第4回 システム運用のブラックボックスを透明化しよう!
コスト最適化で、避けては通れないベンダー管理 と顧客サービス管理情報システム部門の仕事は常にコスト削減との戦いだ。その不断の取り組みで成果を上げるためには、コアの業務に集中する一方で、実務のアウトソーシングを推し進めることが不可欠となる。なぜならば、アウトソーシング事業者は、多くの企業からより多くの業務を受託することで、スケールメリットとコストメリットの双方を発揮することができるからである。
実務の外部委託を進めるうえで重要なのは、アウトソーシング事業者の業務管理である。実務を外部に委託するとはいえ、単に業務を丸投げするのでは、余計な手間がかかるうえ、効率性やサービスレベルが維持できず、結局、自分たちの首を絞めることになる。またそれは、アウトソーシング事業者にとっても避けたい事態であろう。
そこで今回は、アウトソーシング事業者に対する業務プロセス管理について、2つの視点から解説することにする。
●情報システム部門にとってのアウトソーシングの課題
本連載では情報システム部門の「ヘルプデスク」「PC資産管理」「インフラ運用業務」について取り上げてきたが、人とプロセスの見える化を実現する「業務プロセス管理」を行えば、効率化とサービスレベル向上の両面で成果を上げることが可能になる。
外部事業者への業務委託は、「ヘルプデスク」「PC資産管理」「インフラ運用業務」のいずれも可能だ。対するアウトソーシング事業者は、受託する業務量が増えれば増えるほど効率化やコストの最適化が図りやすくなり、多様な状況でのノウハウの蓄積も可能となる。そうなれば、サービスレベルの向上も期待できるだろう。
とはいえ、これはあくまでも仮定の話だ。現実には、情報システム部門とアウトソーシング事業者との間にコミュニケーションギャップが生まれ、アウトソーシング事業者に委託した業務が情報システム部門から見えなくなる「委託業務のブラックボックス化」の傾向があるという。またそれが結果的に、「こちらの要望にどう応えているのか見えない」、「融通がきかなくて、状況の変化に迅速に対応できない」、「問題が大きくなってから報告がくる」といった、アウトソーシング事業者に対する情報システム部門の不満につながっているようだ(図1)。
アウトソーシング事業者との間で明確なSLA(Service Level Agreement)を事前に取り交わしたとしても、それに基づくサービスレベルのモニタリング/チェックの仕組み/ノウハウがなければ、委託業務のブラックボックス化は避けられない。
とはいえ、この状態を放置していると、自組織内の技術的なノウハウの流出だけが進行し、委託業務は高コスト体質のままで、アウトソーシング事業者にロックインされるといった状況に追い込まれてしまう。これでは、アウトソーシングの本来目的であったコストの最適化もままならない。
●ブラックボックス化をアウトソース事業者側からとらえると
では、前出の図1と同じ状況を、アウトソース事業者側から見るとどうなるだろうか。
まず、図1に示したようなひどい状況に陥ってしまった場合、「ヘルプデスク」や「PC資産管理」、「インフラ運用」の業務を委託したところで、コスト効果はほとんど得られないだろう。
したがって、問題の原因を突き止め、是が非でもそれを排除しなければならないが、その原因をアウトソーシング事業者の業務効率の悪さや業務品質の低さに求めるのは誤りである。むしろ、アウトソーシング事業者の業務の効率性や品質は高く、また、そうでなければアウトソーシング事業者のビジネス自体が成り立たないと言える。
ならば、問題の原因はどこにあるのだろうか――結論から先に言えば、それはアウトソーシング事業者内における「サービス運用の見える化」が実現されていない点にある。
この問題は、例えば、「問い合わせの窓口や関係部門/組織との連絡方法が統一されていない」、「複数の顧客を抱え、担当する運用チームによって管理体制が異なる」、「問い合わせ情報やノウハウが分散している」というように、コミュニケーションのための窓口や手段が十分に共通化/標準化されていないことに起因するものだ。そしてこの問題が「利用者との情報共有に多くの時間と手間がかかる」という事態を恒常化させ、先に挙げたような利用者サイドの不満へとつながることになる。
また、利用者との情報共有がうまくいかないと、アウトソーシング事業者は自分たちのサービスレベルの高さを証明することが困難となる。その結果、競合との単純なコスト競争を強いられがちにもなってしまう(図2)。
もっとも、こうした問題の根本原因は、コミュニケーションギャップという一点に集約することができる。したがって、逆にこのネックさえ解消してしまえば、利用者側の満足度を大きく改善できる見込みがある。
●コミュニケーションギャップを解消する業務プロセス管理
本連載でも取り上げてきた業務プロセス管理は、上述したようなコミュニケーションギャップを解消し、「委託業務の見える化」を実現する有効な手だてである。
業務プロセス管理の対象範囲は、自社内あるいは自社グループ内に限定されると思われがちだが、実はそうではない。とりわけ、コミュニケーション上の課題と解決策は社内か社外かによらず本質的に同じであり、組織横断的な業務プロセス管理が大きな効力を発揮する領域でもある。
社内外の業務プロセス管理には2つの方式がある。1つは、情報システム部門が主体となって業務プロセス管理を導入し、アウトソーシング事業者を巻き込んでいくベンダー管理方式である。もう1つは、アウトソーシング事業者側が、業務プロセス管理を導入し、それを利用者となる情報システム部門に提供していく顧客サービス管理方式である(図3)。
どちらの方式の場合も、これまでの連載で紹介してきた事例と同じように以下の2点がポイントとなる。
・スモールスタートが行えるよう業務プロセス管理の適用範囲を限定する
・サーバなどへの投資を不要にするためSaaS型ツールを採用する
また、SaaS型ツールの採用により、企業をまたいだ組織横断的な情報共有と、担当業務ごとに情報の公開範囲を制御することが可能となる。
また、アウトソーシング事業者側は、マルチテナント形式で業務プロセス管理ツールを運用することにより、複数の利用者に対応することが可能になる。そして何よりも、各利用者に対して自社のサービス内容を見える化すること自体が、サービスの価値向上や差別化につながっていくだろう。
その意味では、利用者である情報システム部門以上に、アウトソーシング事業者が業務プロセス管理を採用するメリットは大きいと言える。実際それは、既存顧客からのコスト削減圧力に抗するうえでの理由となるし、サービスレベルという差別化要素を新規顧客に明確に伝えるためのツールともなる。
すでに、いくつかのヘルプデスクサービス提供会社とデータセンター事業者が、このような業務プロセス管理を導入し、それによる業務の効率化とサービルレベルの向上で顧客からの好評を博している。
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従来、情報システム部門の守備範囲は自社保有のシステムと自社内の組織に限定されていた。しかし今日では、複数種にわたる社内外のシステム/サービスの統合へと、その守備範囲を変容させつつある。そうした中で情報システム部門は、コア業務に一層集中するとともに、システム運用管理の戦略的なサービスハブに一段と近づいていくことになる。
情報システム部門のこうした変化は、アウトソーシング事業者にビジネスチャンスをもたらすものだ。それだけに状況の変化をいち早くとらえ、顧客ニーズに的確に対応していくというビジネスの王道を突き進まねばならない。またそうして運用サービスの見える化をレベルアップさせていけば、今まで見えていなかった業務プロセスの様相も見えるようになる。
なお、次回は、業務プロセス管理を進める中で見えてくる、組織運営の新しい視点について考えてみたい。































