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エンタープライズGoogle「期待の声」と「死角」

Web検索エンジンの覇者、“ファイアウォールの内側”に挑む
(2006年06月09日)

Web検索の分野で着実に成長を続けてきたグーグルは、今後どのような形でエンタープライズ分野への本格進出を果たすのであろうか。これまでにもさまざまな予測が立てられてきたが、その足がかりの1つと見なされているのが、2002年から同社が企業向けに販売している「Google Search Appliance」(GSA)である。グーグルは今年2月14日、グローバルなSI企業であるベアリングポイントと業務提携を結び、GSAを大幅に機能強化することを発表した。ここでは、グーグルとベアリングポイントが何を考え、ユーザーや競合他社がグーグルをどう見ているのかを分析しながら、グーグルのエンタープライズ戦略を考察することにしたい。

ベアリングポイントとの業務提携が意味するもの


写真1:グーグルの検索アプライアンス「Google Search Appliance GB-1001」

 グーグルはここ数年来、企業向け市場への参入を目指してきたが、その動きは限られたものであった。というのも、同社の検索テクノロジーは、Webに特化したものであり、企業内で利用するのに十分な機能を備えているとは言えなかったからだ。だが、最近になって、この検索エンジン業界の旗手も、いよいよエンタープライズ検索の分野に本腰を入れることを決意したようだ。例えば、今年2月14日に発表された、コンサルティング・サービス会社の米国ベアリングポイントとの業務提携は、グーグルが業務アプリケーションとそのデータを「ググる」ことができるようになる日も近いことを予感させるものであった。

画面1:「Google Desktop Search」に付属する「Google Desktop Sidebar」機能

 ベアリングポイントによれば、グーグルの企業向け検索アプライアンスである「Google Search Appliance(GSA)」(写真1)は、サービス、サポート、プラグイン、セキュリティなどの面で今後、大幅に機能強化が図られるという。また、強力な検索機能が売りもののWebメール「Gmail」に関しては、企業の電子メール・ドメインのバックエンド・サービスとして機能させる試みが進められている。さらに、人気デスクトップ検索ツール「Google Desktop Search」(画面1、画面2)についても、セキュリティ機能が強化され、企業のシステム管理者による制御が可能になるという。

 はたしてグーグルは、エンタープライズ検索の分野においても王者の地位を確立することができるのだろうか。米国のIT市場調査会社ジュピター・リサーチの調査担当シニア・バイスプレジデント、デビッド・シャツキー氏は、「グーグルはWeb検索の分野では強力なブランドを確立したが、エンタープライズ検索サービスの分野では、まだ信用を獲得するには至っていない。そこでメインプレーヤーになれるかどうかのカギを今回の提携が握っていると言える」と指摘する。同氏は、世界規模でSI事業を展開するベアリングポイントとの業務提携によって、グーグルは「フォーチュン1000」に名を連ねるような有名企業からの信用を取り付け、同社が抱えていた“ギャップ”を埋めることができるとしている。

 「ギャップとは、同社のすぐれたテクノロジーと、それを企業で機能させるために必要な専門知識の間に横たわる落差のことだ」(シャツキー氏)

GSAの機能強化ポイント


画面2:「Google Desktop Search」の検索画面

 では、一方のベアリングポイントのほうは今回の提携をどうとらえているのだろうか。同社のマネジング・ディレクター、クリス・ウェイツ氏は、「グーグルの顧客は今後、GSAを企業の基本的な検索アプリケーションとして使用できるようになる」と強調する。

 グーグルは、2002年2月にGSAを発表して以来、クロール可能なコンテンツの容量と種類を拡大し続けてきた。発表当初は、GSAがインデックス化できたのはWebベースのコンテンツだけであり、エンタープライズ検索と呼ぶにふさわしい検索機能を十分に提供できているとは言えなかった。

 だが、一連の機能強化を経た今では、RDBMSをはじめ、CMS(コンテンツ管理システム)、EIP(企業情報ポータル)、さらには「Notes/Domino」など、さまざまなアプリケーションやシステムのデータをカバーできるようになった。グーグルによると、サポートするファイル形式は220種類以上に及ぶという。

 そして、この対応ファイル形式をさらに拡充していくうえで、ベアリングポイントが大きな力を発揮することになる。同社はグーグルと協力して、GSAをドキュメンタムやファイルネット、オラクルなどが提供する業務アプリケーションとリンクさせるためのソフトウェア・アダプタを開発する予定だ。また、セキュリティ機能を拡張し、認証やレコード単位の情報保護なども行えるようにする。

 「企業ユーザーは皆、イントラネット検索のフロントエンドでGoogle検索エンジンを使いたがっている。われわれは、GSAにプラグインを提供することで、企業内のリーチしにくい分野へのアクセスを可能にし、そのニーズにこたえるつもりだ」(ウェイツ氏)

