。その後、2007年上半期内にApex言語が公開される見通しだ。

 このApexプラットフォームの登場により、Salesforceアプリケーションを顧客およびサービスの構築を支援するパートナー企業側でカスタマイズすることができるようになる。また、独自にコードを開発し、セールスフォースが提供する機能を自分たちのニーズに適した機能と置き換えることも可能になる。

 セールスフォースによると、Apexプラットフォームの核となるApex言語は、Javaによく似た構造、シンタクスを持ち、Javaで構築されたアプリケーションとの高い親和性を備えているのが特徴だという。また、Apex言語を「カスタム・ボタン」「アウトバウンド・メッセージ」「インラインSコントロール」などセールスフォースが提供する新たな開発コンポーネント技術と組み合わせて利用することで、開発者はSalesforceのユーザー・インタフェースのほぼ全域に対してコードの追加/変更が行え、高度なビジネス・ロジックを設定することが可能になるとしている。

 同プラットフォーム上で構築されたApexアプリケーションはすべて、セールスフォースのAppExchangeサーバ・ディレクトリに格納され、同社、顧客、パートナー企業で共有することが可能になる。トランザクションやプロセスの制御などはすべてサーバ側で効率的に行われ、開発者はユーザー・インタフェースなど、アプリケーションの操作性の向上のための開発作業に集中できるようになるという。

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