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【解説】

岐路に立つマイクロソフト――“アフター・ゲイツ”を専門家が占う

ITアナリストらが指摘する、業界ガリバーの“ジレンマ”と“課題”と“可能性”
(2008年06月24日)

6月30日、米国Microsoft会長のビル・ゲイツ(Bill Gates)氏は、同社の常勤取締役を退き、活動の主軸をビル&メリンダ・ゲイツ財団に移す。この事実は2年前に公表されていたものの、最近になってGates氏が去ったあとのMicrosoftの舵取りに、疑問を投げかける声が大きくなっている。創業から33年。長きにわたり死守してきたIT業界のリーダーの座は、かつてない勢いで脅かされつつある。Microsoftが抱える今後の課題とは何か――。ITアナリストらの分析を中心に探っていきたい。



Eric Lai
Computerworld米国版

   
“攻め”から“守り”に転じたジレンマ

 米国OracleやドイツのSAPは現在、エンタープライズ・アプリケーション分野で覇を競っている。データベースなら、Oracleが優勢だ。米国IBMも米国Hewlett-Packardも、IT分野全般において好調な利益を上げている。だが、さまざまな点を加味したうえで考えれば、IT業界の王者は、Microsoftであると言えるだろう。

 そのMicrosoftは、Gates氏の引退を目前に控えて、重大な岐路に立たされている。同氏が去ることで、Microsoftは求心力を失うのではないかと懸念する声が周囲から上がっているのだ。


Forrester ResearchのCEO、George Colony氏は6月16日付けの自身のブログに、「Gates氏が一線を退いてから、Microsoftの推進力が失われていった」との見解を記した

 例えば、米国Forrester ResearchのCEOであるジョージ・コロニー(George Colony)氏は6月16日、「Gates氏の“建設的な独裁主義”の下、Microsoftは事実上の業界標準を生みだし、ユーザーばかりでなく同社自身にも恩恵を与えてきた」と自身のブログに記した。

 Colony氏は「Gates氏はテクノロジーの革新者ではないが、自社技術を市場の独占的なポジションに押し上げるという手腕を持っている」と評価したうえで、「Gates氏がMicrosoftの仕事から徐々に手を引き、慈善活動に注力し始めたここ数年は、Microsoftからはそうした推進力が失われた。同時に米国Googleや米国Appleなどの競合企業が、IT業界のスポットライトを浴びるようになった」と指摘した。

 創業から33年を経て、企業年齢もそろそろ“中年”にさしかかっているMicrosoft。同社は今、長きにわたり死守してきたIT業界のリーダーの座を、かつてない勢いで脅かされつつある。Microsoftの支配力が強かった「標準化」については、オープン・フォーマットの支持者らが対抗しているし、オープンソース・ソフトウェアやWeb 2.0技術、SaaS(Software as a Service)製品などが、Microsoftのドル箱であるWindowsやOffice製品の牙城を着実に切り崩している。

 中でも米国Googleは手ごわいライバルだ。コンサルティング会社である米国Directions on MicrosoftのCEO兼リサーチ責任者、ロブ・ホーウィッツ(Rob Horwitz)氏は、「MicrosoftはGoogleに、若く強靱で健康的だったみずからの昔の姿を重ね合わせて、感嘆のため息をついているはずだ」と述べた。

 Googleが無料で提供しているオフィス・スイート「Google Docs」は、Microsoftの稼ぎ頭であるOfficeの一角を切り崩すことをねらっている。また、Googleのクラウド・コンピューティング技術製品群は、Microsoftによるデスクトップ市場支配に打撃を与えるものである。

 コンサルティング会社の米国Creative Strategiesでアナリストを務めるティム・バジャリン(Tim Bajarin)氏は、「GoogleはMicrosoftと異なり、レガシー問題に配慮する必要がない。だからこそ、実験的な分野で縦横無尽の活躍ができるのだ」と指摘している。

 さらにGoogleは、オンライン広告ビジネスで大成功を収めたことで、ほかのIT分野をじっくり攻めるだけの時間的余裕もある。Microsoftのシェアを奪おうと同社が開発した製品の大半は、技術的にはまだベータ版の段階であり、ユーザーには無料で提供されている。

 市場調査会社である米国Enderle Groupのアナリスト、ロブ・エンデール(Rob Enderle)氏は、「Googleは企業ユーザーがMicrosoftとの契約を更新することを阻止し、同社に金が流れないように奮闘している。Google自身が金を稼げるかどうかは保証できないものの、Microsoftの収入は確実に減るだろう」と述べた。

 もっとも現時点におけるMicrosoftのビジネスは、きわめて順調なようである。6月30日に終了する同社の2008会計年度は、営業利益が580億ドル、純利益が164億ドルに達する見込みで、前年比2ケタ増の成長を遂げることは確実だ。

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