単一の検索ボックスで企業内のあらゆる情報にアクセス

 グーグルの「エンタープライズ検索担当」も、ベアリングポイントとのパートナーシップに大いに期待をかけている。エンタープライズ担当ジェネラル・マネジャーを務めるデーブ・ジルアード氏は、「単一の検索ボックスで、企業内のありとあらゆるデータから、必要な情報を探し出せるようにすることが目標」と話す。

 ジルアード氏によれば、GSAを購入する大多数の企業は、同製品を1週間もかからずにセットアップして、稼働させることができるという。ただし同氏は、現時点でのGSAは、エンタープライズ検索という氷山の、ほんの一角にしか触れていないとの表現で、全社的に導入して活用できるレベルまでには至っていないことを認めている。そのうえで同氏は「ベアリングポイントがソフトウェア開発やサービスの面で支援すれば、GSAを強力なエンタープライズ検索製品にすることができるはずだ」と、自信をのぞかせる。

 ベアリングポイントは目下、フォーチュン100に入る名だたる大企業数社と協力して、GSAのさらなる拡張とカスタマイズに取り組んでいるところだ。同社は、グーグルの持ち味であるシンプルさをもってすれば、既存のエンタープライズ検索製品に対するこれまでの“悪評”(同社はその例として、「導入と運用の難しさ」と「高額な導入コストの割に粗末な結果」を挙げる)を覆すことができるとアピールしている。

COLUMN 01 Enterprise Search Engine

「Writely」の買収は、Microsoft Office対抗製品の開発につながるか?
IDG News Service

 米国グーグルは今年3月9日、オンライン・ワープロ「Writely」を買収した。Writelyの開発元である米国アップスタートルの共同創立者、クラウディア・カーペンター氏が、同社の企業ブログ上で「WritelyはGoogleの一部になった」ことを明かした。また、グーグルの企業ブログでも「Google Writely Team」が同様の発表をした。買収の価格/条件については明らかにされなかったが、アップスタートルの全社員4人はすでにグーグルに合流している。

 Writelyは、Ajax技術を利用したWebベースのワープロ・サービス。基本的な文書作成/編集機能のほか、複数人での共同編集、RSSに対応した更新履歴、ブログへの投稿機能などを備えている。昨年8月にベータ版が公開され、人気を博していた。ユーザーは登録すれば無料で利用できたが、共同創立者のサム・シレス氏は昨年12月、「ユーザー管理やパスワード保護を施した企業向けの有料バージョンも検討している」と語っていた。

 Writelyの買収は、「Google Office」への布石なのだろうか。グーグルがマイクロソフトに対抗するOffice製品を開発しているといううわさは、アナリストらの間でずっとささやかれてきた。昨年10月、グーグルが「StarOffice」や「OpenOffice.org」を展開する米国サン・マイクロシステムズとの提携を発表したことで、そのうわさに火がついた。しかし、その後、提携内容が「Java Runtime Environment(JRE)」と「Google Toolbar」の共同配布に関することに限られたため、いったんは沈静化していた。

 サンとの提携が発表されたとき、米国ゴールドマン・サックスのアナリスト、リック・シャーランド氏は「グーグルやヤフーは、自社のメール製品にカレンダーや連絡先などを追加して、マイクロソフトのOutlookのようにしたいと考えているのではないか。さらには、ワープロや表計算機能を追加して、Officeの対抗製品にしようとしていても不思議ではない」と指摘していた。

 一方、今回のWritely買収に関して、英国オーバムのアナリスト、デービット・ブラッドショー氏らは、「グーグルに最も欠けているのは、デスクトップ・オフィス製品の開発者だが、4人では足りない。むしろ、今回の買収は、広告収入を増やすことによって、マイクロソフトを牽制する意味がある」と指摘している。

強力な検索エンジンの魅力

 では、グーグルとベアリングポイントの強力なタッグは、本当に大手企業をひきつけることができるのだろうか。米国の健康サービス会社、IMSヘルスのCIO(最高情報責任者)、アーヴィング・タイラー氏は、「当社ではまだGSAを導入していないが、グーグルの非構造化データを取得するアプローチは気に入っている」と期待を寄せる。同社は現在、ナレッジ・マネジメントおよび検索に米国ヴィネットのECM(Enterprise Contents Management)システム「Vignette」を使用している。しかし、同製品を利用する際には、企業内のすべてのデータが中央のサーバに格納されていなければならない。

 「Vignetteでは、フォルダ構造を用いてデータを構造化して整理できるが、情報をローカルのハードディスク上に格納してから、ナレッジ・マネジメント・システムに移動させる必要がある。だが、Googleの強力な検索エンジンなら、ナビゲーションの経路を知らなくても情報を見つけることが可能になり、ユーザーの負担は大きく軽減されるはずだ」(タイラー氏)

Web検索とエンタープライズ検索の明確な違い

 このように、“シンプルさ”を貫くグーグルに対する、ユーザー企業側の期待は大きい。しかし、ベアリングポイントとグーグルのパートナーシップで、GSAが企業にすぐれたエンタープライズ検索機能を直ちにもたらすことができるかどうかについては疑問は残る。というのも、Web検索とエンタープライズ検索とでは、根本的に技術的な要件が異なるからだ。

 米国フォレスター・リサーチのシニア・アナリスト、マシュー・ブラウン氏も、この点には懐疑的な見解を示す。

 「エンタープライズ検索は、企業固有の課題をターゲットとし、企業固有のインテグレーションとカスタマイズを必要とする。グーグルがこれらに今すぐに取り組めるとは思えないし、ベアリングポイントとの協業でどこまでカバーできるのかも疑問だ」(同氏)

 ブラウン氏は、エンタープライズ検索をうまく機能させるには、拡張可能なプラットフォームを継続的に微調整し、無数のシステムやリポジトリ、ビジネス・ロジック、さまざまなメタデータと連携させる仕組みが必要になると指摘する。その際、レレバンシー(Relevancy:適切さ、関連性)に関する機能は、革新性というより、継続的な作業に該当するという。

 グーグルは、自社のWebサービスのAPIの多くを公開しているものの、Google検索エンジンの卓越したレレバンシー機能を実現する「PageRank」アルゴリズムについては、かたくなに秘密を守り通している。この伝家の宝刀が自由に使えなければ、エンタープライズ検索分野でのグーグルの影響力は、ある程度の段階でとどまってしまうかもしれない。

 ブラウン氏は、「グーグルは、Google検索エンジンのレレバンシーの肝であるPageRankアルゴリズムを重要な資産だと考えている。そのため、PageRankの内部構造を見せたり、検索関連の付加価値サービスを顧客が行ったりすることを許さない。今後もSMB市場では勢力を見せつけるだろうが、大企業相手のエンタープライズ市場には、その影響力は及ばないだろう」と指摘し、辛辣な言葉を続ける。

 「企業が、どうしても課題の核心に触れたいと思って、あらためてグーグルの機能/特徴を注視したときに、他のエンタープライズ検索ベンダーが実現できていることをグーグルは実現できていないことに気づくはずだ」

 この市場でグーグルを迎え撃つ立場にある、ノルウェーのファストサーチ&トランスファ社長、アリ・リアス氏は次のように語る。

 「Web検索からエンタープライズ検索への移行は大変難しい、と言っておこう。単なるサービスを、高度な柔軟性を備えたエンタープライズ・ソフトウェア製品へと昇華させる必要があるからだ」

 ファストは1997年、「AlltheWeb」というWeb検索ポータルによって創業した。だが、リアス氏によれば、同社が現行のエンタープライズ検索システム「Enterprise Search Platform(ESP)」を開発する際にはほとんどゼロから再構築せざるをえなかったという。

 グーグルが、実用的サービスをWeb上で提供するすぐれた能力を持っていることは疑いようがない。しかし、それだけでは不十分のようだ。

 「企業向けビジネスにおいては、正確さ、精密さ、レレバンシーが求められる。それにこたえるのは、たいへん困難なチャレンジなのだ」(リアス氏)

COLUMN 02 Enterprise Search Engine

“個人”から“組織”へと拡張されるGmailの活用領域
IDG News Service

 グーグルは、同社のWebメール・サービス「Gmail」の利用範囲を“個人”の世界から企業や大学などの“組織”の世界へと広げる新たなホスティング型電子メール・サービスの試験運用を開始した。

 Gmailプロダクト・マネジャーのステファニー・ハノン氏は、グーグルの企業ブログへの書き込み(2月10日付け)の中で、サンノゼ・シティ・カレッジ(SJCC)が約1万人の学生を対象に新しいホスティング・サービスを試験運用していることを明らかにした。

 同カレッジのドメイン名を使って、全ユーザー(約1万人の学生)のGmail電子メール・アカウントがホスティングされている。このホスティング・サービスのベータ・テストに参加したい組織は、グーグルの「Gmail for your domain(あなたのドメインでGmailを)」サイトから応募することができる。

 このサービスでは、エンドユーザーはそれぞれ2GBのメール保存容量を利用できる。また、ユーザー組織のIT部門がユーザー・アカウントを管理するためのコントロール・パネルも用意されている。

 グーグルはこれまで、Gmailをコンシューマー向けのWebメール・サービスとして提供してきたが、新サービスの開始は、同社がGmailに対してより広い活用領域を想定していることを示している。なお、Gmailは2004年4月に発表されたが、それ自体がまだベータ・テスト中である。

 グーグルはGmail以外にも、当初コンシューマー向けに提供されたサービスを、企業・組織向けに発展させた商品を提供している。

 例えば、検索アプライアンス「Google Search Appliance」のほか、検索できる最大ドキュメント数を5〜10万件に設定し、基本機能だけを搭載した低価格版の「Google Mini」(写真A)も販売している。

写真A:GSAの低価格版「Google mini」(価格:1,995〜2,995ドル)

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